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2つの物語は観客の心の中の一番深いところにまで届く奥行きを獲得している…★劇評★【舞台=家族のはなし PART 1(2019)】

 家族というのはなんとも不思議なものである。思い出の大半を共有しているのに、果てしなく遠く感じることがあったり、もう何カ月も顔を見ていないなと思っていると、だれよりもそばに寄り添ってくれていたり…。だからきっとたまらなく愛おしいのだと思う。そんな家族の話を真っ正面から描いてもそれはそれで物語は成立するだろう。古今東西、家族をテーマにした物語が多いのはそのためだ。しかしながら、今、京都を中心とした観客の心の中に大きな感動を呼び起こしている舞台「家族のはなし PART 1」で描かれるのは、そこから少し視点をずらしたり、コミュニケーションや記憶というものを絶対的な交信手段から取り除いてみたりして、家族というものの真実の姿を浮かび上がらせている情景だ。そこには演劇的な企みもたくさん散りばめられていて、目の肥えたファンにも納得のハイレベル。何より、振り切った演技の先にある究極の自然さを体得している草彅剛、小西真奈美、池田成志という気鋭の俳優たちによって創り出される舞台上の現場感が私たち観客の胸を時に激しく突き上げ、時に優しく包み込む。変幻自在の存在感と柔軟な歌唱力を持つ畠中洋や、一瞬にして舞台上に唯一無二の空気感を作り出すことのできる小林きな子の魔法も加わって、展開する2つの物語は観客の心の中の一番深いところにまで届く奥行きを獲得している。(写真は舞台「家族のはなし PART 1」とは関係ありません)
 舞台「家族のはなし PART 1」は5月4日~6月1日に京都市の京都劇場で上演された。公演はすべて終了しています。

★劇評の続きを含む劇評の全体像は通常はこの「note」の阪清和専用ページで有料公開していますが、今回は特別に公演千穐楽の翌日にあたる6月2日午後11時59秒までは完全無料公開していました。お約束の時間が来ましたので6月3日午前0時をもって有料(今回は300円)公開に変更させていただきました。ブログに掲載されている序文はこれまで通り、無料で読めます。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただけますようお願いいたします。劇評の執筆活動を今後も続けていくため、そして何より劇評文化の灯を絶やさず、今後も発展させていくための措置です。どうか、ご理解を賜れば幸いです。
★「有料化お知らせ記事」

★舞台「家族のはなし PART 1」公式サイト=公演はすべて終了しています

 いずれも家族をテーマにしているものの、舞台「家族のはなし PART 1」は第1話「わからない言葉」と第2話「笑って忘れて」の2つの物語から構成されている。それぞれの間に関連はなく、まったく別々の物語として存在している。

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