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DAZN(ダゾーン)の違法な労務管理の裏側【1】〜労使協定はなくても裁量労働制は有効?労働環境には金をかけない〜

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映像配信サービス「DAZN(ダゾーン)」を運営する、Perform Investment Japan株式会社で労働基準監督署の是正勧告が出たとして、ブラック企業ユニオンが記者会見を行いました。

具体的な内容としては、動画・番組制作担当の Aさんに対する2016年度の裁量労働制の無効、2017年度の管理監督者の無効を判断した上での、違法な時間外労働、残業代未払いによる労働基準法違反の是正勧告でした。

これまでの経緯についてはこちらをご覧ください。

Jリーグやプロ野球を配信する「DAZN」で団体交渉!月119時間残業しても残業代ゼロの「定額働かせ放題」

どうして今回の会見に至ったのか、 Aさん自身が説明します。今回は、第一回目の団体交渉の報告です。

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■労使協定が「確認できない」けど、裁量労働制は適用できる?

会社側の参加者は、人事部長とHRマネージャー、そして弁護士2名でした。

労使交渉の際には、前もって会社へ社内規程など資料の開示要求することが一般的であり、本件も申し入れの際にいくつかの開示要求をしています。ですが、団体交渉直前になっても、会社は理屈を二転三転させ提出しませんでした。当日、書類の束が渡されましたが、提出されていないものがいくつかありました。
重要なものとしては、私の勤務期間における下記の重要な労使協定書がありませんでした。

36協定:労働者に法定労働時間を超える時間外労働をさせるために不可欠な協定。
専門業務型裁量労働制における労使協定:専門職裁量労働制を適用する際に必要。

指摘すると、労使協定がない理由について、会社は「現在の担当者が入社する前のものなので、探している途中。」と回答。人事担当者が変わると、会社の書類はなくなるようです。また、提出先である労基署に問い合わせることも、当時の人事担当者に連絡することも拒否しました。
人事担当者の専門職裁量労働制に対する見解は、

「協定を結んでいなくても、業務内容が適用対象であれば、裁量労働制を適用できると思う。」

でした。しかし、実際にはこの協定がなければ、社員に対し違法に裁量労働制を適用していたことになります。

■名ばかり「管理監督者」について

次に、会社は、私が管理監督者としてふさわしい処遇がなされていたとの主張をしました。しかし、主張の根拠は法律に則っていないおそまつな内容や、あるいは全くの事実無根や齟齬がある主張が大半でした。また、在職中に、会社の主張する私が持っていた権限の説明がされたことはありません。昇格時の労働条件通知書の書面でも触れられていません。
労働基準法が定める「管理監督者」には、明確なガイドラインがあります。企業で一般的に使われる「リーダー」「管理職」とは違う、法律上の用語と定義です。

当てはまるかどうかは、主に下記三点の判断基準があります。

・経営者と一体といえるほどの重要な職務権限を有しているかどうか。
・出退勤時間の自由があるかどうか。
・賃金その他の面において一般従業員よりも優越した待遇かどうか。

「管理監督者」には、残業代、休憩、休日に関しての労基法の規定が適用されず、「定額働かせ放題」にできます。これを悪用し、該当しない従業員に肩書だけを与える企業があります。「名ばかり管理職」と呼ばれ社会問題になっています。

DAZN(ダゾーン)の運営会社では、管理職(マネージャー)だけでなく、更に下の、管理職権限を全く持たないチームリーダーにすら「管理監督者」の肩書をつけ、残業代を払わなくてもいいようにしていました。

DAZN(ダゾーン)の組織構造は極限まで細分化されており2〜3人のチームも多いですが、「名ばかり管理職」をできるだけ増やすためなのかもしれません。

■労働環境に費用をかけない

前回も軽く触れましたが、DAZN(ダ・ゾーン)は体裁をかなり気にする体質で、見栄や虚栄心がとても強い企業です。権利や広告費、パーティーや海外出張など、対外的な用途の経費には非常に甘く、滞在するホテルは4〜5つ星、条件を満たせば平社員、役員関係なくビジネスクラスの飛行機に乗れます。しかも大抵直前に予約されるので、びっくりするくらい高額になります。パーティーはホテルや高級バーなどで盛大に行われます。

会社にとってスポーツはただのビジネスの商材でしかなく、従業員やスポーツチーム、ファンのことを大切にはしていません。そのために人件費、カスタマーケア、サービス内の制作費、機材など、見えない部分への予算は桁違いに低く、また承認もされづらいです。

DAZN(ダ・ゾーン)のサービスのスタートから数年が経ちました。しかし、サーバー容量の増設や、機材の増設予算の承認はめったにされないため、制作現場は常に疲弊しています。そうしている間にも、配信するスポーツの種類と試合数はどんどん増えていきます。

コンテンツのサーバーの容量は、動画を扱う業種としては異常なほど少ないのですが、これは一定の保存期間(種類にもよるが、大体1〜2週間程度)をすぎると、自動的にデータが消えるようになっているためです。ただ、自動的に消えるといっても、コンテンツの量がものすごいスピードで増えたため削除が追いつかず、残り容量が足りなくなり緊急メンテナンスが行われたりしていました。また、サーバーはいつも不安定で、異常な頻度でダウンしていました。その度に、ただでさえ時間に追われているスタッフの手が止まるのです。

トラブルも多く、Jリーグのあるシーズンの開幕戦からかなりの期間の録画データがサーバーのエラーによりそっくり消えたことなどもありました。
他にも、視聴者の方から「クルクル」と呼ばれる、丸い読み込み中アイコンが出て動画が止まる問題がありますが、受付やオフィスの壁のモニタも常に「クルクル」していたり、エラーメッセージが出っぱなしになっていたりで、全てが正常に映っているのはほとんど見たことがありませんでした。
会社は自分たちがいかに従業員やスポーツファンのことを大切に思っているかをミーティングや社内ニュースレターで繰り返しますが、本当にそう思っているのなら、労働環境をよくするため、人員や機材投資にもっと予算をまわしていると思います。

第一回目の交渉で会社は未払い残業代があることを認めませんでした。また、会社側の出席者は話し合いの間、まるで子供のようにふてくされた様子で、さも自分は関係ないという態度と言い逃れのような発言を終始し続けました。会社側のスタンスも全く定まっておらず、非常に不誠実な対応でした。今後は「当時私はいなかった」や「この人がこう言ってます。」「こう言われたから。」などと言いわけで責任逃れをしようとせず、もっとしっかり責任感を持って対応をするよう強く要求します。


【相談窓口】ブラック企業ユニオンでは、労働相談を受け付けています。DAZN(ダゾーン)の運営会社で働いていて、名ばかり管理職や裁量労働制を適用されていた、残業代が払われなかった、長時間労働だった、などの相談・情報提供を受け付けています。

電話番号:03-6804-7650
(平日17~21時/土日祝13~17時 水曜定休日)
メール:info@bku.jp

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