分類技能検定2級植物部門合格のための方策(1)

こんばんは。
今日は分類技能検定2級植物部門の合格発表の日でした。
無事75点で合格しておりましたので、今後受検される方にむけて試験対策の一例をご紹介いたします。

・はじめに
分類技能検定2級植物部門 (以下分類検定) は他の部門と異なり植物のみから出題されますから、たとえば哺乳類は得意だけれど鳥類はまったく知らないだとか、ムカデは好きだけれど蝶は知らないだとか、そういうことが起こりにくい点で受検者にとってやり易い試験ではあると思います。
植物好きの中でも「シダはちょっと」だとか、「コケは分からない」という方は少なくないわけですが、分類検定ではシダやコケからの出題は1,2問ですし、写真問題で問われたことはありません。以下に2017年から2022年までの過去問を大雑把に類型化して紹介しています。問われる論点を確認し、押さえるべきところを押さえれば、極端に言えば一度もフィールドに出ていない人でも受かる試験です。初見では解きようがないであろう問題は「捨て問」としていますが、当然ながら次に出題されれば必ず解けるようにすべきです。この検定では、数年に一度のペースですが完全な使いまわしの問題もあります。

・参考書
改訂新版 『日本の野生植物』1~5巻(平凡社)
専門問題対策において、いろいろな参考書がおすすめされていますが、正直この図鑑があれば大丈夫です。この図鑑で対応できない問題は参考になるWebサイトがきちんとあるので、合格するためだけならわざわざ本を揃える必要はありません。生物の一般問題はすべての問題においてWebに転がっている知識で十分です。

・投稿者の前提知識
2018年度について、初見の状態で63点でした。以後どの年度でもだいたい60点台でしたが、2021年度は50点台に落ち込みました。60点台の方が安定して70点台に持っていく上で本記事は参考になるかもしれません。アベレージ50点台の方は、自身の苦手としている問題の類型はどこか、ぜひ洗い出しを行ってください。40点台の方は基礎知識が不足している可能性があります。なぜ2級を取得したいのか、その動機を今一度見つめなおしてみてください。

■第一回目の本記事では、大問1たる「生物の一般問題」(100点中20点分の大問) を扱います。

【全般】

得点源論点・・・出題回数が多かったり、問われ方が単純であったりして対策が容易な論点
●分類学史・歴史的偉人問題 (2018)  (2019) (2020) (2021) (2022)
→分類学におけるキーパーソンの功績を問う問題です。頻出のため押さえておきたい問題です。
ウェゲナー→大陸移動説
ダーウィン→進化論、性選択説
メンデル→遺伝の法則
キュヴィエ→天変地異説
ラマルク→要不要説
リンネ→「動物界」「植物界」「鉱物界」、二名法
マーグリス→細胞内共生説
ウォーレス→地理的隔離
木村資生→中立進化説
ヘッケル→気候区分

●分類階級問題 (2017) (2019) (2020)
→界・門・綱・目・科・属・種といった分類学上の分類階級の序列を問う問題です。特に族や節がどこにあたるのかなど、丁寧な学習が求められます。一旦覚えればおしまいの論点であり、出題回数も多いため是非押さえておきたい問題です。
https://www.kochi-u.ac.jp/w3museum/Fish_Labo/Member/Endoh/animal_taxonomy/termonology02.html

●学名問題 (2018) (2020) (2021) (2022)
→二名法や var.や f. といった記号の意味するところが理解出来れば十分です。以下のリンクのような細かい内容まで押さえる必要はまったくありません。分類階級問題と関連していますが、植物の分類では種という単位の下にさらに亜種や品種があることを覚えておきましょう。また、命名者や学名の変更時の表記について問われたこともあります。
https://hosho.ees.hokudai.ac.jp/tsuyu/top/dct/nomen-j.html

●タイプ標本問題 (2017)
→シンタイプやネオタイプなどの語句の定義を問う問題です。
https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/chii_type/p-2-1.html

●地質年代問題 (2018) (2019) (2020) (2021) (2022)
→頻出ですから必ず押さえておきましょう。単純に古い順での順序を問う問題や、それぞれの時代での主要なイベントが問われます。人類の出現時期を問うた出題もあります。
https://finding-geo.info/basic/geologic_time.html

●特定外来生物問題 (2017) (2018) (2019) (2020) (2022)
→頻出ですが選択肢に与えられるものに一対一対応がないため、安定して70点を超えるのであれば捨て問にしてよいでしょう。一方でもし専門で点が取れないなど1点にこだわりたい場合は、覚えれば得点に繋がり易い部分のため丸暗記というのも手ではあると思います。
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html

●相同器官相似器官問題 (2019)
→相同器官と相似器官の違いを押さえた上で、具体例をしっかり押さえましょう。ところで相同器官である場合基本的に哺乳類なら哺乳類同士の器官が挙げられているべきです。相同器官の組み合わせを選べといった問題で「昆虫の翅と鳥の翼」のようなまったく異なる分類群が並べられていれば、その時点で選択肢から外せます。「サツマイモの芋とジャガイモの芋」はいずれも植物であることから安易には選択肢から外せないかもしれませんが、サツマイモの芋は根が肥大したものであるのに対し、ジャガイモの芋は茎が肥大した組織ですので、相同器官にはあたりません。

●スーパーグループ問題 (2021)
→菌類が属するスーパーグループを選ばせる問題が出題されました。スーパーグループは大学教養科目レベルですが、各スーパーグループの代表種をおおまかに押さえておけば対応できるでしょう。
https://tonysharks.com/Tree_of_life/Eukaryote/Eukaryote.html

対策困難論点・・・出題回数は多いものの、出題範囲が膨大で対策のしようがないもの
●分類群用語問題 (2017) (2018)  (2019) 
→昆虫や鳥類など、各分類群で重要となる用語を問う問題です。
たとえば昆虫について、基節、転節などの節が基部から正しく並んでいるものを問うた問題があります。植物の知識のみの人間にとってこの問題を取るのはコスパが悪すぎるので、捨て問にしてよいでしょう。
もしどうしても取りに行くのであれば、愛媛県のRDBに用語の解説があります。ただし、棘皮動物や軟体動物の分類群用語には下記リンク先では対応できないため、個々に調べる必要があります。
例)基節ー転節ー腿節ー脛節ー跗節
例)歩帯、アリストテレスの提灯、歯舌
例)複眼→クモやサソリは複眼を持たない
例)鰓、気管、鋏角、触角
例)冠毛、芽鱗、中肋、葉枕
例)会合線、結節、胸背、尾毛、平均棍
例)歯列、鳴嚢、肋条
例)雨覆、冠羽、嘴峰、跗蹠
https://www.pref.ehime.jp/reddatabook2014/group/group05_term.html

●絶滅危惧種/種の保存法指定種問題 (2017) (2018) (2019) (2020) (2021) (2022)
→頻出ですが選択肢に与えられるものに一対一対応がないため、安定して70点を超えるのであれば捨て問にしてよいでしょう。絶滅危惧ⅠA類評価の種が最も多い分類群を問うたり、種数でなく割合で最も高いものを問うたりする問題も見られます。覚えきることはまず不可能で、かつ以下の通り問われ方が様々であることから、典型的な「知っていれば簡単だけれど、対策するには暗記項目が多すぎる」問題です。
(論点)
・選択肢の中から、ⅠA評価種が最も多く含まれる分類群を選ばせる問題
・選択肢の中から、ⅠA評価種の割合が最も高い分類群を選ばせる問題
・準絶滅危惧種を除く絶滅危惧種に指定されている種の総数を問う問題 (与えられた選択肢は500種刻み)
・国内希少野生動植物に指定されている種の総数を問う問題 (与えられた選択肢は50種刻み)
・絶滅種のみの組み合わせ
など

●生物地理問題 (2020) (2021) (2022)
→ブラキストン線が分布の境界になっていない種の組み合わせを問う問題や同線を跨いでいずれにも分布する種の組み合わせが出題されたことがあります。また、年間平均気温と年間降水量を与えて成立するバイオームを問うた出題もあります。高校生物選択者であれば取れるかもしれませんが、出題頻度も低いため余裕があれば覚えておく程度で良いでしょう。北海道と屋久島について、それぞれブナとツクツクボウシが分布するかどうかが問われたこともあります。対策の困難さという点では、捨て問でしょう。伊豆諸島の生物地理の詳細がモリアオガエル、コウモリ類、オカダトカゲ、ミクラミヤマクワガタと複数の分類群にわたって問われたこともあります。

各論的論点・・・出題頻度が単発的である割に対策するにしてはコスパが悪い論点
●集団遺伝学問題 (2021)
→ハーディ・ワインベルグの法則の成立条件が出題されました。大学教養科目レベルであり、理解するのも大変でしょうから、生物学専攻の学生以外はこれは捨て問にしてよいでしょう。生物学専攻でこれが理解できないのは相当不味いと思われますから、絶対に得点するようにしましょう。

●動物の捕獲採集調査方法問題 (2017)
→毎年出題されるわけではない単発系の問題であり、対策は困難です。捨て問にしてよいでしょう。
小型哺乳類ーシャーマントラップ
ツルグレン装置ー土壌生物
マレーズトラップー飛翔性昆虫

●命名規約問題 (2018) (2022)
→"新種"の生き物を見つけた場合、好き勝手に名前を付けられるわけではなく、国際的なルールに従って記載する必要があります。そのルールのことを命名規約と言い、定期的に改正されているのですが、その改正条項の内容を問う問題が出題されました。動物の命名規約において電子出版物での記載が認められるようになったという点が問われました。とりあえず過去問で問われた知識のみを学習し、もし本番でそれでは対応できない問題が出たとしても、捨て問と割り切ってまったく問題ないように思います。

●分類群含有種数問題 (2018)
→全世界で学名が付いている現生種の数が多い順に並んでいるものを答えさせる問題です。昆虫が一番多いということは押さえておくべき論点でしょう。これさえ理解しておけば選択肢は半分にまで絞れました。後は鳥類と被子植物のどちらが多いかを考えるわけですが、この二択であれば被子植物の方が多そうだとアタリをつけるのはそう難しく無いように思います。鳥類と爬虫類のどちらが多いかというような肉薄した差異を問うような問題は出ないため、大雑把な理解で十分です。
https://staff.fukuoka-edu.ac.jp/fukuhara/zuhyou/bd_data3.html

●法令問題 (2020)
→生物に関連する法令として自然環境保全法、文化財保護法、渡り鳥等保護条約、種の保存法の概略が問われました。たとえば種の保存法は国内種のみならず国外の種も対象にしていることなどが問われています。

●分子生物学問題 (2019) 
→たとえば植物細胞には細胞壁があるけれど動物細胞には無いといった、その程度の初歩的な論点しか出題されません。

●その他問題 (2021) (2022)
→哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類の中で海中で採餌する種を含まないものを問うた問題が出題されました。また、爬虫類と両生類での液浸標本作成手順に関する出題もあります。昆虫やクモの内臓にある排出器官として適切なもの (マルピーギ管) を選ばせる問題も出題されました。体外受精をする種を選ばせるものもありました。

【原核生物】

論点は単純で、難易度も高くありません。原核生物絡みは得点源にしたいところです。
●原核生物問題 (2020) (2022)
→核膜を持たないものとして、ネンジュモが挙げられました。シアノバクテリアのなかまである"アオコ"も原核生物の例としてよく挙げられます。また大腸菌を菌類とひっかけるような問題も出題されています。ダイレクトに原核生物の特徴を問う出題もあり、この年度では原核生物ではRNAが遺伝子の働きをするという選択肢が誤りとして選択すべきものになっていました。何気に生物学専攻でないとうっかりするところですが、「遺伝子」の定義を押さえておけば、RNAが遺伝子の働きをするというのはそもそも変な表現だと気づけるはずです。RNAウイルスを念頭に置いた引っかけ問題なのかもしれません。

【原生生物】

知識問題色の非常に強い問題であるため、過去問で出題されている範囲の知識をしっかりと押さえておく程度に留めることをお勧めします。知っていれば楽勝という印象の強い論点です。
●原生生物問題 (2018)  (2020) (2022)
→原生生物は要するに小さい生物をひとまとめにした呼称なので、含有されている分類群は膨大です。珪藻、繊毛虫、緑藻、有孔虫などの単位でその特徴を問う問題が出題されています。また、粘菌であるムラサキホコリカビを菌類とひっかけるような問題も出題されています。一方で、単細胞生物として不適切な例としてワラジムシが出されたこともあります。ワラジムシを知っていれば大変簡単な問題なのですが、知らなければ対策のしようがありません。

【昆虫】

植物以外の知識が無い人間にとって、難易度は非常に高いです。食草問題だけはとりあえず対策しておいて、あとは捨て問で良いでしょう。せいぜい1,2点のロスにしかなりません。
●蝶食草問題 (2017) (2019) 
→蝶と、その蝶や幼虫の食草を答えさせる問題です。出題される蝶は固定されておらず、出題頻度も低いため、捨て問にしてよいでしょう。
オナガアゲハ・アオスジアゲハ・ナミアゲハーコクサギ (ミカン科)
キアゲハーセリ科
ジャコウアゲハーウマノスズクサ科
ベニシジミーギシギシ (タデ科)
ルリタテハーサルトリイバラ (サルトリイバ科・ユリ科)

●大顎触角問題 (2020) (2021)
→触角を2対持つ節足動物や、大顎がある分類群が問われました。捨て問にしてよいでしょう。

【環形動物・刺胞動物・線形動物・軟体動物など】

意外に頻出の分類群です。Wikipedia程度の知識で十分得点に繋がるので、対策のし甲斐があり、得点源に繋げやすい論点が多い印象です。
●くらげ問題 (2017) (2019) (2020)
→なぜかクラゲは分類検定の一般問題では頻出の論点です。綱レベルの分類と、幼生の名前をしっかり押さえましょう。

●脱皮動物問題 (2019) (2020)
→脱皮動物に含まれる門レベルでの分類群をしっかり押さえましょう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B1%E7%9A%AE%E5%8B%95%E7%89%A9

●その他問題 (2021) (2022)
→ゴカイは環形動物なのか、節足動物なのか、線形動物なのか、扁形動物なのかが問われたことがあります。また、マボヤの属する分類群 (脊索動物門) と同じ分類群のものを選ばせる問題も出題されました。分類群としての各門の代表種を1種でも押さえておくと類推出来るため、ここは暗記することをお勧めします。さらに、環形動物、線形動物、軟体動物、扁形動物のうち、類縁が最も遠いものを選ばせるという系統学的な問題も出題されています。代表種にプラスして、各門の系統学的位置関係も押さえましょう。

【魚類】

出題実績が著しく低い分類群です。
●回遊問題 (2017)
→海と川を往復する回遊魚が「通し回遊魚」、海と川どちらか一方のみを回遊するのが「非通し回遊魚」と呼ばれます。通し回遊魚のうち、繁殖のために河川から海に移動するもの (降河回遊魚) として二ホンウナギが出題されました (他の選択肢には川で生まれて稚魚が海に移動し、海で成長して川に戻ってくる両側回遊のアユ、回遊型と陸封型の両方が知られるウグイ、海で成長し、産卵のために川に移動する遡河回遊のサケが与えられました)。
https://kotobank.jp/word/%E4%B8%A1%E5%81%B4%E5%9B%9E%E9%81%8A-1437414#goog_rewarded

【爬虫類】

出題実績が著しく低い分類群です。
●脱皮問題 (2017)
→脱皮は一生続くということを知っておきましょう。

【鳥類】

出題実績が低い分類群で、難易度も安定しません。力を入れて対策するようなところではないと考えます。
●分布問題 (2019) (2020)
→ダーウィンフィンチが生息する地域が問われたことがあります。また走鳥類の自然分布として正しい組み合わせを問うた問題が出題されました。捨て問にしてよいでしょう。

●性的二型問題 (2021)
→雄と雌で見た目が異なることを性的二型と言いますが、この性的二型の程度が比較的小さいものを科レベルで問うた問題が出題されました。正答はカワセミ科でした。

【哺乳類】

出題実績が著しく低い分類群です。
●その他問題 (2022)
→ウシの歯について、ウシには見られないものを問う問題が出題されました。

【菌類】

出題実績が低い分類群ですが、論点は毎回同じで対策のし甲斐があります。子嚢菌類の代表種をざっと押さえておけば得点源になるでしょう。
●担子菌・子嚢菌問題 (2017)  (2019) (2022)
→2017年では酵母を例に、酵母は子嚢菌類か担子菌類かが問われました。他、子嚢菌類の例としてはアミガサタケがよく選択肢に与えられます。オオゴムタケを挙げる年度もありました。

【藻類・海藻類】

出題実績でいうと目立ちませんが、クロロフィル問題はせめて押さえておきましょう。それ以外の論点は捨てましょう。
●クロロフィル問題 (2017)  (2021)
→クロロフィルaやクロロフィルbはよく問われますが、たとえば「クロロフィルcを有するものを選べ」といった問題は出題されません。陸上植物と緑藻類がクロロフィルa、クロロフィルbを持っているということさえ理解しておけば、「珪藻類はクロロフィルcだ」というような選択肢からの発展的知識を押さえる必要は、合格点に達するためには必要ありません。

●運動性胞子問題 (2020)
→紅藻は生活環を通じて鞭毛を持たないため、運動性を有する胞子は形成されません。紅藻の例としてはテングサ、アサクサノリが選択肢として与えられました。

【陸上植物】

専門問題にも繋がってくる部分です。正直、全問正解を目指したいところ。出題頻度によらずどの論点も捨て問にせず、しっかり押さえましょう。
●コケ植物問題 (2018) 
→コケ植物の論点は、「胞子体と配偶体の違い」および「維管束の有無」です。普段私たちがよく目にする"コケ"はたいてい配偶体の姿で、この配偶体が光合成の役割の大部分を担っています。胞子体から配偶体がぴょこっと出てきて胞子を飛ばすわけです。胞子体と配偶体の話は高校生物の内容かと思われますが、この点の理解が曖昧だとなかなか理解しがたいかもしれません。また、地質年代問題とも絡みますが、維管束の獲得はコケ植物の時点ではありません。維管束を有するか否かはコケ植物とシダ植物の大きな違いの一つです。
https://www.try-it.jp/chapters-15765/sections-15766/lessons-15791/point-2/https://www.try-it.jp/chapters-1444/sections-1510/lessons-1516/

●シダ問題 (2018)  (2020) (2021)
→これもコケ植物問題と同様に胞子体と配偶体についての知識を問われます。また、種子植物との共通項として仮道管を有することが問われたこともあります。

●APGⅢ問題 (2017)  (2018)  (2019) (2022)
→APGⅢ体系で最も原始的とされる科を選択する問題やモクレン科にもっとも近縁な科を答えさせる問題が出題されています。改訂新版『日本の野生植物』の第一巻の最初にAPGⅢ体系の表が載っていますから、それをしっかり覚えましょう。暗記色が強いと言えども、この論点は正直実務でも大変重要であるため、覚えなければならない点の一つと言えそうです。従前の分類体系から大きく変更があった分類群と来れば、ユリ科で決まりです。これは実務でも新エングラーやクロンキストを延々更新できない人がいるくらいなので、試験勉強を期にしっかり押さえましょう。
*系統において、基部で分岐する分類群を原始的と表現することは、少なくとも私が所属していた研究室では避けるべき表現とされてました。

●真正双子葉類の共有派生形質問題 (2018) 
→大学一般教養レベルの問題であり、単に植物の観察が好きという方にとっては大変理解しがたい論点かもしれません。共有派生形質という語がどういう意味なのかはさておいて、真正双子葉類というグループが共通して持っている特徴をひとまず暗記しておくのがよいかもしれません。
https://www.nibb.ac.jp/evodevo/tree/13_Eudicots.html

●被子植物問題 (2017) 
→被子植物の特徴としては胚珠が子房に包まれていること、重複受精をすることなどが挙げられます。

●仮道管問題 (2017) 
→仮道管はしばしば問われる論点です。原則的にシダ植物と裸子植物が有する形態的特徴ですが、例外的にアンボレラ科でも見られるために、被子植物でも仮道管を持つものがあるということを押さえておきましょう。

●精子問題 (2017) 
→精細胞でなく、精子を生産する維管束植物は、シダの仲間を除けば裸子植物のイチョウとソテツ類のみです。

●植物区系問題 (2017)
→日華区系や「東アジア・北米遠隔分布」、旧熱帯区など、グローバルな視点での植物の分布を問う問題です。専門問題でも頻出です。
新熱帯区・・・オオオニバス、ゴムノキ、リュウゼツラン
ケープ区・・・アロエ、ゴクラクチョウカ、マツバギク

●植物相問題 (2021) (2022)
→日本の冷温帯林の主要樹種を問う問題も出題されました。冷温帯においてスダジイが主要樹種になることは絶対にないと確信できるレベルでなければ、2級は諦めて3級から始めましょう。本州の亜高山帯に主要な樹種でないものを選ばせる問題ではモミが正答となりました。

●アマモ問題 (2018) 
→問われ方は様々ですが、なぜかアマモはよく出題されます。海草の代表格として位置づけられているようです。

●小笠原問題 (2019) (2021)
→小笠原諸島の植物相の特徴を問う問題です。たとえば、固有種の割合が琉球列島より高いというのは、常識的にわかるのではないでしょうか。ブナ科が分布しないという論点が過去に問われました。また母島列島固有種を問う問題も出題されました。

●種子散布問題 (2020) (2022)
→種子散布の方法が出題されたことがあります。問い方の角度を変えて、種子に翼が発達しているものを選ばせる問題も出題されました。種子の形態は専門問題でも頻出の論点です。
・動物付着散布→オオバコ
・風散布→ガマ、ケヤキ、ヤマノイモ

次回の記事では専門問題を扱います。

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