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子どもたちの感情と関係性がぶつかり合って火花を散らす様はすさまじいリアリティーを持って私たち観客に迫って来る…★劇評★【舞台=渦が森団地の眠れない子たち(2019)】

 子どものころの思い出は、良い思い出も悪い思い出もなんだか霧に包まれているようにあやふやだ。それは別に記憶が薄れているからではなく、その思い出ひとつひとつに数え切れないぐらいの感情が取り巻いていて、輪郭をはっきりさせて取り出すことができないからだ。その感情も子どもならではの無邪気さの裏側で、信じられないほどの残酷さが付きまとっていることもある。逆にジェラシーのような地に足のつかない負の感情だと思っていたものが、考え抜かれた論理的な思考であることもある。親友かどうかとは関係なく、特にさまざまな感情を掻き立てられた友達もいるはずだ。そんな時期の子どもたちを描いた劇作家・演出家・俳優の蓬莱竜太の最新作舞台「渦が森団地の眠れない子たち」が上演されている。面白いのは、この小学生の子どもたちを藤原竜也、鈴木亮平をはじめとする立派な大人の俳優が演じていることだ。子どもらしく見せるために、もちろんデフォルメされた仕草やしゃべり方は一定程度施されているものの、そのむき出しの感情と互いの関係性がぶつかり合って火花を散らす様は、すさまじいリアリティーを持って私たち観客に迫って来る。それは大人たちの感情そのものであるだけでなく、国境や時代をも超えた普遍的な物語として響いてくるのだ。蓬莱竜太はまたひとつ物語づくりの地平に大きな風穴を開けたと言えそうだ。演出も蓬莱竜太。(写真は舞台「渦が森団地の眠れない子たち」とは関係ありません)
 舞台「渦が森団地の眠れない子たち」は、10月4~20日に東京・初台の新国立劇場中劇場で、10月26~27日に佐賀県鳥栖市の鳥栖市民文化会館 大ホールで、10月29~30日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで、11月1~4日に名古屋市の御園座で、11月7~8日に広島市のJMSアステールプラザ 大ホールで、11月16~17日に宮城県多賀城市の多賀城市民会館 大ホールで上演される。

舞台写真はこのサイトではなく、阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でのみ掲載しています。舞台写真をご覧になりたい方は下記のリンクでブログに飛んでください。
★「SEVEN HEARTS」の「渦が森団地の眠れない子たち」劇評ページ

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★舞台「渦が森団地の眠れない子たち」公演情報

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