フリーランスを「使い捨て」にするベンチャー企業の実態。 ウェブ制作X社が駆使するやり方とは。(エピソード3)

  ウェブ制作X社にて、プロジェクトマネージャー兼ウェブディレクターとして業務委託契約のもと常駐勤務をしていたフリーランスのAさんと、Web制作全般を担当していた元社員であるBさんがブラック企業ユニオンへと加盟しました。そして2019年5月20日に団体交渉を申し入れ、現在交渉中です。

今回の投稿はAさんに寄稿いただいた事件の経緯を説明するための文章の第3弾です。
過去の記事はこちら。
エピソード1:https://note.mu/sguion/n/n265ada0b4566?magazine_key=m96fa40bed4e5
エピソード2:https://note.mu/sguion/n/nc927d7b690e0


   面接当日、私はそれまでにBさんと行った調査で明らかになったウェブサービスBの開発に必要な前提情報をできるだけ包み隠さず候補者の方に伝え、本人の判断で出来そうかどうかを判断してもらおうと決めた上で面接に参加しました。そうでなければ、何度人を変えて開発に取り組んでもTさんとの間に起きたようなトラブルを量産する結果になることは目に見えていたからです。この点については、事前に同じく面接に参加するBさんとも話をしました。

面接に現れたフリーランスのMさんは女性の方で、システム開発のプロジェクトマネージャーを勤めたこともある経歴をお持ちの方でした。お互いに簡単な自己紹介をした後、インターンのDさんが現在進行形で作成中のUIリニューアル案(そもそもこの段階で要件を固めていないのもおかしいのですが、社長の指示で進めていました)をプレゼンし、機能の追加等の説明を進めていきました。Mさんの顔はどんどんと曇っていきましたが、社長も静観していました。

私はできるだけ客観的な視点からウェブサービスBの現状についてを説明し、Mさんが冷静に判断を下すための情報提供を心がけました。Mさんの場合はプロジェクトマネージメント経験もあったので「私個人での開発は少し荷が重い」として、ウェブサービスBの開発に関してはその場で辞退することになりました。私としては妥当な判断だと思いましたが、面接後の社長は明らかに不機嫌でした。

私は面接後にこのウェブサービスBの開発プロジェクトは然るべき業者に要求をしっかりと満たす開発を依頼すればXXX万円前後はかかる可能性が高いことをアドバイスをし、私の常駐開始前から繰り返している「素人なので分からない」という考え方を改めるようやんわりと進言をしました。しかしながら、開発にいくら予算を考えているのか?という質問を投げかけると、悪びれることなく「うーん、10万円くらいまでかな」と言い放つばかりでした。

この時点で私もかなりの違和感を感じるようになりました。その違和感というのは、「本当に素人で、本当に相場が分かっていないのか?」という点でした。仮にも依頼を請けての広告制作を日々こなしている会社の経営者が、ウェブサービスの開発に話が変わっただけでそんなに相場観が崩壊するものでしょうか?もしも意図的に安い金額で請けてくれる無知なフリーランスを探し回っているのなら恐ろしいことだ、と思い始めたのはこの頃でした。

そしてこの面接の直後に、事前に3ヶ月程度のスケジュールで依頼されていた自社ホームページのリニューアル案件に関するチーム全体のスケジュールの提出を求められました。適切なスケジュールをプロジェクトメンバーに提示するとともに、先に述べたとおりBさんにコーディング業務の負担が集中していたのでCさんにコーディングやプログラミングの技能を習得してもらうための「ペアプログラミング」の提案をし、Bさんの発言力を高めながらCさんのスキルアップを狙っていく計画を提案しました。おそらくこの手法を取りチーム全体での負担分散と技術力の底上げを図っていかない限り、「ウェブ案件をどんどんこなしていけるチームを作る」という当初の目標は達成不可能だと考えたからです。この計画はプロジェクトメンバーに受け入れてもらえたので、社長へと説明をしました。

ところが、社長は私がペアプログラミングの説明をし始めたところで、突如態度を急変させ、以下のように追い詰めるようにまくし立てました。


会社「本来1人で出来る業務を2人でやるのはどう考えても効率が悪いよね?」

本人「現状Bさんに負担がかかりすぎているので、そのための措置です。Cさんがコーディングできるようになってくれれば全体の能率は確実に上がります。」
「いやいやもっと負荷をかけていかないと。20代のうちに一つでも多くの仕事を与えていかないと社員は一生プロフェッショナルになれないんだよ?」「メンバーの声を聞いて総合的に判断した結果です。これ以上Bさんに負荷をかければBさんが辞めてしまう可能性だってあります。」
「そもそもスケジュールについても、一度に一つの案件しかこなせないんじゃ話にならないでしょ?スケジュール表の空いている部分にもっと別の案件も詰め込まないと。」
「現在のメンバー個々のスキルではその方法だと品質の維持が難しくなります。もちろん臨機応変に課題を与えていきます。」
「課題を与えるって言ってもお金になる仕事を回していかないと売上にならないでしょ?」
「元々クライアントからの依頼案件については納期にかなりの余裕があるので、今は自社案件を通してメンバー個々のスキルアップを図るべきです。」「そうだとしてももっともっと負荷をかけて仕事をやらせないとダメでしょ?」
「それではメンバーが潰れてしまいます。」

このような内容で社員全員の前で私を執拗に追い詰めるような問いかけを延々と繰り返してきました。その後、外に呼び出され、社長から「ウェブ制作X社の売り上げはXX万程度あるにも関わらず、それに対しwebチームはXX万程度の売り上げしかない。そのくせ人件費はXX万かかっているのは分かっているのか?」と謎の詰め方をされました。

当たり前ですが、私はこの現場に入るようになってからまだたったの2週間。訳の分からない理論でひたすらに追い詰められ、まともに反論しても謎理論でまた追い詰められる。

業務委託にも関わらず介入が多すぎるし、そもそも主張の意味がわからないので「とにかく私のこの方法がこのチームにはベストだと考えているので、引き続き御社の売り上げ向上のために尽力させていただきます。」と言い残して業務に戻りました。プロジェクトメンバーには当初のスケジュールと方針通りに業務を進めることを確認し、その日は帰宅しました。

 しかし翌日土曜日の午後1時頃、社長から以下の内容でメッセージが送られてきました。



今のウェブ制作X社の売り上げはグラフィック、動画、資材合わせて7人程度で年間XX万の売り上げをあげてます。それに対してweb チームは、4人いて、年間XX万くらいの売り上げしかありません。年間の人件費は約XX万です。完全にマイナスなのは分かりますか?僕の考えは失敗しても成功しても1つでも多くの案件を抱えて、沢山のjobをこなす事が成功につながります。
正直、20代の時にこれが出来なかった社員は一生プロフェッショナルになりません。Aくんの考えは完全に僕とは正反対ですよね?Aくんも、この時給だと何ヶ月もかけて1つのサイトしか管理が出来ない?正直、力不足です。全く必要としないので月曜から来なくていいです。もちろん今までに来て頂いた分は支給します。この内容をみて月曜に会社に来たら、僕の方針に乗ってるものと判断しますね。タスク管理も徹底してもらいます。以上、宜しくお願いします。

  この辺りで完全に私を追い出しに来ていることが判り始めました。

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