見出し画像

「文化生態学の冒険」西山賢一

「ヒト社会の進化と適応のネットワーク」とサブタイトルがつけられているこの本。著者の西山賢一氏は、化学分野から生物学へ、生態学的な視野から経営学(組織論)を経由したあと理論経済学の研究をし、「異色」という呼ばれ方をよくされていました。本人曰く、「10年ごとに違う分野にチャレンジしたい」とか。この本が出版された90年代には「文化生態学」ということを言い始めます。

上記のような幅広い視野から、人間の社会がどのように発生し、発展してきたのか。そして現代に生きる我々はどのように関わりを持っていくべきなのか、というテーマにアプローチしています。

生態学的な意味での集団形成にはじまって、日本人の先史時代・先土器時代・縄文時代から近世に至るまでの社会のあり方と発展を眺めることで、現代に生きる我々が「情報」をどのように社会に取り入れながら発展して行くべきか、というような提言をしています。

「目に見えないもの」をどうやってつかまえて、つなげていくのかとか。「自然」と呼ばれる世界との間に我々の祖先が築いてきた「関わり」を、情報社会の中でどのように継承・発展させて行くのか・・・極めて現代的なテーマに、すでに20年前に取り組んでおられました。時代がようやく追いついた、というところでしょうか。

本書の出版当時は、「インターネット」がようやく登場したくらいで、「SNS」のようなものはまだ見えてきていなかったように思います。例えば、「twitter」が本書で言うところのどんな役割を果たしているのかとか。そんなことを考えながら読むのも面白いかも知れません。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?