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【おすすめ本】「熊野 神と仏」


熊野や、日本の神様のことに関心がある方に是非おすすめしたい本があり、紹介します。

宗教学者の植島啓司さん、熊野本宮宮司の九鬼家隆さん、 金峯山寺執行長の田中利典さんお三方による「熊野 神と仏」という本です。三人の著者がそれぞれ一稿ずつ書き、その後にお三方による鼎談、という構成です。

私は鼎談の部分が特に面白く、日々熊野の神に仕える九鬼宮司の感じ方、吉野から見た熊野、両者の関係、世界遺産の登録に至る経緯やそこに込められた思いなどが率直に語られていて、熊野の神々と祀る神社をとても身近に感じられる内容でした。

九鬼宮司がおっしゃるには、熊野本宮の社地が高台に移ったことに関して、大斎原に戻してはどうか、と勧められることがあるそうです。それに対しては「場の持つ力としては大斎原の方がある」と認めながらも、「洪水によって高台に移ったことについては何か意味があると感じている」と、今のところ移す考えはないとのことでした。この本は2009年の出版なのですが、2年後の2011年に紀伊半島を襲った水害により、大斎原には大量の土砂が進入しています。その話を聞いたときに、日夜神様に仕える方の感じ方というのはそういうものか、と感心したものです。

他にも、あまり触れられることのない「産田社」の話など、熊野三山の成立から歴史的な経緯、そして「今」現場にいる方の話、がコンパクトな中に濃縮して収められていて、すぐ読めるのに味わい深く、何度でも読み返してしまう本です。

熊野信仰に関心を持ったけれど、何から読んでいいかわからない、という方や、現地の神職の方は実際どう思っているの?ということに関心がある方は、是非一度読んでみてください。



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