マハーバーラタ/1-2.16年後の再会

1-2.16年後の再会

ガンガーが去ってから16年もの年月が流れた。
シャンタヌの心はぺちゃんこにつぶれたまま、空っぽであった。
それでも彼は王としては優秀で、国民は彼の統治下で幸せに暮らしていた。

彼の唯一の楽しみは狩りであったが、
何かに取り憑かれたかのようにガンジス河の岸を通っていた。
その場所は彼の唯一の安らぎの場所であったから。

ある日ガンジス河の岸にやってきた彼は奇妙な光景を目撃した。
いつもなら絶え間なく流れているはずの水が止まっていたのである。
「なぜ水が止まっているんだろう? 上流へ見に行ってみよう」
川の上流に歩いていくと、一滴の水も漏らさないほどの無数の矢が編み込まれていた。

突然現れたダムに驚愕して立ち尽くしていた彼の傍に、甘く麗らかな微笑みを浮かべるガンガーがいつの間にか立っていた。
シャンタヌは仰天し、涙を浮かべて彼女を見た。
「ああ、ガンガー、私を憐れんで帰ってきてくれたのですね。ずっと私は孤独でした。あなた無しでは生きられません。どうか戻ってきてください。
私のことを覚えているでしょう? だからこうして私の前に現れたのでしょう。さあ、一緒に帰ってもう一度幸せになりましょう」
ガンガーは憐みの目で見ていた。
「いいえ、旦那様、それはもう過ぎたことなのです。私は戻りません。太陽が戻ってくるのは次の日を導くためだけです。誰も時間を逆戻りさせることはできないのです。私がここに来た理由をお話しましょう。堰止められている川を見ましたね?」
「もちろん。私はこの光景に圧倒されていました。ガンガー、誰がこのガンガー(ガンジス河の呼び名)を堰止めているのでしょう? 私の愛の全てであるガンガーを誰も堰止めるなんてできないはずです」

その時、突然轟音が鳴り響いた。それは堰を外された川の水が一気に流れ出る音であった。
それと同時に遠くから一人の少年が走ってきた。
高貴な顔立ちをしたその少年は興奮した様子でガンガーに抱きついた。
「お母さん! お母さん! うまくいったよー! また川を堰き止めたよ!!」
シャンタヌは驚きのあまり、絵のように固まった。
「あなたの子供・・・? なら、私の子供!? そうですよね??」
「ええ、旦那様。あなたの息子です。
デーヴァヴラタ、あなたのお父様ですよ。ご挨拶なさい」
シャンタヌは喜びのあまり、足元に近寄ってきたその少年を抱え上げた。
「旦那様。これが私がここに来た理由です。どうぞあなたの元を連れて行ってください。この子はクシャットリヤが学ぶべき技術を全て修めました。ヴァシシュタからはヴェーダとヴェーダーンガを学び、聖なる先生であるヴリハスパティからは政治学を、クシャットリヤを敵とするバールガヴァからは私からの頼みで弓術を習い、今では全ての技術に熟練しています。
パウラヴァ王位を継ぐのにふさわしいように彼を育てました。どうぞ英雄たちの住処にお連れ下さい」
そう言い残すとガンガーは消えてしまった。

シャンタヌは16年前と同じ家路についた。
だが、今日は一人ではなかった。愛するガンガーとの息子が傍にいた。
長い間孤独であった彼は、唯一の後継者であるこのハンサムな息子を連れ、王都ハスティナープラへ馬車を走らせた。

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