データサイエンティストが1年でUXデザインスキルを身につけるために読んだ本


産技大人間中心デザインOB/OG Advent Calendar 2018 - Adventar 」22日目の記事です。

タイトルの通り私は元々はデータサイエンティストとしてレコメンドシステムのR&Dやサイト改善のための分析をしていたのですが、数年前から徐々に既存のユーザ体験の枠の中でデータ分析や機械学習が適用できる場所を探すやり方ではサービスの大幅な改善には繋がらない、本気でデータをサービス改善に活かすのであればユーザ体験そのものを設計からやらなくてはいけないと考えるようになり、昨年から本格的にUXの勉強を始め、およそ1年間でUXデザイン業務をこなせるようになりました。

他のデータサイエンティストの方々で同じような意識を持たれている方が最近少しずつ増えているなと感じています。私が勉強を始めたときは周りにUXデザインに詳しい人もいなかったこともあり、出版されている本は片っ端から購入して読んでいたので、これから勉強を始める方や今勉強中の方々に向けて、読んで良かった本を紹介したいなと思います。

書籍名の横の☆の数はおすすめ度で☆3つが最高点で以下の基準で採点しています。

☆☆☆…必読。何度も繰り返し読んだ本
☆☆…有用だった本
☆…興味があるならおすすめの本

UXデザイン全般

UXデザインの全体像を抑えるために読んだ本です。ペルソナやシナリオ設計などの各論の手法を勉強する前にまずはデザインプロスを理解しておくと学習効率が良くなるので最初はこのリストに載っている本を読むのがおすすめです。

UXデザインのやさしい教本 ☆☆
UXデザインとは何か?の解説からはじまり、デザインプロセスと各フェーズでやるべきことが解説されています。予備知識ゼロでも読めて、分量も少なく通読しやく、この本を読んだあとにどのように勉強すればよいかのガイドももあるるので最初の一冊としておすすめです。

Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで ☆
ユーザテストやペルソナ構築などUXデザインでよく使われる手法が色々紹介されています。ただし一つ一つの章のボリュームが少なく、またデザインプロセス全体の中での手法の位置づけの説明があまりないので、この本を読んでそまま実務に使うのは難しいです。より専門的な書籍を読んでいく上の入門として典型的な手法の概要を理解する目的で読むのが良いかと思います。

UXデザイン入門 ☆☆☆
人間中心設計でのUX デザインを一連の流れを解説している本です。 「UXデザインのやさしい教本」よりも実践的で実用にも使える本です。ボリュームもそこまで多くは無いので早い段階で2冊目くらいでこの本を読んでおくとUXデザインの全体像とプロセスを掴むことができます。おすすめの一冊です。

UXデザインの教科書 ☆☆☆
UXデザインの歴史的背景から始まり、設計プロセスから分析手法まで体系的な解説がなされているThe教科書です。 最初の一冊としてはかなり重いので他の本でUXデザインの全体像を掴んでから腰を据えて読むことをおすすめします。個人的にはU Xデザインを体系的に理解したいならこの本を読むのは必須だと思っています。AIITのHCDコースを取ると著者である安藤先生から本をベースとした講義を受けることができます。この本も各論(ユーザ調査や価値分析法など)については概要解説程度に留まっているため、実務の際は別途専門書を読む必要があります。

UXリサーチの道具箱 ☆☆
今年でたばかりの本です。ユーザインタビューからペルソナの作り方までUXデザインにおけるリサーチフェーズの方法について書かれています。必要最低限のことをコンパクトかつわかりやすく解説しています。これ一冊で実務は難しいですが、各章末により深く学ぶための書籍の紹介がなされているのでこの本を起点にして勉強していくのも良いかと思います。

誰のためのデザイン ☆☆☆
言わずとしれた名著です。改訂版では人間中心設計の章が追加されています。かなり分厚いので通読するは大変ですが、デザインするとはどういうことか?を理解するために一度は読んでおきたい本です。

Hooked ハマるしかけ 使われつづけるサービスを生み出す[心理学]× [デザイン]の新ルール ☆☆☆
この本ではUXデザインと言う言葉は出てきませんが、内容は実質的にUXデザインです。ユーザがハマる「仕掛け=UX」をつくるため方法が丁寧に解説されています。WEBサービスの設計に関わる人なら一度は読んでおきたい保のです。

LeanUX ☆☆
リーン方式によるサービスの継続的改善の方法論が解説されています。少し特殊なのである程度他のUXデザインの本を読んで、HCDのプロセスを理解してから読むのほうが勉強になると思います。私個人としてはプラグマティックペルソナの作り方などがとても参考になりました。

サービスデザイン

UXデザインとサービスデザインの違いを理解するために読んだ本です。ややイノベーションよりの新規事業向けの内容が多いです。学習における優先順位は低いので興味がわかなければ飛ばしてしまっても良いかもしれません。


機会発見 ― 生活者起点で市場をつくる ☆☆ 
デザイン思考の考え方とサービス設計の方法が書かれています。具体的な方法についての解像度があまり高くないのでこれ一冊で実務適用するのは難しいですが概念を知るのには良いです。人間中心設計によるUXデザインとの対比しながら読むと色々発見があります。

ジョブ理論 イノベーションを予測 可能にする消費のメカニズム ☆
ユーザが片付けるべき「ジョブ」に注目してイノベーションを起こす方法を解説した本です。UXデザインとの観点の違いを対比することで様々な学びがあります。

リーン顧客開発 ☆
人間中心設計によるUXデザインはユーザの観察からスタートするため一連のプロセスを回すためにどうしても時間がかかります。スタートアップなどで既に新規事業のアイディアが既にある場合に有効な手法が書いてあります。


ユーザ調査

人間中心設計におるUXデザインの「利用状況の把握と明示」フェーズおいてユーザのことを知るための調査方法を学ぶために読んだ本です。ここは本を読んだだけだと難しいのでどちらかというと実践重視で1年間でトータルで40人くらいにデプスインタビューをするなかで学びました。

マーケティング/商品企画のための ユーザーインタビューの教科書 ☆☆☆
インタビューの準備から当日の運営方法まで実務でインタビューを行う上で必要になることを一通り解説してくれている本です。インタビュー調査がはじめての人はまずこの本を読むことをおすすめします。全体を網羅している分インタビューの詳細についての解説はやや薄いので他の本で補うことをおすすめします。

お客さまの“生の声”を聞くインタビ ュー調査のすすめ方 ☆
インタビュー調査で具体的にどのようにユーザに聞けばいいかを解説してくれてる本です。

ペルソナ設計

ユーザインタビューのデータからペルソナをつくるための技法を勉強したときに読んだ本です。ペルソナの作り方は色々あるのでプロジェクトの目的や期間に応じて色々なパターンの作り方を知っていると実務上便利だと思います。


実践ペルソナ・マーケティング 製 品・サービス開発の新しい常識
☆☆☆
丸々一冊ペルソナについて書かれている本です。ペルソナの作り方だけでなく、ペルソナの活用方法について詳細かつ丁寧に書かれています。インタビューとアンケートを組合せた分析フローにも言及してあり、

About Face 3 インタラクションデザインの極意 ☆
ペルソナの提唱者であるアラン・クーパーが書いた本です。正しいペルソナ法が解説さいるので一度は読んでおきたい本です。かなり昔の本なので事例が古いのですが、原著では最近の事例が載っている改訂版がでているので洋書が読める方は原著を読むことをおすすめします。


コンセプト設計

アイディエーションの方法やアイディアをコンセプトにまとめていく方法として最終的に自分の中で使えるなと思った2冊を紹介します。

エクスペリエンス・ビジョン: ユー ザーを見つめてうれしい体験を企 画するビジョン提案型デザイン手法 ☆☆☆
アイディアとユーザ体験をつなげるための方法が書いてあります。価値シナリオ、行動シナリオ、操作シナリオを分離して書くことで、ユーザに提供する価値とそれを実現するUX、UIを明示的に分類できます。慣れてくるとこのフレームを使わなくても頭の中で分解できるようになりますが、最初はこの本に従って訓練するのが良いと思います。注意点として本に出てくる事例がお遊びレベルなのでエッセンスだけ吸収するようにしましょう。

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法
☆☆
Googleが提唱しているデザインスプリトの解説本です。5日間でプロダクトの設計から検証までを行うフレームワークです。アイディエーションや意思決定の方法がとても参考になります。


ユーザ評価

作ったコンセプトが本当にユーザに受け入れられるかを評価するためのコンセプトテストやユーザビリティテストについての本です。

ユーザビリティエンジニアリング( 第2版)―ユーザエクスペリエンス のための調査、設計、評価手法 ☆☆

 コンセプトを評価するための方法は既に上げた「UXデザインの教科書」や「UXデザイン入門」などでも学べますが、この本はテスト計画についての言及もあるためおすすめです。


その他

プロダクトの戦略レイヤーに関わる仕事をする場合、一段視座を上げてプロダクトのブランド戦略まで検討することが多いと思います。ブランド戦略とユーザ体験の関係がわかりやすく解説されている本を紹介します。


デジタル時代の基礎知識『ブランディング』 「顧客体験」で差がつ く時代の新しいルール ☆☆☆

ブランディング、マーケティング とUXデザインの関係が頭の中で整理されます。とてもおすすめの一冊です。

プラットフォーム ブランディング ☆☆☆
同上


以上、知識ゼロからスタートしてUXデザインの仕事ができるようになるまでに独学で学んだ本の紹介でした。

定性・定量を組合せた多面的アプローチでユーザの分析を行い、データドリブンでサービスのグロース戦略から機械学習によるインタラクションデザインまでできるデータサイエンティストは強いと思いますので興味ある方は一緒にやっていきましょう。