マハーバーラタ/3-11.ヒマヴァーンへ

3-11.ヒマヴァーンへ

パーンダヴァ達はマンダラ山を登ることに決めた。
しかしドラウパディーが気がかりであった。
この山は登るのが困難であることは分かっていたが、アルジュナがインドラの住む天界から地上に戻る時には、きっとこの山に降りるだろうと思っていた。
ビーマが言った。
「ドラウパディー、一刻も早くアルジュナに会いたいでしょう。あなたが歩けなくなった時、私が運びます。兄弟達が歩けなくなった時、私が全員を運びます。さあ行こう!」

アルジュナが彼らと別れてから既に五年が経っていた。
皆がアルジュナと会いたくてワクワクしながら山を登り始めた。

太陽が姿を現し、山頂をピンクと金色に染めた。
その情景と空気が彼らを陽気にさせた。
最初のうちは疲れを感じていなかったが、太陽が天高く昇るにつれて彼らを疲れさせた。それでも彼らはひるむことなく登り続けた。
あらゆる香りに満たされているという山頂ガンダマーダナへ向かった。
アルジュナに会いたい一心で登り続けた。
疲れによって次第に誰も口を開かなくなった。
それでも彼らは歩き続け、聖者ナラとナーラーヤナが修行したとされるバダリーという名のアーシュラマへ向かった

ユディシュティラが言った。
「もう進めない。体が熱を持ったように燃えている。息も苦しい。倒れそうだ」
その時、突然辺りが暗くなった。

濃く暗い雨雲が空を覆い始め、強風が吹き始めた。砂埃のマントに覆われ、空と山の境界が見えなくなっていった。

彼らはお互いの姿も見えず、強風の騒音によってお互いに話すこともできなかった。
木々が強風で倒れた。大木は土ごと持ち上げられた。
ビーマはドラウパディーを抱えながら道に倒れた木々を押しのけて進んだ。

しかし、さすがのビーマも限界に達した。
自然の力はあまりにも強すぎた。彼らは座り込んで休みを取った。

強風が少し和らいできたが、今度は雨が激しく降り始めた。矢よりも激しい水滴が山にぶつけられた。
ユディシュティラはその光景を前に呆然と座っていた。
自然の激しさに対する畏敬の念と人間の無力さを感じ、何も話さず、ただその光景を見ていた。

岩が突然動くのが見えた。水がその岩を押し出し、激流となった。
それは長い間束縛されていた怒りを突然爆発させるかのように見えた。
彼は自分の怒りを解放する時はこのような感じになるのだろうと想像した。

川は木の周りを流れ、地面を掘り、流れ続けた。
一本、また一本と、木が倒れた。
もはやなんとも言えない壮大な光景であった。

ついに雨が止んだ。
空が突然晴れ渡り、黒雲に隠れていた太陽が現れた。
まるでそれまでの行いが正しかったのだと、疲れた巡礼者を励ますかのようであった。

彼らは再び登り始めた。
しかし、ドラウパディーは疲れで歩けず、膝から崩れ落ちた。
ナクラが駆け寄り、膝の上に彼女の頭を乗せて休ませた。
ユディシュティラは彼女に対する憐みと、その不幸の原因である自分自身に対する怒りを感じていた。
彼女に水をかけ、足をマッサージした。その足はボロボロになり、マメができていた。

次第に顔色は良くなり、意識を取り戻した。
「ドラウパディー、こんなひどい夫を許してください。
あなたを妻として迎える時、あなたの父に『あなたの娘は蓮の湖を出ましたが、他の蓮の湖に入っただけです』と言いましたが、自分が情けなく思います。パーンダヴァ兄弟の元へ来ることで幸せになると言ってくれたのに、こんな目に遭わせてしまいました。
あなたにはいつも痛みばかり与えてしまっています。どうかこの罪を犯した夫を許してください」
「ユディシュティラ。運命が私達を苦しめると決めた時、できることは何もないのよ」

ユディシュティラはビーマに頼んだ。
「ビーマよ。ドラウパディーはもう一歩も動けないでしょう。誰かが彼女を運ばなければなりません。誰も運べないようなら、あなたの息子ガトートカチャの助けを求めましょう。彼はラークシャサの息子。あなたが祈ればきっと来てくれるでしょう。
あなたも疲れているでしょうから、それが最善の方法だと思います」

ビーマは息子を想った。
考えるよりも早くガトートカチャが目の前に現れた。
ビーマは愛情深く彼を抱きしめた。
ユディシュティラもお気に入りの甥ガトートカチャに会えて嬉しかった。

「我が息子ガトートカチャよ。ドラウパディーはもう歩けない。彼女を優しく運んでくれ」
ドラウパディーはガトートカチャによって運ばれた。
そしてガトートカチャによって呼び集められた彼のラークシャサの手下たちによって他の者達を運んだ。
ダウミャとローマシャのみが自分の足で歩いた。
山を登るスピードは上がり、カイラーサ山の頂上が見えるところまでやってきた。

絶え間なく太陽の光が降り注ぐその場所に彼らは降ろされた。
バダリーという名のアーシュラマに住むリシ達によって彼らは歓迎された。
その地からはガンジス河の源であるビンドゥサラス湖やマイナーカ山を見ることができた。

ユディシュティラはこの地以外では決して見つけることのできなかった平穏さが彼の心に忍び寄ってきているのを感じた。

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