夏の空に向けて

梅雨が明けて、本格的な夏がやってきた。

響く蝉の声、うだるような蒸し暑さに照りつける太陽。
少し歩いただけで、じっとりまとわりつくような汗を掻く。

このままでは熱中症にでもなるかもしれないと思い喫茶店へと入った。

中はアンティーク調の家具で揃えられていて、カラフルな外国のタバコがマスターの背後をポップに彩っている。

照明がほんのりと灯る店内は、夏の暑さとは無縁の異空間だった。

そこに大きな猫が一匹、じっと私を見つめていた。
私は親指と人差し指でスリスリと音を出して大きな猫に合図をし、外が見える席へと向かった。

あー心地よい。
が、まだ汗は止まらない。
ハンカチで首や顔を拭いて、
鞄を椅子に置き注文をする。

アイスコーヒーと、、
“アイスクリン始めました”
の文字。
アイスクリン、懐かしい響きがした。
子どもの頃夏になるとアイスを売りにくるおばあちゃんがいた。
自転車だったか、、で売りにきていて
のぼりにはアイスクリンの文字。
今のアイスクリームとは違って、氷のような食感もあり、たまごの香りがほんのりと香るアイスクリンが幼い私の夏の味だった。

アイスクリン、お願いします。

お金を払い席で待つ。
汗は少しずつ引いていて、
体がふーっと席に沈む。

席から見上げる夏の空は、
少し落ち着いた夏空に見えたが、
やっぱり雲一つない空だった。

大人になるにつれて夏は、夏休みの思い出よりも通勤の暑さが勝る。
だけど、花火やお祭り、イベント事は
沢山。
そして仕事終わりのビールの旨さ。
総体的にみて大人になるほど夏は爽やかであるような気がしている。

「さぁ、どうぞ。」

そう、これこれ!
ほんのり黄色みを帯びていてバニラアイスのような滑らかな感じではなく、少し氷混ざりのザラリと見える表面が懐かしい。

一口食べて、アイスコーヒーを飲む。
あの頃よりも少し大人の味わいを感じながら、また夏の空を見上げる。

夏休みかぁ。。
夏休み。小学生の頃それは、特別で最高のワクワクだった。
学校に行かなくてもいい、
それが1ヶ月とちょっと理由もなく叶えられるのだ。

ただ、日を追うごとに学校生活という日常は近づく。
あれは家族で花火を見に行こうと夕方出かける準備をしていた時だった。
ワクワクした気持ちで着替えをしている最中に、ふっと赤いランドセルが目に入る。
勉強机の横にひっそりと置かれたランドセルを見て、またそのうち行かなきゃ行けないのか、、

体がずんと重くなった。

ようやく羽を広げきって過ごすことが出来たのに、また何度も何度も羽を折りたたんで自分をぐっと小さくして学校という社会に出なければ行けないのか。

その後の花火大会は楽しさよりも、幼いながらに花火の儚さを感じていた気がする。


そんなこともあったなぁ。


アイスクリンを食べながら、伏し目がちに微笑んだ。
大人になった今でも、閉塞感や憂鬱とした気持ちが付きまとうことは必ずある。

だけど、世間には案外素敵なことが沢山あることも知ることができた。


大人になるって素敵だよ。

私は幼かったあの頃の私に乾杯をした。


店を出て、真っ青な空を見上げる。
響く蝉の声にうだるような蒸し暑さ
今夜もきっとビールが美味しい。

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嬉しい限りです🌸
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いらっしゃいませ♪

*タバコ屋不思議本日開店 (2019年2月7日〜) *日記やエッセーみたいなもの。日々、感じたこと、思ったこと、小さな出来事を書きたいと思います♪

タバコ屋不思議

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