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スカート『トワイライト』、それに伴う弾き語りをmanucoffee roasters クジラ店にて

「トワイライト」および「黄昏」。日常生活では滅多に使わないけれど、ポップカルチャーに育てられた身としては馴染み深い言葉。夕間暮れに薄赤く染まる空を見て、なぜだか切なく、甘美な気分になってしまうって奇妙な事。ただの時間帯、ただの風景なのに。感受性の成せることだと言ってしまえばそれまでだろうけど、どこか説明不能で未知な、人を人たらしめている、心のやらかい部分に訴えかけるエネルギーがあるとしか思えない一刻。

スカートのメジャー2ndアルバム『トワイライト』に沁みているうちに今年も半分おしまいとなった。誰かをそっと想い、自らをじっと見つめる、一貫してそういう歌が並んだ作品だ。春と冬を往来しながら、ここに君がいないことも、そばに君がいることも、同等に狂おしく切ないものとして綴ってある。抜けの良かった1st『20/20』を考えると、ジャケットもモノクロだし、内容もどこか俯き加減。そこにそんな題をつけてしまうのだから堪らない。

タイトル曲「トワイライト」の<それでも夕暮れは私たちを等しく染めない>というセンテンスがジャケットのコピーにもなっているのだけど、手に取って読んだ時に体が震えた。前提として存在するロマンチック、そこに浸りきることのできない"ひっかかり"が確かに胸に残るから、心はソレに左右されてしまう、なんて戸惑いが滲む一節。これが僕らの日々じゃなくて何だと言うの。あの時抱いた感傷、これから覚える後悔、そんな情景の連続写真。

ギター、ドラム、ベース、キーボード、パーカッション(「沈黙」が特にイカしてるんだ)、そして曲によってはペダルスチールやトロンボーンなど。派手に着飾るわけでなく、だけど主張しないわけではない、均整の取れた演奏も最高だ。架空のバンドなんて澤部渡は言ってるし、そういう形態だからこそ作り出せる強度なんだろうけど、グルーヴは肉体的で実存性しかない。だけど、立ち上がってくるのはどこかぽつねんとした気分なのが不思議なのだ。

全国ツアーに福岡公演が無いのがとても残念だったが、インストアライブが開催された。他の地域はCDショップが主だったが、福岡は薬院にあるmanucoffee roastersクジラ店で、ちょっとしたパーティーのように開催。おしゃれな内装にやや気後れしたけれど、音が鳴ってしまえば何も関係ない。大入りの観客からの熱烈な歓迎を受けて、1曲目を当初予定していたしっとりした曲を急遽変更して、高揚感たっぷりの「回想」でスタートする幕開け。

アコギ弾き語りは音圧に物言わすものではないけれど、怒涛のようなカッティング(弦が序盤で切れるほどの)には惚れ惚れする!特にアルバムからの「沈黙」、ラストを飾った「静かな夜がいい」など、声を張り上げて歌い上げる楽曲にはどうしても胸が熱くなり、小躍りしてしまう。ひとりじっと聴き入るスカートもいいが、こうやってフロアにドロップされた歌に身を委ねるのもとても気持ちよい。良い音楽とは時と場所を選ばないものなのだ。

軽やかに転がっていく「ずっとつづく」、メロディがふっと解けていくような「トワイライト」。アルバムの初回盤に付属していた弾き語り盤『トワイライトひとりぼっち』は、原曲たちと違う素朴な魅力を引き出していたが、まさにこのライブではそういう滋味をたっぷり噛み締めることができた。特に、まるで君がいないみたいなように聴こえてしまう「君がいるなら」のがらんとした聴き心地は絶品。遠い目をしながら澤部さんを見つめてしまう。

大阪でのライブで、Wアンコールに選ばれた「ガール」をやってくれて歓喜した。原曲はスカートには珍しい疾走するロックナンバー。鬱屈した大学時代に現キーボードの佐藤優介と一緒に作ったエピソードと共に披露されたアコースティックな「ガール」は、やはり鋭く尖り、なおかつ瑞々しさに溢れていた。

終演後には澤部さんのDJも。曲に合わせて体全体で楽しむ澤部さん、やはり推せる。スカートのオタクとして再来週は唐津のフェス・Living Alohaで!

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