AdobeStock_132999972_Preview愛と憎しみ

「ザ・人間」の葛藤劇は喜怒哀楽すべてを激しく刺激して面白いことこの上ない…★劇評★【舞台=プラトーノフ(2019)】

 没落や破滅などの予感が色濃く漂っているのに、登場人物たちは今を生きるのが精一杯で、運命に抗うすべもない。そうした人々の営みはどこか悲しくあわれにも見えるが、一方でどこまでも人間的で切なく愛おしい。それが、チェーホフ劇の後の特徴を早くも詰め込んだような優れた内容を持ち、“処女戯曲”とされることもある「プラトーノフ」だ。しかもそれはチェーホフの没後20年以上経ってから見つかったというから驚きだ。男1人・女4人のドロドロの愛憎劇のように見えて、そこにあるのは人間という生きものの悲しい性(さが)を見つめるチェーホフの透徹した観察力。周辺人物のキャラクター造型も巧みで、飽きさせない作劇力は既に熟練の境地だ。名うての翻訳劇を次々とオリジナリティーのある問題作にしてきた演出家の森新太郎が、舞台の申し子、藤原竜也を中心にして、高岡早紀、比嘉愛未、前田亜季、中別府葵といった魅力的な女優陣とともに掘り下げる「ザ・人間」の葛藤劇は、喜怒哀楽すべてを激しく刺激して面白いことこの上ない一大エンターテインメント作品になっていた。
 舞台「プラトーノフ」は2月20~22日に富山市の富山県民会館ホールで、3月2~3日に福岡県久留米市の久留米シティプラザ ザ・グランドホールで、3月9~10日に静岡市の静岡市民文化会館中ホールで、3月15~16日に広島市のJMSアステールプラザ大ホールで、3月20~24日に大阪市の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される。これらに先立って2月1日~17日に東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演された東京公演はすべて終了しています。

★舞台「プラトーノフ」公演情報

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