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この世界は「脳内テーマパーク」だ。

会社でランチに行った時のこと。

「どこいく?」
「どこでもいいなあ」
「“美魔女カレー”行きましょうよ」
「え????」

わたしは咄嗟に口をつぐみました。
心の中で名付けていたカレー屋の呼び名を文字通り口外してしまったのです。

「美魔女カレーってどこ…?w」
「そんな店あった??」

もちろん、一度言ってしまったからには取り下げられません。ここはオンラインのチャットでは無く、オフラインの会話なのです。

その店は店員さんが2人程度で切り盛りする小さなカレー屋さんで、週の半々ぐらいの周期でメンバーが入れ替わります。
そのうちの1人がモロ好みの美魔女なのです。

顔のテイストは少し褐色の良い松雪泰子のような美魔女で、華奢な身体も相まって独特の哀愁が漂っています。残念なことに左手の薬指には指輪がはめられており、歳は40半ばぐらいでしょうか。

初めて会社の社長2人に連れて来てもらった時には、興奮の余り店を出るや否や「めっちゃ美魔女でしたね…!」と鼻息荒く伝えました。
しかしその時「はあ!?」「全然分からん」と一蹴され、それ以降は心の中だけで“美魔女カレー”と呼ぶことにしたのです。

夜遅くまでやっているそのカレー屋は深夜まで営業しており、帰り道に中を伺って美魔女を眺めるのがわたしの日課でした。

それだけ想いを寄せているのに、世間からは理解されず受け入れられない。
まさに『隠れキリシタン』のような状態です。

その日も同じでした。

「そこのカレー屋ですね…」
「え、美魔女なんていたっけ?」
「コイツの目がおかしいだけやで」
「…」

わたしの目がおかしい。
確かにそうかもしれません。

でもそれでいい。

そのおかげで自分の目に映る無機質な街並みに、1つ美魔女カレーという“アトラクション”が登場したようなもの。
USJに任天堂のエリアが出来るのと同じことなのです。

これは私に限った話では無く、誰もが各々のテーマパークを脳内で建設しているとも言えます。

何の変哲もない公園の滑り台も、誰かにとっては小さな頃に何度も遊んだ“絶叫アトラクション”かもしれません。
単なる古い木造家屋も、誰かにとっては凶暴な犬に吠えられて腰を抜かした“ホラーアトラクション”かもしれません。

この世界は脳内テーマパークだ。

そう捉えれば、景色が色づいていきませんか?

現に私もこのnoteを書きながら、目の前を行き交う単なる雑踏が、幾千通りものキャラクターが行進する“エレクトリカルパレード”に見えてきました。
もし目の前に少し綺麗じゃない感じのおじさんしかいなかったとしても、まだなりかけのゾンビがいる“ホラーナイト”だと思えばワクワクとしてくるでしょう。

私は隠れキリシタンなどではなく、自分だけの「夢の国」に入るチケットを持った幸運な入園者だったのです。

サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。