マハーバーラタ/3-15.あと残り2年

3-15.あと残り2年

パーンダヴァ兄弟はドヴァイタヴァナを出発しカーミャカの森へ戻ってきた。クリシュナはその知らせを聞き、妻サッテャバーマーを連れて会いに行った。

パーンダヴァ達のクリシュナに対する歓迎はインドラプラスタでもカーミャカでも同じであった。馬車から降りる前からパーンダヴァ達に囲まれ、愛情を表現した。
クリシュナは特に天界から帰還したアルジュナを何度も何度も抱きしめた。
サッテャバーマーはドラウパディーによって歓迎された。
パーンダヴァ達の傍にクリシュナがいる。それで彼らは何も欠けているものは無いと感じた。

クリシュナが話した。
「アルジュナ、君の功績は素晴らしいよ。皆が褒め称えている。
スバッドラーも、君との息子アビマンニュも元気だよ。今や弓の達人だ。父親よりパワフルになったかもしれないくらいだ。
ドラウパディーの息子達は5人とも、私と一緒にドヴァーラカーにいる。
ドゥリシュタデュムナが彼らを教育するために来てくれたんだ。パーンダヴァ兄弟の6人の息子達は大きくなった。まさに父親の生き写しだ。
さて、ユディシュティラよ。
もう11年が過ぎました。もう2年待つつもりですか? 私達の軍隊は準備ができています。ドゥルパダの軍隊も準備ができています。ケーカヤ兄弟もそうです。あなたによる進軍の許可を待っています。ハスティナープラへ進軍してドゥリタラーシュトラの息子達と戦いましょう。今なら奇襲となるのでチャンスです。どうですか?」

ユディシュティラは微笑んだ。
「クリシュナ。私の考えは分かっているでしょう? 私はダルマの道から逸れる気はありません。あと2年やり遂げます。まだとても厳しいことであるのは分かっています。とくにビーマにとっては辛いものになるでしょうが、それを避ける気はありません。私の義務を果たします。あなたの提案は断らなければならない」

クリシュナはビーマに向かって微笑んだ。
「ビーマ。そういうことです。待ちましょう。あと2年だけです。その後は好きなだけ一緒に暴れましょう」

それからクリシュナはパーンダヴァ兄弟のこれまでの冒険に耳を傾けた。

すると、聖者マルカンデーヤが現れた。彼は上手な語り部だった。
皆が彼の周りを囲み、クリシュナが頼んだ。
「マルカンデーヤ、お話を聞かせてください。久しぶりなのでたくさんお話をお願いします。宇宙の現れの話が大好きです。偉大な人の話も好きです。あなたの話が聞きたいです」
ちょうどその時ナーラダもやってきていた。

マルカンデーヤはたくさんの話をした。
知識の偉大さ、修行による力のたとえ話、大洪水の時に現れたヴィシュヌの化身マツヤの話、アシュヴァッタの葉の上で眠る小さな子供の姿をした神の話、クリタユガ、トレーターユガ、ドヴァーパラユガ、カリユガの四つのユガそれぞれの特徴の話、ドゥンドゥマーラやクヴァラーシュヴァ、聖者アンギラーサの話、アグニと妻スヴァーハーへの愛の話、シャンカラの息子クマーラと神々による天界の戦いの話、たくさんの話を皆が座って聞き入った。
あっという間に時間が過ぎていった。

クリシュナは数日間パーンダヴァ達と共に過ごし、ドヴァーラカーに帰っていった。

一方、ドゥルヨーダナは平穏な日々が終わってしまうことを気にかけていた。あと2年で終わってしまう。さらに13年間引き延ばす方法をなんとかして考えなければならなかった。

その頃ドゥリタラーシュトラの元に一人のブラーフマナがやってきてパーンダヴァ達の様子を報告した。何時間もかけてたくさんの話が報告された。
ビーマの強さ、アルジュナがシャンカラからパーシュパタを授かったこと、さらに天界へ行ってニヴァータカヴァチャスとカーラケーヤを滅ぼしたことなどが伝えられた。
王はパーンダヴァ達に対する自らの罪深い行動について嘆いた。

ドゥルヨーダナはドゥッシャーサナ、ラーデーヤ、シャクニと共にパーンダヴァ達を攻撃する方法を話し合った。
ラーデーヤが言った。
「我が友ドゥルヨーダナよ。あなたは今、世界の王で、あなたの敵達は今、動物のように森をさまよっています。
こうしてはどうでしょう。この世界で、金持ちの人々や敵の栄光を見ること以上に人を苛立たせるものはありません。財産や王国を失うことよりも辛いでしょう。妻達や従者達も連れて皆でカーミャカの森へ行って楽しく数日間を過ごすのです。あなたの栄光を見てパーンダヴァ達は妬み、激怒するでしょう。あなたの妻達を見てドラウパディーはきっと嫉妬で青ざめるでしょう」
「ラーデーヤ、それはいい! そうしよう。あなたはいつも私の耳を喜ばせてくれる。パーンダヴァ達が体験している困難をこの目で見てみたい。木の皮を着ているビーマやアルジュナを見てみたい。インドラプラスタで私をあざ笑ったあのドラウパディーの今の姿を見たい。きっと目に涙を浮かべて誇りも無くしていることでしょう。それは良い考えだ。さあ、森へ遠征に行く理由を考えましょう」

ラーデーヤは遠征に行く理由を考えながら夜を過ごした。
翌朝ドゥルヨーダナに話した。
「あなたが今からすべきことはこうです。
私達の牧場がドヴァイタヴァナの隣にあります。そこの牛の調査を理由にしましょう。会議の場で王にはそれを止める理由が無いでしょう。許可を得てから後で真の理由を王に伝えればよいのです」

シャクニもそのゴーシャヤートラーという名の、会議において特に害が見られない計画に賛成した。
ドゥルヨーダナは無事に許可を得ることに成功した。
許可を得た後で彼は父ドゥリタラーシュトラに真の目的を伝えた。
父は息子に言った。
「それは良くない。危険すぎる。近くのカーミャカの森にパーンダヴァ達がいるのでしょう? ユディシュティラはあなたに対して怒っているし、ドラウパディーもいます。パーンダヴァ兄弟が攻撃してくるかもしれない。アルジュナはずいぶんと力強くなったと聞いている。
その計画は愚かだ。止めなさい」

シャクニが彼の恐れをあざけった。
「ユディシュティラが約束を破らない人間であることを知っているでしょう? 彼の弟達もまた勝手なことはしないはずです。私達を攻撃するなんてあり得ないでしょう」
王は仕方なく彼らを行かせた。

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