マハーバーラタ/1-36.私達五人があなたの娘と結婚します

1-36.私達五人があなたの娘と結婚します

ドゥルパダ王から呼び出されたパーンダヴァ達は城に到着した。彼らは王から熱烈な歓迎を受けた。
彼ら五人のブラーフマナを高価な生地で覆われた座席に案内すると、彼らはその壮麗な歓迎に対して、驚くこともなく、むしろ慣れているような雰囲気であった。たくさんのホールを通って城の中を案内していくと、唯一武器が保管されているホールを通る時だけ立ち止まった。キラリと光る目つきを武器に向けているのをドゥルパダ王は見逃さなかった。そして彼らの豹のような歩き方が彼に確信を与えた。

「さあ、ようこそ皆さん。座ってください。私はあなた方がとても勇敢であることは知っていますが、それ以上のことは知りません。どうか、私にあなた方のことを教えていただけませんか?」
ユディシュティラは正体を明かす時が来たと思った。
「どうか心配しないでください。私達はブラーフマナではありません。全員がクシャットリヤです。
私はクルの一族であるパーンドゥの息子、ユディシュティラです。ここにいる五兄弟の長男にあたります。
こちらがビーマです。
こちらにいるのがあなたの娘との結婚を勝ち取ったアルジュナです。
あちらの双子がマードリーの息子、ナクラとサハデーヴァです。
あなたの娘は蓮の湖を出ましたが、他の蓮の湖に入っただけです。彼女は私達の元で幸せになるでしょう」

ドゥルパダ王はその発言を聞いて、何も言えないほど喜んだ。
ドゥリシュタデュムナは親友ビーマの所へ急ぎ、抱きしめた。
王は声を詰まらせ、涙が頬から流れ落ちていたが、ようやく気を静めて話し始めた。
「もう、この喜びをなんと表現してよいのか分かりません。どうやってあの火事から脱出できたのか、これまでどうしてきたのか話していただけますか?」
ユディシュティラはこれまでのたくさんの冒険を彼に話した。
「ユディシュティラよ。生きていてよかった! そしてスヴァヤンヴァラに勝利してくれたこと、大変感謝しています。
この国はあなたに差し上げます。もうカウラヴァ兄弟を恐れる必要はありません。このパーンチャーラの国の全てがこれからはずっとあなたの味方です。
そして、我が娘とあなたの弟アルジュナの結婚式の準備を始めようではありませんか」

最後の発言に反応してユディシュティラが答えた。
「私がこのパーンダヴァ兄弟の長男です。私が最初に結婚しなければなりません」
「おお、そうですか、あなたが私の娘と結婚するのですね。もちろん大歓迎です! あなたを私の息子として持つことは大変な名誉です」
「ドゥルパダ王よ、どうか私の提案に驚かないでいただきたい。私達五人があなたの娘と結婚します。彼女はパーンダヴァ五兄弟の妻となるのです」
「え? それはいったい? 申し訳ないが、私はあなたの提案に混乱しているようです。その提案はダルマに反しているように思うのです。一人の男性が二人以上の妻を持つことが許されていますが、一人の女性が二人以上の夫を持つことはアダルマです。それは不可能でしょう。このダルマは古代から守られているものですから、どうすればその提案を受け入れられるのか私には分かりません。受け入れてはならないアダルマに思えるのです」

「あなたの苦悩は理解できます。あなたの言うことは正しい。確かに一人の女性が二人以上の夫を持つことは慣習ではありません。
しかし、私達パーンダヴァ兄弟は違うのです。私達兄弟はいつも全てを分かち合ってきたのです。いつも五人一緒で、私達の間には何者も入ることはできませんし、どんな方法であっても私達を引き離すこともできません。
そして私達の神である母クンティーがいます。彼女は決して間違ったことを口にしたことはありません。私達があなたの娘を戦利品として持ち帰った時に彼女は『ビクシャーはみんなで分け合いなさい』と言いました。私達にとって母の言葉は、ダルマシャーストラ全てよりも優先されるのです。
さて、この結婚がアダルマであるかどうかですが、リシ達は一人の女性を分かち合ってきたという話を聞いたことがあります。
聖者ジャティラの娘は七人の夫を持っていましたし、他にもいくつかの例があります。ですから今回の私の提案はダルマに反していないと思います。
そして私は決して価値のない考えを持ったことはありませんし、私の母もそうです。どうぞご安心ください」
ドゥルパダ王はどうしても納得がいかず、途方に暮れた。

そこに聖者ヴャーサがやってきた。
この難しい議論からの救いを求めてドゥルパダは彼を歓迎した。
ヴャーサは智慧の源であり、ダルマそのものであった。
ドゥルパダは今起きている苦悩を伝えた。
「ドゥルパダよ。私が来た理由はまさにそのことです。
あなたが言うことが真実であることは間違いありません。確かに一人の女性が二人以上の夫を持つという慣習は現代では一般的ではありません。ですが、以前はそういうことがあったのです。
それに、この結婚には神聖なる者達の許可が既に得られているのです。
ドラウパディーは前世でロードシャンカラに祈り、彼女の次の生、つまり今世で五人の夫を授けたのです。私はあちらの世界での秘密を知っていますが、それを話すことは許されていません。
ですが、ドゥルパダよ。私の言葉を信用してよいです。この結婚を許すことにアダルマはありません。ダルマに関して何ら問題はありません」
ドゥルパダはそのヴャーサの言葉で納得するしかなかった。偉大なヴャーサがこの結婚を保証し、ドゥルパダ王も一人の女性と五人の男性という、この普通では考えられない結婚に同意した。

チャンドラ(月)とローヒニー(チャンドラの妻の一人)の星が出会う縁起の良い日に、五人の兄弟はドラウパディーと結婚した。

パーンダヴァ兄弟は今、ドゥリタラーシュトラの息子達に対する恐れから解放されていた。彼らを支えるドゥルパダ、火から生まれた彼の息子ドゥリシュタデュムナ、クリシュナに率いられるヴリシニ達を共にして彼らの心配は無くなった。
彼らはカーンピリャの宮廷で幸せな日々を過ごした。

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