アメリカのエンジニアは凄い!

「アメリカの開発者は凄い」「最低限CSの学位を持っているから、コンピュータ・サイエンスに精通している」といった話を良く聞きます。

だいたい、「日本の開発者はレベルが低い」という話とセットです。

米国の開発者採用を2年ほどやっていた経験から、色々書きます。

チラ裏です。

日本に来ている方はフィルターされている

日本に来ている米国人開発者は、米国在住の平均的な開発者より、ずいぶん知的で理性的に見えます。

米国には開発者の安定した雇用があり、日本という奇妙な国で働こうとすることは一般的ではありません。

日本で見る米国人開発者は「国際的な企業で活躍する優れた人材」や、「経済的にも知的好奇心にも恵まれた人材」や、「僻地のカンファレンスにも足を伸ばす生粋のハッカー」など、何らかの一般的ではない特性を持っています。

渡米した日本人が見る景色もフィルターされている

また、渡米して開発者や研究者として働くような方が知り合う方も同様にフィルターされています。

SESで口に糊するような人は渡米などしませんので、渡米する日本人のレベル自体がある程度高く、その方の落ち着く職場環境も推して知ることが出来ます。

結果「米国人開発者は総じて凄い!!」となってしまったのかな?と考えています。

CSの学位は必須ではない

「CSの学位がなければ開発者として就職できない」というのは嘘です。

もちろん、企業によってはそのような定めをする所もあり、大手企業ほどその率は高いです。

ただ、米国人技術者が皆MicrosoftやAmazonで働いている訳ではありません。

とりあえずHTMLとCSSが書ければ潜り込める職場は結構あります。

「コミュニティカレッジ」や「プログラミングスクール」で学び、LLのウェブアプリケーションが作れるようになった程度でも年俸40,000ドル〜の仕事が見つけられます。(続くか否かは別問題ですが)

安心してください。皆がそんな高給取りではありません。

日本と同様のブラック企業も存在します。インターンとして採用し、のらりくらりと給与も払わず辞めさせず、延々働かせ続ける所(会社ですら無いケースもある)や、移民相手に非人道的な振る舞いをする所もあります。

そういう所は、統計データには載ってきません。

CSの学位を持っていても魔法使いではない

アメリカの大学は中退率が日本に比べて高いため、非常に厳しいと言われています。

確かに、日本人には英語は厳しいので留学生にとって厳しいのは間違いないのですが、英語を母国語としていて、中高のカリキュラムを抑えていれば、サボらなければ卒業出来るレベルになっています。救済的なコースを備えている大学もあります。

中退について、日本では大学入試で落ちてしまうような、中学レベルのテストも出来ない人が大学に入れてしまうので、どうにもついて行けず退学……というケースと、他大へ移るケースとが多くの割合を占めています。

中退率の高さは必ずしも教育レベルの高さを示していません。(レベルの高い大学はむしろ中退率が低くなっています)

ちょっと話がズレました。何が言いたいかといいますと、CSの学位を持っているからと言って、彼らは日本人より賢い魔法使いではありません。

皆が統計データに基づいて高可用性を担保した設計が出来るわけでもなく、謎の数学モデルを持ち出して高度な仮説検証が出来るわけでもなく、ハンダ一本でイケてるデバイスを作れるわけではないということです。

いや、もっと卑近な例で、ソートを自前で実装できないことも、バージョン管理ツールを触ったことがないことも、データベースの正規化を知らないことも、特におかしいことではありません。

ありもしない理想と比べて卑下することは無意味

米国人開発者は日本人開発者同様、レベルの高い人も低い人もいます。
もちろん、「エラーメッセージの英語が読めない」ということは無いでしょうけれども。

有りもしない理想と比べて自分や自分のチーム、自分の置かれている環境を卑下することに意味はありません。

謙遜は美徳かも知れませんが、卑下は萎縮を呼び、萎縮は将来の可能性を狭めます。

呪い

私は、「米国人開発者は凄い」が、自己卑下に留まらず蔓延する「呪い」になりつつあると感じています。

呪い 神仏その他神秘的なものの威力を借りて、災いを取り除いたり起こしたりしようとする術。

「ある国では、開発者が皆CS学位を持ち、情報工学に造詣が深い」これは有りもしない虚像です。

その虚像を引き合いにして「だから日本人開発者は微妙」「日本でイキってもダサい」というような価値観を他者に押し付ける行為は、呪いに他なりません。

また、ある種の負け犬は国内の成功者に対して、この言葉でもって泥を塗ろうとすることもあります。

有りもしない理想とそれ以外に境界線を引いて、すべてを自分と同じ負け犬にカテゴライズする論法で、これもまた呪いと言えます。

呪いを解こう

あなたが今まで積み重ねてきた時間と情熱を振り返ってみてください。

それが並々ならぬものであるならば、それは価値のあるものになっているはずです。(よね?)

あなたが今まで時間も情熱もかけずに過ごしてきたのであれば、別の環境に居たとしても、大した事は出来ていなかったはずです。

自分の歩んできた足跡を見つめれば、虚像は砕け、呪いを解くことが出来ます。


蛇足

「フランス人はオタク」というのも、あなたが目にしているフランス人情報には一定のフィルターが(略

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