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海をまもる:ブルーオーシャン

今回の記事はこちら、「海をまもる:ブルーオーシャン」。日経BizGateのインタビュー記事「海洋プラごみ問題解決へ スタートアップ創出後押しを」を受けた時にあれこれ考えていたことを文章に落とし込んでみました。

はじめに:「海」というものを改めて考えてみる

全ての生命は海から始まった。何十億年もの歳月の進化のスタートは海の中だった。奇跡的な条件で奇跡的な組み合わせが起こるのが私たちの地球であり、その中で私たちは奇跡的に進化し続けてきた。そして進化の先端に立つ私たちの未来を握っているのは、もちろん私たち自身の手である。

この地球はあらゆるものが究極のバランスで保たれている。そしてそのバランスの中でありとあらゆるものがたどり着く先が海である。上善如水という有名な諺は、水が常に低いところ低いところに流れていくのを哲学的に人のあるべき姿として捉えており、全ては低いところに流れ着き、そこにおさまる、全ての事はおさまるところにおさまる、はずである。

しかし、地球三大危機がもたらした環境汚染は、このバランスを崩している。海が汚染されているということは、そこにたどり着くまでの全ての自然環境が汚染されているという事実がある。私たち人間はこれを忘れがちである。過去には、私たちは海を無料のごみ箱のように扱ってきた。しかも、それが永遠に続くような錯覚に陥っていた。海が何でも吸収するはずだと思い込んでいたが、そんなことはありえない。地球という限られた環境は、宇宙に繋がっているわけではなく、ただの無料のごみ箱でもない。海に捨てれば全てが解決するという誤った認識を持っていたのである。

私が高校の化学の授業で聞いた先生の説明も、同じように間違っていた。先生は、「環境汚染対策で一番実践的な方法は、原因汚染物質を希釈すること、つまり海に流すことだ」と言っていた。私はこの説明に強い印象を受けたが、今思えば、濃度によっては適切な説明ではなかった。

そもそも論

近代経済社会になってから、特にここ50年間では環境汚染問題全体に関しては改善がみられるものの、環境汚染問題の本質、つまり私たちの真の習慣は変わっていない。

例えば、多くの国では法制度が整っており、ポイ捨ては法律違反ですが、街にはポイ捨てごみが多く見られ、特に自動販売機の横のアルミ缶とPETボトル回収ボックスに、ありとあらゆるごみを突っ込む人が多いです。先週末、私は大阪城公園に行きましたが、自動販売機の横の回収ボックス周辺にはありとあらゆるごみが捨てられていました。普段の生活では、ほぼすべての日本人はちゃんと分別しているのに、外に出るとこのような状態になってしまいます。一人の人間として認識される場合は完璧にその役目を果たしますが、多数の一人となった場合は一人の人間としての自分自身ではなく、多数の中の一個人として振る舞う、後は野となれ山となれ状態。

海洋汚染問題を含めたすべての地球環境問題は、すべて私たち人間の問題です。ついつい、「海洋汚染」という言葉で、他の誰かが原因で発生している問題のように伝えがちです。環境問題は「誰もが加害者で誰もが被害者。環境問題に第三者はいない」と言うことを、現代社会は忘れています。「きっと誰かが解決してくれるはず、私ではない」と思う人が多いのではないでしょうか?

海洋プラスチック問題は、環境汚染の根本的なメカニズムであり、水俣病と同様に人間が排出したものが地球環境、特に海を汚染し、その結果が自分たちに返ってくるという問題です。水銀、プラスチック、二酸化炭素、フロンガスなどの違いはあれど、根本的な原因は我々人間であることに変わりありません。

条約策定や各国内の法制度、技術開発、草の根活動などは、小手先の対策であり、本質的な問題解決にはつながりません。海洋プラスチック問題の根本的な解決には、個人レベルからのライフスタイルの見直しや消費行動の変革が必要であり、持続可能な社会への転換が求められます。政府や企業による政策や取り組みも必要ですが、それらが本質的な解決につながるには、個人の意識改革が欠かせません。

脱炭素対策と比べるとプラごみ対策はどう見えるか?

どこに重点を置くのか、どの数値を使って比べるのかだが、例えばCO2換算した場合、私個人的な計算ではあるが:

  • プラスチック製品の生産におけるCO2排出は全体の約3%

  • プラスチック廃棄物から発生するCO2は全体の0.7%程度

このため、脱炭素という文脈では、プラスチック対策は優先順位が高くありません。脱炭素において、エネルギー政策や運輸産業の対策が急務になるのは当然です。

一方で、普段の生活の中で最も身近な環境問題はプラスチックごみ問題です。ほとんどの人が毎日何らかのプラスチックごみを出しているでしょう。こうした日常的な問題を通じて、プラスチックごみ問題やその先の海洋プラスチックごみ問題に対する関心がここ数年で急速に高まっていると感じます。SNSを通じて広がったこともありますが、私たち自身が身近に感じることが多かったからだと思います。

この数年で海洋プラスチック問題への注目が急速に高まり、国際的な条約交渉も加速度的に進んでいます。しかし、脱炭素については国際的な取り決めや提携がまだ進んでいないと感じる人もいます。30年以上も論じられてきた脱炭素と比較すると、プラスチック問題に取り組むための国際的な枠組みがまだ整っていないのは理解できます。

私個人的には、ここ数年でプラスチック問題に対する関心が高まり、多くの動きが生まれてきたことに驚いています。条約化交渉会議も進行しており、日本国内でも法制度が整備され、プラスチック製品の使用についても見直しが進んでいます。競合関係にあった企業がパートナーとして協力するような動きもあり、草の根レベルでも多くの活動が活発に行われています。今後の展開に期待するところです。

新技術開発、新市場、ベンチャー企業などの可能性は?

大いに期待しているところ。 そもそも技術開発に関しては、現代社会が止めることができないもの。ありとあらゆる分野で常に技術は進んでおり、その恩恵があるからこそ、社会経済の発展、新市場、新たなビジネスモデルが出てきている。 誰もそれを止めることはできないし、誰もが恩恵を得ている。一番最近の破壊的開発は、ChartGPTでしょう。でもまだこれはAIが普段の生活に入り込んできた入口にしかすぎないというところ。

技術開発に関して忘れてはいけないことが、技術は諸刃の剣であると言う事。 素材開発の歴史的な大発明の一つがプラスチック。プラスチック素材があるからこそ、私たちの経済社会が動いていると言っても良いでしょう。でもその負の影響の一つが、海洋プラスチック問題。一度水系に流れ込んだプラスチックを回収することは困難。新素材の大発明のプラスチックでもたらされたありとあらゆる新技術開発はこれからも続くと思うが、海洋プラスチック問題もこれからも確実に続いていく事に間違いはない。

この文脈からもブルーオーシャンへの新技術開発に大いに期待しているところ。 でも、これからは、モノやサービスを届けるための技術開発が目的、と言う今までの目的を、カーボンニュートラル社会や持続可能な社会を構築するためのモノやサービスを届けるための技術開発が目的とならなければならない。つまり、現代社会を支えている技術の在り方・技術開発を構造的に変えていく必要がある。

その中でも、プラスチック対策に対するベンチャー企業の可能性は高いと認識する。 いま求められているのはサステナブルな社会を構築するために、そのモノやサービスにストーリーがあるものが必要。例えば、この服はリサイクル素材でできているとか、このサービスで使用されている電気は100%太陽光です、とか。

海洋プラスチック問題を含めたあらゆる環境問題は、その規模が大きすぎて、つまり分母が地球丸ごと一個なので、普段の生活で何をしたらよいかよくわからない方が多いのが現状。でも例えば、今日着ている服はpetボトルリサイクル素材からできている、とか、さっき買ったコーヒー豆は、海外のこの国のこのコーヒー工場が100%オーガニック素材で作成したもの、だとか、さっき食べたランチセットは、この街で作られたもの、だとか、そういうサステナブルなストーリーをモノやサービスに乗せて届けていくのが今後のビジネス展開にとって必要不可欠である。

そうすることで、一般市民の皆さんも、普段の生活から地球規模課題に貢献できている、と言う実感を持てるはず。このような市民の皆さんの求めているニーズに即効的に対応できるのがベンチャー企業の役割である。地域密着型、特定のモノやサービスに特化したベンチャー企業の役割は、今後より重要になっていくでしょう。

と言いつつも、現在の複雑な経済社会を生き抜いていくためには、それなりの体力が必要です。そこで思うのが、世界の金融の流れに大きく影響してきているESG投資の力を借りながら、サステナブルな社会を構築していくためのビジネス展開を推し進めていけないか、と言う事です。 既に多くの事例がありますが、ESG投資として資本的リターンと言うよりかは社会的価値創造のリターンを得るためのESG投資先として、サステナブルなモノやサービスを届けているベンチャー企業である、と言う新たな投資スキームに着目している。もちろんビジネスなので、それを回していくための資金は必要ですが、そのリターンとして社会的価値を創造していく事が、今後の経済社会の主目的にならなければならないでしょう。しかもこのようなスキームを途上国で回していく事で、地球全体としての持続可能性を底上げすることができ、しかも、これからビジネス展開が進む途上国において、最初からそのビジネス展開にサステナブルな軸をど真ん中に入れていく事が、地球全体として見た場合の2050年主要国でのカーボンニュートラル達成、その後、途上国も途上国を卒業し、サステナブルな先進国に育っていく道筋ではないでしょうか?

ブルーオーシャン技術開発の妄想

私が今後注目している現在の事例と、私個人が考える、ある意味妄想している、その今後の発展形についてお話ししたいと思います。

1.プラスチックリサイクルは自宅で?
プラスチックのリサイクルは、PETボトル水平リサイクルを除けば、基本的にダウングレードリサイクルになります。例えば、廃棄物発電や断熱材、農業用製品などになります。これを今後も突き止めることが重要です。しかし、プラスチックリサイクル素材は、いずれは廃棄物になると思われます。
今後の可能性としては、少なくとも容器包装や家庭用プラスチック製品を自宅で溶かして、それを3Dプリンターで必要な容器を作る技術開発の可能性があります。例えば、昨日買ってきたPETボトル飲料容器を使って、今日必要なお弁当容器を作成する、または今日の買い物時に必要な容器を作ることができます。また、自宅で発生したプラごみを3Dプリンターで素材化し、お店に持っていくと、キャッシュレスでモノを交換することができる社会は同でしょうか?

2.海洋プラスチックごみは自動ロボットで回収?
水系に流れ出したプラスチックごみ、特にマイクロプラスチックを含めた海洋プラスチックごみの回収には、基本的に不可能を可能にする技術やシステムが必要です。化学的に言えば、水系に浮遊する不純物を取り除くためにはろ過が必要ですが、地球全体の海をろ過することは不可能です。この場合、家庭用自動掃除機の応用が考えられます。完全自動化、ソーラー発電の何万もの小型マシンが海洋中を動き回り、マイクロプラスチックを回収します。世界各地に小型マシン用の発着ステーションがあり、そこで回収したごみを集めます。この小型化が重要です。宇宙産業を見ると、小型衛星を多数打ち上げて、それらを組み合わせて宇宙開発を進める事例が多数あり、大型機械を大型ロケットで打ち上げるよりもリスクとコストが低くなると認識されています。この最先端の技術開発の傾向を海洋プラスチックごみ対策にも応用できるのではないか、と考えています。

ビジネス化の要素は全くないのですが、ESG投資の先駆けとなり、その投資によって海を守っているという社会的リターンが得られることで、陸上のビジネス展開を進めることができるのではないか、と考えています。

3.人と人のつながりも自然から

現在私は大阪に住んでいますが、都会に住む人たちへの特有のビジネスとして、自然に触れ合うキャンプツアーなどがあります。これは人間と自然をつなげるためのビジネスであり、また重要なブルーオーシャン活動の一環だと思います。問題解決には、政策提言や技術開発などがまず思い浮かびますが、先ほども述べたように、環境問題の本質は、私たち人間が変わらない限り、地球環境を破壊し続けることにあります。自然に包まれた環境で過ごすことで、人間の心に変化をもたらせることができると思います。

農業や漁業、林業を行っている方にとっては当たり前のことかもしれませんが、都会に住んだりデジタル化された経済社会の中で暮らすと、自然を排除し、人工的な街の中で生活することで、人間が生き物であることの基本を忘れがちになります。そのため、現代社会では地球環境問題がどこか他人事で、きっと誰かが解決してくれると考えてしまうことがあります。

このような背景から、自然に包まれた環境で生活をするサポートビジネスが可能です。コロナの影響を受けて仕事のスタイルが変わった現在、二拠点生活や移住生活などが増えていると思われます。IT技術の高度化により、日本の原風景の中で仕事をすることが可能になり、ウェルビーイングの一つとして重要視されています。また、このような自然環境に身を置くことで、人はプラスチックごみをポイ捨てすることはなく、新たなブルーオーシャンビジネス展開が生まれるかもしれません。

おわりに

でも最終的には、Doingによる様々な実施は必要ですが、最終的には私たち一人一人のBeingが変わらない限り海洋プラスチック問題やその他地球環境問題は絶対に解決しません。と言う事は、これも諸刃の剣の話しとつながり、Beingが変われば地球全体がサステナブル、つまり人間の技術開発や社会経済発展の行く先は、1周回って自然と完全に一致して生きていく事になります。私たちの現在地は、まだスタート直後かもしれませんね。

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