久々に興奮する本に出会った。「RISC-V原典」

RISC-Vをご存知だろうか。リスクファイブと読む。

全く新しいオープンソースの命令セットアーキテクチャで、シンプルにして大胆、そして拡張性が高くパワフルということでにわかに注目を浴びている。

命令セットアーキテクチャ(ISA;Instruction Set Architecture)というのがなんなのかピンと来ない人のために説明すると、これは要するにコンピュータの根幹部分であるCPUの仕様書、設計図のようなものである。

例えば、いままではISAはIntelやARMといった会社が独占的に決定し、設計図を含めたIP(知的財産; Interectual Property)を販売し、AppleやSAMSUNGはそれを購入して自社の半導体チップ(CPU)に実装する必要があった。

これがまあべらぼうに高い。

このIPの価格が高いことが、世界中のメーカーの不満だった。そしてどんどんスマホの値段が上がる原因でもある。

そこでコンピュータ科学とオープンソースの名門であるカリフォルニア大学バークレー校が中心となって設計したRISC-Vが登場する。

これは全く新しい命令セットアーキテクチャ(ISA)であり、各半導体メーカーはこの命令セットアーキテクチャに準拠したCPUを誰でも作ることができる。

ISAはCPUの設計図そのものではないが、ISAが統一されることで、アセンブラやコンパイラやOSなどのツールチェインが統一され、誰が作ったCPUであっても、同じISAを使っていればプログラムを走らせられることになる。

まさにCPUの民主化であり、これに興奮するのだ。

さらに、従来のISAは、30年以上前の基本設計に継ぎ足し継ぎ足しで機能を追加していったため、極めて無駄が多い。RISC-Vはこうした現代の設計が持つ問題点を全て払拭し、最新のCPU構築理論に基づいてもっとも無駄なく効率的な設計を目指している。

CPU設計者はRISC-VのISAに基づいて、自由に高性能なCPUを設計できる。消費電力を抑えたCPUも、高速性だけを追求したCPUも自由自在だ。

さらにRISC-Vは、CPU設計者は必要に応じてより複雑で高度な命令セットをモジュール式に追加できる。

Z80(古い)のようなスーパーシンプルなCPUを作ることもできる(これは頑張れば夏休みの工作でも作れそうなレベルである)し、最先端のCoreアーキテクチャと同等以上の超高性能CPUも作ることができる。

これだけ聞いても、本書のなにが面白いのか理解するのは難しいだろうが、僕自身は80x86系とRISC系、そしてSH4などの組み込み用CPUのマシン語をいじってきた。

最近はご無沙汰だが、こういうCPUアーキテクチャというのは人類の叡智の結晶であり、「思考すること」とは何かを決定づける、宇宙の神秘を解き明かす冒険でもある。

本書に興奮するのは、筆者がこれまでのCPUアーキテクチャの問題点や無駄を丁寧に説明する謎解き的な面白さと、これからのあるべきCPUアーキテクチャ(RISC-V)の使命と創意工夫、いわば30年分のフラストレーションが一気に解放されるようなカタルシスの両方が味わえる。

唯一欠点があるとすれば、この本を読むとすぐにでもVerilog HDLを立ち上げてRISC-VのISA対応のCPUの設計を始めてしまいそうなところにある。

これを機に日本の子供たちがうっかりCPU自作に目覚めたら嬉しいなあ。

まずはエミュレータから、これは作るのが簡単。

次にVerilog HDLで論理設計をしたら、FPGAまでマッハだ。まあそこから先が大変(数十億単位のお金がかかる)んなんだけど、こういうことにこそ国はお金を投じるべき。

若者たちからCPUの設計案を出してもらって、もっとも有望なものを実際にASICで実装して配布するような国家プロジェクト、やんないかしら、ねえ、経産省さん



この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

23

shi3z

shi3z note

3つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。