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コインロッカーという禁断の子宮から生み出された若者たちの誰にも理解されない苦悩…【舞台=コインロッカー・ベイビーズ(2018)】

 1973年だけで40件以上も頻発し社会問題化した乳幼児コインロッカー置き去り事件。コンビニエント(便利でお手軽)な世の中に浮かぶ生命への尊重のかけらもない遺棄という行為から発展した現代性あふれる村上龍の小説「コインロッカー・ベイビーズ」(1980年発表)は、好調な経済に浮かれ始めていた日本社会に衝撃を与えた。1980年代にラジオドラマが制作されたものの、その後長らく映画化もドラマ化も舞台化もされず、2016年になってついにその封印が破られた。宝塚歌劇団の演出家、木村信司が2001年にひそかに書き上げていたこの小説の上演台本が関係者の目にとまり、アイドルグループ「A.B.C-Z」の橋本良亮、河合郁人という魅力的なキャスティングで音楽劇として上演されたのだ。コインロッカーという禁断の子宮から生み出された若者たちの誰にも理解されない苦悩を描き出す橋本、河合の演技は2018年の今、音楽劇「コインロッカー・ベイビーズ」の再演を迎えてさらに激烈さを増しており、それに加えて、互いの役を入れ替えた公演も行うことで、初演で感じさせたふたつの役柄のコインの裏表のような相反性と近似性がより凄みを増して伝わって来る効果を上げることになる。演出は脚本を手掛けた木村信司が自ら務めている。
 舞台「コインロッカー・ベイビーズ」は7月11~29日に東京・赤坂のTBS赤坂ACTシアターで、8月11~12日に大阪府豊中市の豊中市立文化芸術センター・大ホールで、8月18~19日に富山市のオーバードホールで上演される。

★舞台「コインロッカー・ベイビーズ」特設サイト
http://www.parco-play.com/web/play/clb2018/

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