オナラことわざ辞典__8_

【オナワザ】#27 無職に暇なし

「無職なんです」
「そうなんだ、いいよね時間があって暇なんでしょ」

最近、こういうお言葉をよくいただくようになりました。

愛想笑いのスキルが人並みに発達している私は「へへ、まあそっすね〜!」とその場をしれっとかわしていますが、心の中では「ハァ?(※)」と中指立てている次第です。

※「ハァ?」は小藪さんがイキってるヤツのマネを散々やった後に発するアレを想像してください。



誤解されている方が多いようなので、ここでハッキリ申し上げます。

「無職は暇じゃない」


そもそも「時間があって」という発言には物理学上理解しかねる部分があります。
時間というのは基本的に誰に対しても平等に与えられているものであり、仕事をしている人に24時間しか無いのに、私には37時間あるわけではありません。

かつてA・アインシュタインが相対性理論を唱えましたが、彼の説によれば『光に極めて近い速度』で移動をして初めて、我々にも体感できるほど時間に差分が生まれ得るそうです。
ということは、「時間あっていいよね」と言っている愚者は、無職になると光速で移動できると思っているのでしょうか。残念ですが、私は退職してから一度もその類の怪奇現象に遭遇しておりません。自転車を漕いでも1km地点で息切れを起こします。

光の速度= 299792458 m/s


こういうことを言うと愚者は「いやいや、自由に使える時間のことだよ」と言います。
では「自由に使える」とはどう言う意味でしょう?

仕事をしている人だって、自ら選択してその仕事を選んでいるんですよね。デスクに荒縄で括り付けられ、機関銃を持った警備兵が徘徊し、一歩でもオフィスを出ると首に付けられた爆弾が作動するのでしょうか。そんな「働きづらい会社」殿堂入りの会社(というより組織)であれば今すぐ最寄りの警察かCIAに直接連絡してください。

多くの人は、そんな会社では無いはずですよね。
ともすれば仕事をしていることだって「自由に時間を使っている」のでは無いでしょうか。

もし休みが欲しくて、ソシャゲ廃人かツイ廃になりたいのであれば、そういうライフスタイルに合った仕事を自由に選べばいいんです。たしか「ウシジマくん」という求人誌にいろんな職種が載っていますよ、ご参考ください。



「じゃあテメェは何に時間使ってんだ!」
という幻聴が聞こえてきました。

たしかに、私は一体何に時間を使っているのでしょうか。
答えは特にありません

とんちではなく、本当に「無い」のです。
というより、何かはしているのですが、何してるか説明できないという方が正しい。

そもそも「暇」というものは、何か「すべきこと」があって忙しいことが前提であり、その間に入ってくる忙しく無い時間を「暇」と呼ぶわけです。
しかし、私にはそもそも「すべきこと」がありませんから、いくら時間があっても「暇」にすらならないのです。暇する時間すらない

つまり「無い」ということにひたすら勤しんでいるということです。
これは仏教でいう「色即是空」に近い考え方かもしれません。


では、具体的に私はどうやって「無い」ということに勤しんでいるのか。

基本は予定が何も無いので、勝手に起きると決めたタイミングで起床します。しかし何ぶん「すべきことが無い」わけで、ひたすら動画や本を漁って思考を停止します。

するとここから「脳」との戦いへと発展します。
「脳」からすれば、すべきことが無い=考えることが無い=失業なので、自らの存在価値を出そうと必死で何かを考え始めます。しかし、それは立派な仕事をされている皆さんの考えるような崇高なことではありません。

私が今日無心で散歩していた際に考えたことは以下の通りです。

「大きな建物だなあ」

「あの敷地に本気で侵入しようと思えばできるか?」

「中にいるお嬢さんと見つめあって会話するまでがゴールだ」

「警備員が1名、周りは街路樹で覆われている」

「待てよ、街路樹は隙だらけだ!イケる!」

「木の間からスネークみたく前転すれば入れる!」

「見てろよとっつぁ〜ん」

「『奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です』ってか!」

「待て、よく考えろ…」

「犯罪じゃ無いか、やめておこう」

意味もねえ、生産性もねえ、まともな教育受けてねえ。
まさに「無い物フェア」な思考だとは思いませんか。


という具合に、私は今でも大変忙しいのです。
金輪際、無職の人に対して「暇なんでしょ」などと言わないようにしましょう。

というわけで本日のことわざはこちらです。

無職に暇なし

【意味】
無職には無職で日々くだらないことを考える使命があるので、まったく暇では無いということ。

【例文】
洗濯は君がやりなよ。
無職に暇なし。僕は「およげ!たいやきくん」の続きを考えるのに忙しいんだ。

サポートされたお金は恵まれない無職の肥やしとなり、胃に吸収され、腸に吸収され、贅肉となり、いつか天命を受けたかのようにダイエットされて無くなります。