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「方法としての生命体科学」西山賢一

以前「文化生態学の冒険」を紹介しました、多分野を股にまける異端児、或いは「右と左の変なおじさん」、西山賢一氏の学問のある程度網羅的な話を含んだわりと固めの本。

「たんぱく質の鋳型」としての遺伝子からはじまり、振動子の集合としての捉え方、細胞の集まりとしての生命、など大きい単位に話を敷衍して行きます。するとその大きなものは(単一の種にとっての)社会となり、複数の種の集合としての生態系になって行きます。

その自己組織化と進化にまで話が及ぶため、途中でオートポイエーシス論の説明を挟みます。オートポイエーシスとは、自己組織化とか自己生成というような意味の、生命の働きを捉えようとしている言葉です。

神話も自己生成するんだよな、というようなことを最近思います。近年生まれた様々な文化、あるいはサブカルチャーかも知れませんが、その生成と敷衍、進化の過程を見ていると、かつての神話もかくや、というような思いにとらわれます。

有機的な集合体である社会がどのように自己生成し、変化または進化するのか。また、その共通言語であるところの神話はどのように変化、伝播するのか。そして、自身は社会の中でどのように役割を変化させていくのか。

特に日本のように、万物に魂を感じ、神話化する社会での伝承を考察するに当たっては、西山氏言うところの「生命体科学」のようなアプローチは不可欠と言えるでしょう。

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