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5月のいだてん

17話「いつも2人で」
ベルリンオリンピックの中止により、メランコリックな金栗四三がオープニングから登場。こういう影がある表情も中村勘九郎は抜群にうまいし、彼を励ますスヤさんの綾瀬はるかっぷりが最高である。立ち直りながら駅伝を着想、マラソン走者を見つけるために教師になる、と急にテンポよく話が進みすぎてさらっとスーツ姿の四三も。いきなり団子をゆっくり食べてる四三も良かったけど、ようやく社会人としてキャラクターの時間が進み出した感。

シマちゃん(杉咲花)がここからキーになっていくことは前回でも示唆されてたけど、女子スポーツの開花を引き受けたキャラだったのか、凄い大役。

東海道駅伝競走の史実を1960年の視点で振り返るという、また特殊な構造を取っていた。たまらん。浜松で田畑政治(阿部サダヲ)が駅伝見てたとか、こういう脚色、好きよ。清さんが東京オリンピックやりゃいいじゃねえか、とさらりと伏線を貼る。市井の人にこの台詞を言わすセンスが最高なのだ。

18話「愛の夢」
美川くん(勝地涼)、こんな口調じゃなかったのに、当たり前のように仕上げてぶち込んでくるの、数話出番がない大河ドラマならではのアプローチだなぁと。葛藤しながらスヤさんと四三の日記を読むくだり、笑いすぎた。こんな壮大な話なのに、隙あらばちゃんと面白くあってくれるのが嬉しい。

スヤさん出産という大きなイベントも。実次(中村獅童)と池部幾江(大竹しのぶ)の玉名チームのやり取りの面白さも勝手に完成されているあたり、どの地方にも手を抜かないクドカンの愛が出ている。走法と出産の呼吸がシンクロするという、1話目の伏線を大回収する大技もここで。ゾクゾクするよな。

朝太(森山未來)の東京帰還、二階堂先生(寺島しのぶ)と永井先生(杉本哲太)が女子体育を巡りダンスとともに袂を分かち、ドッジボールの伝導師・可児先生(古館寛治)はアメリカナイズ。高座をランウェイのように使う攻めた演出もありつつ、文化史映像としても機能した実に国営放送らしい回だった。

19話「箱根駅伝」
大正編初回でもあった、富士なのか箱根なのか、という山の存在を冒頭から見事に拾ってくれた。五りん(神木隆之介)の創作落語として展開される回。

森山未來が2役で志ん生の息子を演じるというバケモンみたいな芸当を見せつけてて笑いながら震えてしまった。全部、美濃部とも違う口調なんだよ、怖い怖い。ちなみに、次男の古今亭朝太(のちの古今亭志ん朝)は「平成狸合戦ぽんぽこ」のナレーターとして有名な人だ、これはぴんときてしまった。

クドカンドラマには伝統の「息してなかった!」という台詞、遂にここで登場!!息してなかったマニアの僕、歓喜。今回はちょっと変則的で治五郎先生の「息しとるかね?」からの四三の「しとりませんでした!」という熊本弁ver.。あと、野口くんの「明けまして」を遮る治五郎先生の「うるさーい!」もめちゃ面白い、クドカンがずっとやり続けてる笑いの1つ、遮り。

今回はもう岸清一(岩松了)の可愛らしさが全開だった。ムッとしてる岩松さんも最高なんだけど、やっぱり気の良いおじさんがぴったりだ。

20話「恋の片道切符」
1920年、つまりちょうど100年前にあたる時代のベルギー・アントワープオリンピックの模様が描かれる回。三島弥彦との再会もトピックスだがこの回の主役は野口源三郎(永山絢斗)だろう。選手団リーダーとして、記者たちから罵声を浴びせられながらも、ひたすら堂々と結果を述べる姿。「突出はしてないけど満遍なくできる」とイジられてしまったけれど、彼は明らかに突出した想いでこの大会に望んでいた。あえて、現地での競技映像をクールな質感に抑え、当時の我々が知り得た情報のようの再現してある演出も相まって、そのシリアスな状況を見事に立ち上げていた。

肋木/スウェーデン体操の時代ではないと悟り、自らの古さを静かに認めて体協を去る永井先生という、移ろいゆく時代に取り残される者の姿も。これは近現代大河ドラマならではの人間描写であると思った。肋木にぶらさりながら語らう永井と治五郎、去りゆく者に対しても優しい幕引き、美しい。

トップ画は、スヤの写真を見てかわいいリアクションをする治五郎先生。

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