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財金委:関税定率法等改正案 質疑(野田佳彦2019/03/12)

関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(衆議院本会議)

消費税増税・景気判断

○野田佳彦委員 まず消費税と景気の関係で大臣にお尋ねをしたいが、社会保障と税の一体改革を推進する際に、党内でさまざまな議論があった。その中で争点になったのが、景気条項にかかわるところだった。「名目とか実質の成長率の数値を入れたほうがいい」「定性的に表現したほうがいい」など意見がありながらも、いろいろ意見調整をやったが、どなたにも共通しているのは、「やはり景気が悪いときは消費税を上げることはでいきないだろう。中止したり先送りしなければいけないだろう」という問題意識があった。
 ところが安倍政権においては、この景気条項を撤廃した。退路を断ち切って消費税の引き上げをやっていこうという姿勢なのか、これはよくわからないが。とすると、消費税と景気の関係について、どういう基本的な見解を持っているのか。リーマンショックみたいな大きな激震が走ったら上げられないということは再三いろいろなところで答弁があったり議論があるが、一般論として、景気後退局面なのか景気拡大期間なのかは一つの大きな分岐点のだ。大臣の基本的なご認識を伺いたい。
○麻生太郎財務大臣 消費税に限らず税金は何でも、景気拡大傾向にあるときのほうが増税は受け入れられやすい。増税になった場合は必ず何らかの反応が出るので、それに対して減税をこちらでするとか、いろいろな形で経済への影響に対応して経済運営に万全を期すのが常識だと思っている。
 我々がもう一つ考えなければいけないのは、日本は少子高齢化の面からいくと世界190カ国のトップを走っている状況にあり、社会保障費が間違いなくふえていく中にあって、少子高齢化という国難をきちんと回復するためには、安定財源を持っておかない限り時代の大変化に耐えていけない。消費税率2%引き上げは安定財源確保のために行うことだ。
 我々の置かれている状況は、今の景気が極めて好景気と言うつもりはないが、いろいろな数表を見ても史上空前の利益を出しているという状況にはあり、そういった点も十分に考えて、今回の状況は景気後退局面の中で行っているつもりはない。
○野田佳彦委員 今、大事な局面になりつつある気がしてならない。景気後退局面、要は日本経済が風邪をひきつつあるときに冷たい水を浴びてしまったら、肺炎になりかねない。そういうことにならないように注意深く判断しなければいけない。
 その上で、景気動向指数が3カ月連続で悪化し、基調判断を引き下げるという状況になった。これについては諸説あり、さまざまな機関が分析をしているところだが、「景気後退局面に入っているかもしれないな」という予感を持つことも否定できない。足元の経済についての大臣のご認識を問いたい。
○麻生太郎財務大臣 基調判断は3カ月間のいろいろな推移を見て、数字が出れば機械的に当てはめるルールになっている。下方への局面変化とされているのは、機械的に当てはめるとそういうことになる。
 景気動向指数は、毎月の生産や雇用などの経済指標を統合したものだが、1月を見ると、中国の春節の時期がいつもより早く始まっていたので中国向け輸出が手控えられたとか、日本の正月休みがことしは9日間と長かったとか、自動車メーカーの部品の不都合によって生産がとまったとか、いろいろなものがあった。そういった点も考えて景気動向指数を見なければならないと思っている。
 一方、政府としての景気判断は、いろいろな判断指数がある中で、月例経済報告を基調に判断することとしている。現段階での月例経済報告の基調判断は「緩やかに回復している」との認識を示しているので、下降局面に入ったという一面を決して否定するわけではないが、全体として下降局面に入ったと考えているわけではない。
○野田佳彦委員 やはり2017年4月あたりは世界経済全体が回復・拡大期間だった。あのとき、最大の好機を逃した気がしている。所得税の質疑のとき、「過去2回の先送りは痛恨の極みだったのではないか。この問題意識を共有できますか」と大臣にお尋ねしたところ、さすがに老練な答弁で、「それを言ったら閣内不一致になってしまう」というご答弁をいただいた。重ねて聞かないが、やはり先般の先送りは痛恨の極みになりかねない。そういう危惧を持っているということを申し上げたい。

税関の体制整備 金密輸対策/テロ対策等

○野田佳彦委員 関税の関係の質問に移るが、金地金の密輸の関係で伺いたい。
 昨年4月10日に罰則が強化された背景としては、平成29年、金地金の密輸件数が過去最高で1347件、押収量が6277キログラム。そういうことを踏まえての去年の法改正だったと思う。
 平成30年は、1347件から1088件へと20%減、押収量が6277キロから2110キロと約65%減。法改正が効果があったのか、ほかの違う理由なのか。その抑止効果についてどう考えているか。関税局長に伺いたい。
○中江元哉財務省関税局長 29年と30年の数字を挙げていただいたが、もう一つ、30年改正で罰則を強化した前後の数字を見ると、罰則強化前の3カ月間、30年1月から3月の押収量を見ると約1トン。罰則強化後の9カ月間、4月から12月でも約1トン。関税法改正を境に、押収量は月平均で約3分の1程度になっている。このように数字の上では押収量が減少しており、金密輸取り締まりの取り組みが一定の効果を発揮しているのではないかと考えている。
 貿易量全体からした輸出量超過分についても減少していることも相まって今のような分析をしているが、まだまだ税関摘発分の金の密輸は残念ながら氷山の一角と考えざるを得ない状況であり、財務省・税関としては今後とも関係省庁と連携して総合的な対策を講じていく必要があると考えている。
○野田佳彦委員 税関では不正薬物対策などやることがいっぱいあると思うが、ことし一番注意しなければいけないのはテロ対策ではないか。来年の東京オリンピック・パラリンピック対応も注目されているが、むしろことしのほうが大変ではないか。
 一つは、G20サミットが大阪で6月28・29と開催されるが、その前後に関係閣僚会議がある。財務大臣・中央銀行総裁会議など、サミットの前後に閣僚ごとに10カ所ぐらい、全国各地で開催される。時期も、5月・6月もあり、8月・9月・10月と秋口にかけてもある。期間的にも、あるいは全国各地で行われるという意味においても、要注意だと思う。
 TICAD7(第7回アフリカ開発会議)もあり、横浜で8月28から30日、アフリカ諸国が50カ国くらい参加する。これも大事な会議だ。
 ラグビーのワールドカップもある。9月20日から11月2日まで、12会場、北海道から九州まで本当に幅広い。出場国20カ国、全40試合。これも注目をされる。
 忘れてはいけないが、国際的なイベントというのはどこかから引っ張ってくるものだけではなく、まさに日本の主催の大事なものがある。即位礼正殿の儀、これは国の内外に新天皇即位を宣明する儀式だ。これは各国首脳や国家元首、多くの人が10月に集まる。前回のときには2千数百名の方がご招待で来ていると思うが、そういう規模で行われる。
 大変重要な行事がめじろ押しで、税関においてもテロ対策、水際での役割は大変比重が大きくなると思うが、こういう各種対応が万全で準備されているのかどうかお尋ねしたい。
○中江元哉財務省関税局長 ご紹介いただいたように、我が国では本年、G20大阪サミット・関係閣僚会合、ラグビーワールドカップ、さらには皇太子殿下のご即位に際して即位礼正殿の儀などの儀式も予定されている。これらの機会を狙ったテロの脅威に対応するため、テロ対策の強化を図っていくことは政府全体の喫緊の課題だ。
 このような情勢を踏まえ、税関ではテロ対策等に必要な人員の確保、高性能X線検査装置等の取締検査機器の配備、事前情報を活用した積荷・旅客等のリスク分析、国内外の関係機関等との積極的な情報交換等を実施している。こうした取り組みにより、G20を含む重要な国際的行事における水際でのテロ対策に万全を期してまいる所存だ。
 もう既に3月であり、来月から新年度、段階的に準備をさらに加速させてテロ対策に万全を期していきたい。
○野田佳彦委員 薬物への対応、密輸への対応、そしてテロへの対応と、水際での対応だけでも極めて複雑なさまざまな業務量があると思うし、加えて大事なことは、訪日のお客さんもどんどんふえてきており、スムースな出入国という意味でも税関の役割は大変重要になってきていると思うが、税関業務が増大し複雑化する中で、人員確保や取り締まり機器等の整備など執行体制をより一層充実強化すべきだと思うが、この点についてのお考えを伺いたい。
○中江元哉財務省関税局長 税関業務を取り巻く環境については、今ご指摘いただいた訪日外国人旅行者数の急増に加え、本日ご議論いただいている金地金の密輸への対応、覚醒剤などの不正薬物押収量の増加、国際的なテロの脅威等、非常に厳しい状況にあると認識している。
 こういう状況の中で、税関では空・海において迅速な通関と厳格な水際取り締まりの両立を実現する必要があり、取り締まり検査機器の活用を図りながら、所要の人員を確保する必要がある。
 税関の定員については、31年度予算案においても30年度と同数の209人の純増を計上している。
 取締検査機器においても、現行の配備機の更新のほか、X線検査装置、あるいは不正薬物・爆発物探知装置、門型の金属探知器等の検査機器を追加配備することとしている。
 今後とも業務運営の一層の効率化を図りつつ、さらなる定員増も含め、必要な税関の体制整備に最大限努めてまいりたい。

G20議長国としての立ち位置

○野田佳彦委員 G20において、さまざまな議題があると思うが、主要議題として、経常収支の不均衡の問題が大きなテーマになるのだろうと思う。
 私もG20に出ていた頃にこのテーマを盛んにアメリカが持ちかけてきた。「一定の枠を決めたらどうか」とかいろいろ言われたが、これは政府セクターだけでどうなるものでもなく、民間セクターのいろいろな動きがあって出てくる数字だから、そんなことできないと、どちらかというと否定的に跳ね返すような立場で私は議論に参加してきた。
 これは2国間でどうなる問題でもなく、国内の投資と貯蓄の構造の問題もある。特にアメリカなどに反省してほしいのは、貯蓄不足があることを度外視して、貿易の不均衡、非関税障壁があるということを言いたいがためにこれを言ってくる。
 事実上1対19ぐらいになっており、自由貿易は大体みんな支持するのに、今、アメリカだけちょっと違う動きになっている。その中で、議長国としてどういう立ち位置をとるか。日本は日本の国益の立場があり、たぶん私が申し上げたようなことが日本の主張だと思うが、どういう立ち位置でこのG20に議長国として臨もうとされているか伺いたい。
○麻生太郎財務大臣 経常収支の不均衡の是正は、世界経済が持続可能な成長を維持していく観点から極めて重要な問題であることははっきしており、G20で議論するにふさわしい課題として議事次第に上げている。
 議論に当たって、おっしゃるように経常収支の不均衡は2国間の貿易問題ではなく多国間のマクロ経済のバランスの問題であるということを改めて確認をしてもらわないといけない。2国間で解決する話ではないと、そういったことを申し上げればいけないと思っている。
 具体的には、マクロ経済のさまざまな問題は貯蓄や投資などのバランスにどのように影響を及ぼしていくかということに着目して議論してもらわないといけないと思っている。例えば高齢化が経常収支に与える影響についてどう考えているかという点も考えていただかないといけないと思っている。
 2番目に、経常収支を理解するためには、アメリカの場合は貿易収支にこだわっているが、貿易収支だけではなく所得収支とかサービス収支などいろいろなものがあるので、こういったものに着目していくことが重要だと確認したい。日本の場合、海外子会社からの配当等による所得収支が貿易収支よりはるかに黒字としては大きな幅になっている。経常収支の大部分はまさに所得収支が占めているのが日本の状況であり、多角的な視点の重要性は明らかだと思っている。
 また、米中2国間における貿易収支に偏った貿易紛争が、世界経済の大きな危険要素、リスクになってきていると思うが、G20では多国間の問題として経常収支の不均衡を取り上げる意義は大きいと思っている。2国間だけで話すと妙に偏ってエキセントリックになったり、きょうまた少し変わってきたりと、日に日に変わるのでたびたびコメントするのは差し控えるが、大国の2国間だけで話して妙なことになると波及効果が他国にも出るので、議長国としてリードするという意味においては、両方にきちんとした貿易関係・経済関係を持っている日本としての立場は極めて大きいと思うので、十分にバランスをとった議論をリードしてまいりたい。

(以上)

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