マハーバーラタ/5-11.クリシュナの歓迎

5-11.クリシュナの歓迎

ドゥリタラーシュトラはクリシュナがやってくるとの報告をスパイから聞き、ビーシュマやヴィドゥラ達を呼んだ。
「偉大なクリシュナがここに来るそうだ。彼をもてなす準備をすべきと思うのだが、どう思いますか?」
ビーシュマ達は賛成した。
ドゥルヨーダナが全ての準備を整えるように手配した。

ドゥリタラーシュトラはヴィドゥラに話した。
「クリシュナは今晩クシャスタラで休み、明日ハスティナープラへ到着するだろう。彼の歓迎会を取り仕切ってくれないか? たくさんの宝石や戦闘馬車、馬など贈り物を彼に捧げたい。彼はそれに値する人だ。彼を十分に喜ばせないとな。そう思うだろう?」

ヴィドゥラは腹の中で笑った。
「兄よ、クリシュナはこの地上で最も偉大な人で、これからも彼以上の偉大な人が現れることはないでしょう。
それにしても、あなたの幼稚な話はただただ私を楽しませてくれますね。
あなたは私に『クリシュナに贈り物をすべきだ』と言っています。
親愛なる兄よ。クリシュナにふさわしいのはこの世界全てです。
小さな富を彼に渡すことで何を期待しているのか、私にはあなたの考えが分かります。
あの偉大な人を買収できるかもしれないと期待しているのでしょう?
そうでもなければ突然あなたがこんなに気前が良くなるはずがありません。
パーンダヴァ達に対しては5つの村でさえも分け与える気がないのに、彼らの使者に対しては贈り物をすべきだと。なんとおかしな提案でしょうか。
クリシュナを説得してこちらの味方にするのは無理です。世界中の全ての人を味方にするくらい難しいことです。彼をアルジュナから引き離すなんてできません。
あなたが持っている小さな財産であの偉人を買おうと思っているのですか?
それは彼に対する侮辱でしかありません。
どんな贈り物も、どんな説得も、嘆願も彼を引き離すことはできません。
もしクリシュナに嘆願することがあるとするなら、まずは彼が頼みに来ることを叶えてください。
彼はクル一族の平和を求めています。
あなたがもし彼の平和の願いに同意し、戦争の準備を止めるのであれば、それがクリシュナに対する本当のおもてなしとなるでしょう。
しかし、あなたにそれができますかね? 私はそれを望んではいますが。
父を亡くした哀れな彼らに対して僅かばかりの愛情でも見せてくれる気はありますか? あなたには難しいでしょう」

ドゥルヨーダナが言った。
「ヴィドゥラ叔父さんの言うことは正しい。クリシュナはパーンダヴァ側の人間だ。
贈り物は慎重に考えましょう。贈り物を差し出したなら、私達が怯えて彼の好意を得ようとしているのだと考えるでしょう。
そしてクリシュナ自身は偉人の中の偉人なので、つまらない贈り物で侮辱すべきではありません。彼を味方にする必要はありません。ただ敬意を払えばいいのです。世界中から笑いものにされるような贈り物はやめておきましょう」

ビーシュマが言った。
「クリシュナは敬意を払われるかどうかなど取るに足らないことだろう。
たとえ誰かが彼を侮辱したとしても、そんなことは気にも留めないだろう。彼は全てを見通しているのだから。彼に対して秘密を持つことはできないのだ。
彼は真実の為に戦いに来る。パーンダヴァ達に対してなされた不正に報いる為にだ。
彼が期待している言葉を聞いたなら、彼は喜ぶだろう。それをすればいいのだ」

ドゥルヨーダナが言った。
「我が祖父はいつもパーンダヴァ達のことを話そうとする。
私に計画がある。パーンダヴァ達を奴隷にする計画だ。
まずはこのパーンダヴァ達の友人クリシュナを監獄に入れるんだ。
クリシュナが捕虜となったなら、彼らに何ができるか? 無力だ。
これこそ最も優れた計画だ」

ドゥリタラーシュトラは息子の提案にぞっとした。
「ダメだ。それは違う! そんなことを考えてはならない。
クリシュナは使者だ。そして彼自身は親戚であり、私達全員にとっての親愛なる人だ。彼を監獄に入れるなんて、そんなこと、考えるだけでも罪だ」

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