見出し画像

「古代金属国家論」内藤正敏、松岡正剛

以前、「日本『異界』発見」という本で紹介した、山伏で写真家の内藤正敏さんと、編集者、読書人で複雑系の科学のナビゲーターとして活動されていた松岡正剛さんの対談。松岡さんの紹介これで合ってる自信がない。

時代的には中世を中心に扱ってはいるのですが、日本の国家創世から、中世に至るなかで「金属の信仰」がいかに影響を与えてきたか、ということに対するフリートーク。基本的には、内藤氏の実体験に基づく研究を松岡氏が引き出して行くような形で進行しています。

真弓常忠の「鉄」や松田壽男の「水銀」など、古代からの信仰に金属資源が与えた影響については様々な研究がありますが、本書はそれらに触れながらも、もう少し広い話で、かつ、科学的な視点で論じています。

何より、自信が山伏として修行を積まれている内藤氏の話はやはり説得量がある。松田壽男の「水銀の含有量が高い土地の食べ物を食べ続けることで(ミイラ生成に必要な)防腐効果を得た」という推論に関しても、内藤氏が「あの推論はちょっとムチャだと思うんですよ」と言えば、理由なんかなくても「内藤さんが言うんならそうなんだろうな」と思わせるような説得力がある。いやちゃんと理由についても説明してるんですけど。

トピックとしては、出羽や羽黒といった修験社会と金属との関わり、大仏造営の意味、平泉黄金郷、などです。金属信仰のみならず、中世修験道と国家との関わりや、大和政権編入期の東北国家の話なんかに興味ある方には、楽しく読める本だと思います。


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?