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inuha「陽のかけら」紹介


邦ロックやボカロックを軸に、シューゲイザーやポストロック、さらにはエレクトロニカの影響を吸い込んで活躍中のボカロP、inuhaの3枚目のEP。

”遠泳音楽”と名付けられた、新しい形の美しいシューゲイザーを発信するレーベル、Siren for Charlotteからリリース。

このレーベルのオーナーが彼の曲「病気の子どもたち」を遠泳音楽と捉えたところから巡り巡ってこのリリースが実現したとのこと。

その「病気の子どもたち」を中心とした6曲。

一言でいえば「美しい」。シューゲイザーとエレクトロニカが融合したような浮遊感たっぷりのサウンドで冬の空をすらすらと描くような、その描く姿を隣で見て目を輝かせている気分になる。

あんま他の作品の名前出したくないですが紹介のつもりで書いてるので出さしてください。冬、シューゲイザー、そう、Parannoul「After the Magic」が好きな人に特にオススメということです。

あと歌詞が良い。彼の一番の武器は言葉。彼はこの世で最も”近い”詞が書ける。言葉を言葉で表現するのは難しいので上手く表現できないが、寄り添うとかのレベルじゃなく、心に入り込んだうえで優しく包み込んでくれるようなパワーがある。

今作は特に死の香りが強い。死んでしまった人、いつか死んでしまう人、そんな「君」にまた会えるんじゃないかという眼差し。
遠泳音楽自体のコンセプトでも、”絶対に触れられない他者”、”非在”などは重要な要素であるが、そことinuhaの感覚が見事に調和していると言えるだろう。

試しに僕が特に好きな一節を見てってください。

この寂しさたちが どこからやってきたか たどっていけばいつも君に行き着く 美しい季節 花がこぼれる

「行きたいところがある」より

兎にも角にも、ボカロの文脈とネットレーベルの文脈(ネットレーベルの文脈?)が衝突して光を放ちながら爆発してるみたいな作品なので、未聴の人は絶対に聴いてください。

あと彼は普段はニコニコ動画とYouTubeにも曲を投稿してます。折角なので「陽のかけら」で知った人向けにオススメの曲を紹介。

「ブーツと長靴の違い」

これまた冬の雰囲気。そして死の香り。雪の中を歩いていくようなエレクトロニカ/IDM。

「手のひら彗星」

日常から一気に幻想的な非日常へ。彼の礎バンドサウンドにDTM的手法を大胆に取り入れた、それまでの集大成のような曲。

「星渡りの追憶(前編)」

死というか、もう会えない人に会いに行く、というような点では「陽のかけら」の先駆け的作品といえるかもしれません。10分(+後編10分)かけて”たったひとりの君”目がけて飛んでいく。後編はBOOTHで販売されてます。

ということで、inuha「陽のかけら」紹介でした。

(本当は「最近聴いた音楽たち」みたいな記事を書こうとしてましたが、これだけ異常に好きすぎたので単体にしました)


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