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三島由紀夫の意図がついに私たちの世界へと降り立った…★劇評★【舞台=豊饒の海(2018)】

 輪廻転生を大きなテーマに据えて、明治から大正、昭和へと流れていく時間の中に、純粋な魂の複層的な行く末を描いた三島由紀夫の生涯最後の長編小説「豊饒の海」。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」と全4巻から成る長大なストーリーは、1、2巻こそ映像化あるいは舞台化されているものの、全体像をひとつの作品として表現することに挑んだクリエイターは国の内外を問わずいなかった。そんな壮大な挑戦が、いまこの日本の現実の舞台の上で行われている。2018 PARCO PRODUCE ”三島 × MISHIMA “「豊饒の海」によって、人間が存在することの本当の意味とその哲学的な大テーマを数多くのせりふや展開に絡み合わせようとした三島の意図がついに私たちの世界へと降り立ったと言っても過言ではない。鋭利に研ぎ澄まされた透明な氷のような唯一無二の存在感を放つ主演の東出昌大をはじめ、宮沢氷魚や上杉柊平、大鶴佐助ら群を抜く表現力で注目を集める若手俳優ら、そして舞台の色彩をあっという間に変えてしまう魔法を持ち、演出家からのラブコールが絶えない神野三鈴や国境を超えた演劇メソッドが世界の演劇人から尊敬を集め、名だたる巨匠と仕事をしてきた笈田ヨシら中堅・ベテランらを配した夢のようなキャストによって創り出される様は、演劇と物語を愛するすべての人に大きな感慨をもたらすものになっている。演出は日本でも「メアリー・スチュアート」で知られ、英国演劇界の次代を担う逸材とされているオールドヴィック・シアター(ロンドン)のアソシエイト・ディレクター、マックス・ウェブスター。
 舞台「豊饒の海」は11月7日~12月2日に東京・新宿の紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで、12月8~9日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演される。それに先立ち、11月3~5日に紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演されたプレビュー公演はすべて終了しています。

★舞台「豊饒の海」特設サイト

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