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「骨が語る日本人の歴史」片山一道

発掘人骨から、当時の人種的特徴や生活様式を探ろうという「骨考古学」の本。著者が自らを名乗る「骨屋」という呼称に謎の迫力を感じます。

話はわかりやすく旧石器時代・縄文時代に起こり、江戸時代や、現代人の骨格と生活をも視野に入れることでその対照を鮮やかに描き出します。

著者は、その立場から縄文〜弥生間の人種の変遷については、かつて言われていたような「交替」ではなく、「混合」という見解を示しています。これらは文化的な考察からも、様々な指摘が成されています。

考古学というものは、どこまで言っても「わかることしかわからない」愚直な学問です。隣接する歴史学の諸分野が、想像に満ちているため愚直さが良い意味で際立ちます。本書の後半ではは、その姿勢から、司馬史観を始めとする、想像と断定に満ちたいくつかの言説に対する疑問が提示されています。好きな人は好きそうな話。

考古人骨という、数少ない物証から「わかることだけをわかると語った」文字通り骨太な一冊。様々な分野に、あるいは様々な地域にこのような研究が満ちれば、すごく筋の通った学問ができあがりそうです。

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