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8月のいだてん

第29回「夢のカルフォルニア」
8月のいだてんは1932年・ロサンゼルスオリンピック編。冒頭からいきなり選手団のミュージカルシーンが登場するド派手な幕開け。ただの訓示なのにめちゃくちゃ面白いカクさん(皆川猿時)など浮かれた笑いを挟みつつも、吹き当てられるアメリカからの挑発、そして自身の選手としての限界に葛藤する高石勝男(斎藤工)、前大会の金メダリストとして引き際に悩む鶴田義行(大東駿介)など、シリアスな芝居でヒリヒリとしたテーマが刻まれていた。メダルを全て獲得しようと息巻く田畑はまるでダークヒーローにように厳しく選手を選別していく。それに対して人情味で立ち向かうカクさんこそがすごく主人公に見えるというのがいだてん第二部の不思議な構造だなぁと。

女子部の合流に沸く男子部の画はまさに「ごめんね青春!」で笑ってしまった。どんな時代においても男子はかるあるべき!女子部の女優も魅力的だ、「菊とギロチン」で女相撲選手を演じた木竜麻生さんが出てるの驚いた!

第30回「黄金狂時代」
ロサンゼルスオリンピック水泳大会が開幕。生中継を禁じられたことから生まれた、後追いで試合の模様を実況して喋る"実感放送"なるものが。まるでバカリズムのコントみたいな言葉遊びじゃないか。この回は、実感放送っていう言葉の響きが持ちうる様々な笑いを盛り込んだクドカン脚本を強く感じるくだりが多かった。個人的に「あたかも放送」に一票入れたかったけど。

と、そんな小ネタ程度に思っていた実感放送だけど、劇中終盤に800mで3位に終わった大横田(林遣都)が、その試合を再現しながら録音ブースで泳ぐシーン。試合終了前に思わず手を止め、その瞬間を思い出しながら悔しさに浸るシーンで彼を抱きしめた高石の熱さよ!実際の試合中には書き起こせなかったエモーションを注入することができるという点で、この実感放送というものがドラマを駆動させる装置となっていた。というか、そもそもこの「いだてん」自体が"実感放送”的な側面を持った作品なのだろう、と思った。

第31回「トップ・オブ・ザ・ワールド」
ロサンゼルスオリンピック編、完結。前畑秀子(上白石萌歌)のレースシーンでのカメラワーク、水中で回転するのとか、冴えすぎ。試合終了後、耳抜きをしたら歓声が飛び込んでくる演出とか、頭がシビれたよ。現地の日系人を演じた織田梨沙が静かに心の躍動を見せたところ含め、実に燃え上がるシーンだった。ロスの去り際、「一種目モ失フナ」の標語を「意味なんかないさ、所詮戯言さ」と言い放つ田畑のフィーリング変化にも胸が打たれるし、日系人たちに取り囲まれ、高らかに勝利に浸る場面も抑圧と開放のカタルシスの頂点だった。しかしここからのアメリカとの歴史を想像するとね、、

久しぶりの金栗四三(中村勘九郎)、および池部家の登場も嬉しかった。今度はスポーツに勇気づけられる側として。この循環ですよ!そして登場から数回、一言も発さないキャラという贅沢な使い方をしてる麻生久美子がようやく口を開いたり。この次の回でもう田畑と結婚するし、すごいスピード感。

第32回「独裁者」
1940年の東京オリンピック開催に向けて、政治ゲーム的な色合いが強まっていく回。加藤雅也、塚本晋也、きたろうという濃すぎるキャスティングでこのプロジェクトが進行していくわけだが、ここにおいてムッソリーニやヒットラーの歴史的な動向がしっかりと関わっていくのが驚きである。

そして体育協会理事・岸清一(岩松了)がこの回で死去する。皮肉屋で、オリンピックに興味を示さなかった彼が、前畑秀子へ心無い言葉を投げかける伸びたうどんa.k.a東京市長(イッセー尾形)に声を荒げて反論し、昭和天皇に汗だく&片瞼だけ二重になりながら東京五輪を進言するようになるという、この一連の流れはとにかくアツかった。選手の勝利を飛び跳ねて喜んで泣き、敗北には悔しがって泣く、とにかく泣いてるチャーミングなおじさんであった。彼の悲願を継ぎ、田畑が本格的にオリンピック招致へと乗り出していくわけだが、やはりこのドラマは大河のような意思の継承の作品なのである。

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