ショウジョウ

猩々。神社のこと、野山のこと、お酒と食べ物と音楽のお話をします。

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最近の記事

私の本の読み方(歴史書を中心に)

40冊分くらい、大半過去に読んだ本ではあるんですが、どれについて書こうか選んだり、読み直したりしてみて、改めて感じた、気をつけているポイントを少し書いてみます。普段本読む人には当たり前の話かも知れません。 ・著者の略歴 ある程度同じジャンルの本を読んでいると、名前見てだいたいわかったりもしますが、最初はわからないのでとにかく確認します。まず最初に別れるのは、専門の研究者か、副業なのか。専門家だからいいと言うことはありませんが、専門家であれば割ける時間が違いますので、バック

    • 「入門 般若心経の読み方」ひろさちや

      フリッチョフ・カプラについて触れたので、般若心経にも。仏教に関する入門書を大量に書かれているひろさちやさん。扱うテーマは大きなものから、個別な経典の内容まで様々ですが、その語り口は至って平易です。 般若心経について、私はよく「情報理論である」というような説明をします。もっと言うと、「情報と物質の相互作用」について説明されている、というような解釈をしています。 一般には、「空」観とはなんぞや、に対する経典である、という解釈だと思います。それであってます。龍樹が書きたかったの

      • 「タオ自然学」フリッチョフ・カプラ

        松岡正剛とか西山賢一とか紹介してたら、これも書いてもいいかという気になりました。東洋哲学の世界を現代物理学的に解釈する、あるいは、現代物理学の発展に東洋哲学的な視野がどのように貢献してくれるか、ということに対する提言。90年代の「複雑系の科学」の一角を為す本です。 読むのにわりと苦労した本で、物理学パートはともかく、行列に関する知識(それも物理学で使うものなのですが)がちんぷんかんぷんで、学生だった当時、物理学科の友人の家におしかけて教えを請うた覚えがあります。 般若心経

        • 「日本文化と八幡神」佐々木孝二

          神社の性質を考えるときに、起源だけでなく、どのように信仰として広まってきたか、ということを追っていく必要があると思っています。八幡神は日本で最も広く信仰されている神であり、その全容について調べることは大変な労力を伴います。 本書は、古代信仰のあり方から八幡神の起源を考察し、宇佐氏・宗像氏といった関連氏族との関わりから「八幡神」として信仰が定着する様に言及、中世くらいまでを目処に、全国的な広がりを見せる過程までを追っています。 現在、日本にある「○○神社」のうち、最も多いも

        私の本の読み方(歴史書を中心に)

          「ヤマト少数民族文化論」工藤隆

          「ヤマト少数民族」という語感が若干わかりづらく、興味を惹かれて手に取ってみました。一言で言ってしまえば、「日本という国は少数民族によって建国された」ということなのですが、この説明だけだと色々な解釈が可能です。 まず、そもそも「国家」を形成した時点で(著者も指摘している通り)「少数民族」とは言えません。また、国家全体が単一の「少数民族」によって建設されたのか、あるいは「先住民族」を「少数民族」が支配した、というような論調なのか、という論点もあります。本書では、日本は複数の「少

          「ヤマト少数民族文化論」工藤隆

          「蘇我大王家と飛鳥」石渡信一郎

          以前、「応神=昆支説」で紹介した、石渡信一郎氏の飛鳥時代に関する考察。タイトルに結論が書かれている通り、蘇我氏(として記紀に書かれている系譜)が王権を持っていた時期がある、という説を採っています。 飛鳥時代の王権に関するトピックとして最大のものは、「隋書」に遣隋使派遣時の日本の天子として、「阿毎字多利思比孤(アメノタリシヒコ)」の名があることでしょう。日本側の記録では推古天皇が送ったことになっていますが、タリシヒコは男性名です。石渡氏はここに、蘇我馬子・聖徳太子を当て、二人

          「蘇我大王家と飛鳥」石渡信一郎

          「日本文化の形成」宮本常一

          図書館でなぜか(?)歴史コーナーに置かれていた民俗学の大家、宮本常一の日本民族形成論。日本民族が「どこから来たか」みたいな議論は一時流行ったものの、1981年という時代に、複数の要因・来歴から多民族国家としての日本民族の形成を論じたその視野には敬服せずにはいられません。 民俗学が考察に用いるツールとしては、祭祀や民話など様々ありますが、本書では生活誌を主なツールとして飛鳥〜弥生あたりまでを中心に遡ります。縄文時代についても触れられてはいるものの、複眼的な本書の主題としてはこ

          「日本文化の形成」宮本常一

          「古代金属国家論」内藤正敏、松岡正剛

          以前、「日本『異界』発見」という本で紹介した、山伏で写真家の内藤正敏さんと、編集者、読書人で複雑系の科学のナビゲーターとして活動されていた松岡正剛さんの対談。松岡さんの紹介これで合ってる自信がない。 時代的には中世を中心に扱ってはいるのですが、日本の国家創世から、中世に至るなかで「金属の信仰」がいかに影響を与えてきたか、ということに対するフリートーク。基本的には、内藤氏の実体験に基づく研究を松岡氏が引き出して行くような形で進行しています。 真弓常忠の「鉄」や松田壽男の「水

          「古代金属国家論」内藤正敏、松岡正剛

          小学館歴史漫画「少年少女 日本の歴史」

          突然ですが漫画です。 「日本の歴史に興味持ったんだけど、何から読んだらいい?」と聞かれたとき、だいたい最初にこれを薦めます。よっぽどニッチな、というかこの本にも書かれていないようなテーマについて聞かれたんでもない限り。 それくらい親切かつ中庸、さらに詳細に書かれている「日本通史」で、通史そんなに読んだわけでもないですが、これ以上のものはちょっと思いつかないです。ただ、子供が読む用のものなので出典とかはありません。なので、ここから深追いしたいとかには向かないんですけど、ここ

          小学館歴史漫画「少年少女 日本の歴史」

          「方法としての生命体科学」西山賢一

          以前「文化生態学の冒険」を紹介しました、多分野を股にまける異端児、或いは「右と左の変なおじさん」、西山賢一氏の学問のある程度網羅的な話を含んだわりと固めの本。 「たんぱく質の鋳型」としての遺伝子からはじまり、振動子の集合としての捉え方、細胞の集まりとしての生命、など大きい単位に話を敷衍して行きます。するとその大きなものは(単一の種にとっての)社会となり、複数の種の集合としての生態系になって行きます。 その自己組織化と進化にまで話が及ぶため、途中でオートポイエーシス論の説明

          「方法としての生命体科学」西山賢一

          「山の神」吉野裕子

          以前、吉野氏の「蛇」という本を紹介しました。本書は、その「蛇」=祖神、という考察をさらに発展させ、山の神としての属性と山の信仰について論じています。 冒頭で、倭建命を危地に陥れた山の神が、古事記と日本書紀でそれぞれ「猪」と「蛇」であることに着目し、それぞれの「山の神」としての性質を、祭祀事例と陰陽五行の理論から紐解いています。 「蛇」同様、豊富な事例と独創的な着眼によって論を展開しつつ、吉野氏の他の著作でも見られるように、陰陽五行の理論からそれらを照らしています。 トピ

          「山の神」吉野裕子

          「世界史のなかの縄文」佐原真・小林達雄

          考古学会の大御所で曲者な二人の対談。私対談好きみたいですね。目次の後の、ガン飛ばしあってる写真から仲の良さが伝わってきます。 「世界史のなかの」というテーマだけあって、人類史の大きな流れの中でどのような位置付けになるのか、同時代・前後の各地と対比してどうか、というようなテーマで自由闊達に議論しています。 この二人多分仲良いと思うんですけど、専門分野も立場も微妙に(?)異なっていて、お互いの意見を尊重しながらもここは違う、ああだこうだと意見を交換していくさまは、読んでいてと

          「世界史のなかの縄文」佐原真・小林達雄

          「斎宮」 伊勢斎王たちの生きた古代史 榎村寛之

          読みは「さいくう」です。7世紀〜11世紀の七人の斎王の物語を中心に、史書ベースで同時代の斎宮を巡る動きを追った一冊。ヤマトヒメとトヨスキイリビメについては本書では、伝説的な面が色濃いとして、触れるに止まっています。 斎宮の制度と、政治的な役割に関する本ではあるのですが、殊に前半部分、七人の斎王に関する記述が秀逸で、史書の中から活き活きと時代を生きた姫たちの姿を描き出しています。 後半部分は、平安時代を中心に、京と伊勢がどのような関係にあったのかを、賀茂斎院をはじめとする施

          「斎宮」 伊勢斎王たちの生きた古代史 榎村寛之

          「白村江」以後 国家危機と東アジア外交/森公章

          白村江の後の、今度は日本国内の情勢についての森公章氏の著作。昨日紹介した中村氏の本は白村江の戦いがなぜ起こったか、とどのように進んだか、を中心に、主に朝鮮半島の情勢を中心に述べたものでしたが、こちらは日本視点での経過と、事後処理についての著作です。 白村江「以後」というタイトルがついてはいますが、半分程度は白村江に至る経緯を、日本と百済の関係を中心に書かれていますので、白村江の予備知識がなくても本書のみで読み進めることができるかと思います。 この時代には創作っぽい話も含め

          「白村江」以後 国家危機と東アジア外交/森公章

          「白村江の真実 新羅王・金春秋の策略」中村修也

          新羅の武烈王こと金春秋が、王位につく前からいかにして新羅という国を守るために東奔西走してきたか、という大河ドラマのような一冊。 7世紀朝鮮半島(と日本の)情勢シリーズ。高句麗・新羅・百済の三ヶ国の確執を、史書の記述を中心に若干の物語仕立てを交えながら構成しているために非常にわかりやすいです。 人物・出来事・地理的な位置関係を豊富な写真と共に記述していて、ビジュアルにも印象豊か。出典も史書が中心のため、気になるところは後追いも容易です。 石渡氏の本の紹介でも書きましたが、

          「白村江の真実 新羅王・金春秋の策略」中村修也

          「百済から渡来した応神天皇」石渡信一郎

          応神=百済の王子・昆支(こんき)説を唱える石渡信一郎氏。これはそのまんまのタイトルです。この辺の話のときに(是非共に)引用されがちなので、何冊か目を通しておくと良いかも知れません。 百済と日本の関係と言うのはよくわかりません。同一王朝説から、主従関係まで「諸説あります」。石渡氏は本書で、互いに独立した国家としての「倭」と「百済」を想定し、百済→倭に「入り婿」する形で来朝した人物が王位継承した、という立場をとります。 ただし該当の倭王朝は加羅から渡来した人物(祟神)が開いた

          「百済から渡来した応神天皇」石渡信一郎