オナラことわざ辞典__7_

【オナワザ】#26 せいじの陰口

私は身長が186cmあります。俳優の豊川悦司さん、速水もこみちさんと同じですが、「エライ違いやな」と言われることが目に見えているので、そんな無謀な比較は普段しません。
何度も会っている友人でさえ2週間以上会わないと「デカい」と感嘆の声を漏らし、こちらも「ええ加減なれろよ〜」と返す、そんな無味無臭のゴムを200本頬張っているようなクサいトークセッションをする羽目になります。

また、初めて会った人だと「何食べたらそんなに大きくなるの?」と聞かれるのですが、特段牛乳が好きな訳でもなく、どちからといえば圧倒的に貧しい生活をしていたので栄養価は高くない家庭環境だったと自負しています。

そんな私が、唯一他の人よりも多く摂取してきたと自信を持って言えるものがただ一つ。
「陰口」です。


あんまり大きな声で言えることでもなければ、かなり友達が減りそうな発言ということは分かっています。ただ、本当に昔から陰口がよく集まってくるし、自分も散々していました。
おそらく、陰口の聞き方が上手いんです。リアクションも少しオーバーに共感し、相手が悪く言う言葉以上に質のいい「例え」や、最悪なシチュエーションを空想して物語る。するとドンドン相手は乗ってきて、より一層対象の人が嫌いになります。

ああ、自分で書いてて辛くなってきました。
最低ですね。

でもそれで得るものも実はあって、特に女性とのコミュニケーションは得意になりました。
大学時代から女友達が増えたのですが、彼女たちは「陰口の宝石箱」でした。彼氏の陰口、言い寄ってくる男の陰口、家族や友人の陰口などなど。多種多様な陰口を提供してくれるので「こんな風になると女子から嫌われるのか」と女子目線が養われたのです。


でもそんなことは関係ありません。私だけ栄養分を摂取しても、陰口を言っていた本人は自己嫌悪に陥るかもしれませんし、より一層対象者との関係値が悪くなって「破局」なんてこともあるでしょう。
つまり「良いこと」じゃないんです。陰口は。


でも言いたいんです。

陰口を。

人のことボロクソに罵って、美味い酒が飲みたいんです。

「からし蓮根」よりも「彼氏フルボッコ」の話の方が楽しい。
「イカの沖漬け」よりも「イタいおじさん」の話の方が盛り上がる。

どうすれば、悪いことしていると言う自己嫌悪なく「陰口」が言えるのでしょうか。

そんな最中、私はよく知った人に気持ちよく陰口を言う天才がいることに気づきました。


千原せいじ

ご存知、千原兄弟のツッコミ担当であり、千原ジュニアさんのお兄さんです。
私はお二人の「チハラトーク」が大好きで、寝るときは彼らのトークを聴きながら寝床につく生活を数年続けています。

そんな大好きな千原せいじさんは、ことあるごとに人や地域を罵倒します。
いくつかピックアップしてみましょう。

・ジュニアに悪態をついた素人に対して
「そいつ子供の頃から欲しかったもん、何一つ手に入れてへんわ」

・コーヒーの汲み方が悪いマネージャーに対して
「サッカーばっかりやってきたから、量が多ければええ思っとんねん」

・入国審査の対応が横柄な大使館に対して
「お前の国に欲しいもん一個もないわ」

・リアル恋愛番組のスタジオで興奮する女性タレントに対して
「異常なまでに、全く関係ない、人がビジネスでやってる疑似恋愛に、マンキンで乗っかってる、ブッサイクな女性タレント(原文ママ)」

どうですか、私はこんなせいじさんの陰口が大好きです
何か蒸し暑い盆地の気候ではなくカラッとした南国の快晴のような、落とし蓋でコトコト煮込むと言うよりボアッとフランベしてしまうような。そんな気持ちの良さがありますよね。


ここで、せいじさんの「陰口」を要素分解してみました
おそらく肝になるのは以下の3点です。

①証拠がない圧倒的な決め付け
②大袈裟な表現(「一個も」「何一つ」など)
③バレる可能性が多分にある場所での発言

まず上の①②リアリティが無くなります。すると聞き手もそこまで「まともに受け合わない」ようになりますね。
例えばここでせいじさんが証拠を調べ上げてきて、論理の通った的確な誹謗中傷をしたら真剣に聞き入って、どんどん深刻になるはずです。もしかするとSNSでバズったり炎上したりするかも。

でも論理に飛躍がありすぎるが故に、とりあえず「せいじが温度感高く怒っていること」だけにフォーカスされて面白くなるのです。


そしてからは本人が開き直っていることが感じとれるので、逆に聞いている人も自分から「告げ口しよう」なんて思いません。
なんたって公の場で声高々に発言しているんですから、「バレたらまずい」なんてせいじさんが思っているはず無いですよね。そんなことを告げ口しても面白く無いのです。


それ故に、せいじさんの陰口は逆に「好感」を持ててしまいます。
多分、自分の地元をバカにされても笑える自信があります。

つまり「深刻にしない」と言う魔力があるからこそ、せいじさんは言いたいことを言った上で厳しい芸能界に残り続けているのです。これは「陰口のエンタメ化」とも言えるかもしれません。

まとめると、リスクなく陰口を言うためには「陰口のエンタメ化」が必要です。
そのためにはコソコソ、ネチネチと言い続けるのではなく、盛大に盛った陰口を大声で言うのです。すると不思議なことに「陰口」はバレることもなく、報復も恐れる必要がありません。

ノーリスクです。
(保証はできませんが)

というわけで、本日のことわざはこちら。

せいじの陰口

【意味】
千原せいじの陰口みたいに、言いたいことを気持ちよく言った上で報復の心配がないような「良い所取り」のこと。

【例文】
え、悪口をブログに書いてお金もらえるの?
せいじの陰口じゃん。

サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。