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始まりの季節に

壁に掛かっているカレンダーを見て
今日から4月か、と独り言のように呟く。
そして新たなメニューを考えていると
スタスタとボスが近寄ってきた。

キリリとした目で外を見るのかと思いきや、私の手の甲に頭を押し付ける。

珍しいね、ボス。
私は小さな額をこちょこちょしたり背中をゴシゴシと撫でていると、ボスの前足が
くるりと腕にしがみつく。
そして瞬時に甘噛みしたかと思うと、
後ろ足で私の腕をキックした。

その目は少し興奮していて、いつものボスではなかった。

もちろんボスは大きな雄猫。
その巻き付いた前足も後ろ足もしっかりとした爪が伸びているし、興奮しているせいかその爪は鋭い。

痛い!
思わず腕を引っ込めようとするとボスは身を翻していつも通り凛と座り、我に返ったような目でじっとこちらを見た。
その眼差しは少し心配しているようにも見受けられる。

腕には綺麗な傷が出来ていた。
私は改めてボスの額をゆっくりと撫でる。ボスのいつもと違う顔、それを見れたことに嬉しさを覚えた。
家主ではなく、友達に昇格させて貰えたのだろうか。


ボスを見ていると、キャラに似合わない
表情や行動をしている時に
グッと人との距離が縮まる。
そして今日の場合だと、近づきすぎて
痛みが伴う結果となったがその分、
仲良くなれた気持ちもする。

人と人との関係では、わざわざ傷付け合うことは無いとは思うが
傷つかない様に身を守ってしまうと
距離が縮まらないこともある。
逆に身を守っているように見えても
ドジや失敗をした時にその人に親近感が湧くことも多い。


なんて、ガスマスクの私が表情云々の話を頭に浮かべるとは、、


4月は始まりの季節。
最初はちゃんとした私、社会の中で求められる自分に縛られることが多いと思う。

そんな時にふっと自分の表情がこぼれる
そんなメニューを作りたいが、、

レシピを書き出す手が止まる。


ボスはカウンターを飛び降りて、
眩しい日差しの中へ消えていった。


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*タバコ屋不思議本日開店 (2019年2月7日〜) *日記やエッセーみたいなもの。日々、感じたこと、思ったこと、小さな出来事を書きたいと思います♪

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