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こうしてオールドレンズの価値を紡いでいく。

その独特の写りやアンティークなデザインが魅力のオールドレンズ。現代まで残っているものは世代を超えてカメラマンを魅了するクオリティがあるからでしょう。

私も最近初めてオールドレンズを購入しましたが、その際に犯した初歩的なミスや、ミスを犯したからこそ気づけたオールドレンズに馳せる想いを残したくて記事を書いています。少しでもこれから購入する方の参考に、またオールドレンズをお持ちの方にはもっとたくさん使い倒そうと思っていただけると嬉しく思います。

メルカリで買ったElmar 沈胴 90mm F4

Leica M10-Pとの出会いはメルカリでした。あれだけ高価な買い物をメルカリでするのは怖さもありましたが、信頼できそうな出品者の方が状態の良いものを出品しており、また相場と比べても安価だったことから思い切って購入することに。
そのチャレンジは見事に功を奏し、状態の良いものが手に入り、今ではすっかり相棒として充実したカメラライフを共にしています。そんな成功体験から、オールドレンズに手を出す際もメルカリで探すのは必然でした。

今回欲しかったのはM型ライカ用中望遠のレンズ。50mm, 35mmは持っていて、そうなると次は中望遠が欲しくなるのがレンズ沼というものです。
今回は価格を抑えたかったこともあり、5万円以内で出回っているElmarの沈胴式90mm F4のレンズを探してました。中望遠の常識を覆すコンパクトさ、Leitz社のレンズ史上もっとも精巧にできているとまでいわれるギミック、そしてもちろんLeicaの解像度の高さとアンニュイさを両立した独特な写りを兼ね備えた名レンズです。

探し始めてから手に入れるまでは早く、1カ月も経たないうちにかなり状態が良さそうなものが出品されているのを発見して迷わず購入することに。

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実際に購入したもの。約70年前のものとは思えない。

撮影して分かった、大量の白ずみ・・・

写真の通り、70年近く前に製造されたものとは思えないほど外観が綺麗で、またヘリコイドや沈胴の動作も驚くほどスムーズでした。メルカリの説明文では光学系も薄曇り程度で、撮影への影響は軽微とのことだったため、到着してから胸を躍らせてすぐに撮影に出かけました。
その際に実際に撮影した写真が下記です。想像以上の白ずみに、オールドレンズの「味」だと言い張るには限界があるとすぐに察しました。これは失敗だ、、、。

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オールドレンズをメルカリで購入するリスクを早速体験してしまったことで一気にテンションが下がりましたが、外観や動作系の状態の良さから、光学系の整備さえできればとすぐに整備業者を調べました。

日本レンズ協会様への整備依頼

色々と調べる中で出会った日本レンズ協会様。レンズの整備記録をサイトに公開していたり、自身でのメンテナンス方法を公開していたりと、良いレンズを大切に出来る人が増えるようにという想いを感じ、お願いすることにしました。実際に検査に出した結果は下記にまとまっています。

上記の記事を見ていただいたら分かる通り、外観や動作はとても状態が良い一方で、レンズには一面びっしりとカビが生えている事がわかります。自分でレンズを見たときは、少し曇っているな、くらいの感覚でしたが、まさかここまでとは・・・。
丁寧にお電話で検査結果をご報告いただきつつ、対策としてはカビの除去や防カビ剤の塗布によって大幅に改善しますととても心強いコメントをいただいたため、整備をお願いしました(整備費用は15,000円)。

結果として、ただ手に入れるよりも愛着が湧く、またオールドレンズへ想いを馳せる良い機会に。

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整備後の作例1

今思えば、外観や動作系の異様なまでの状態の良さは、ほとんど使われずにここまで来たことの裏返しでもあります。日本レンズ協会の方が言っていましたが、レンズは使ってあげないとレンズ内の空気が循環せず、また暗いところに放置をして光を通さないとカビが発生しやすい環境になってしまうそうです。このレンズも、おそらくこれまであまり使われずに保存されてきたということでしょう。

オールドレンズの使い古された外観は、これまでの所有者が積み重ねてきたレンズの利用の足跡でもあり、そう思うとただ外観がきれいなことが良いことなのか?とすら思えてきます。
レンズ協会の方には、「ぜひレンズを定期的に使ってあげてください」とアドバイスをいただきました。しきりにレンズのことを大事に思っていることが伝わる表現を使う素敵な方でした。

整備後の作例2

Leitz社の純正レンズはとても堅牢にできており、今後数十年に渡り使い続けていけるものです。もちろん今は手放すことを考えてはいませんが、いつか次の方に譲るときに備えて、徹底的に使い倒してその価値を今後も最大限発揮できるようにレンズを育てていきたいと思います。

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