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3月のいだてん

将棋マンガっぽい感じのタイトルになったけれど、これはオリムピック噺である。いやはやとんでもないことが起こってしまった。コカイン吸引で足袋屋退場である。瀧、売れすぎたんやお前は、、

第9話「さらばシベリア鉄道」
日本人初のオリンピック参加が決定し、1912年の開催地・ストックホルムを目指した17日間の長旅を描いた回。この回から大根仁監督が演出として参加。今のところこの1回のみだけど、タイトルが大瀧詠一(or 太田裕美)の楽曲であることなど、偶然ながら「モテキ」っぽいなぁ、となってしまう。出演者陣も、伊藤博文役で浜野健太、治五郎先生を頑なにストックホルムに行かせない役人役でオクイシュージ(今年夏にはthe pillows山中さわお原作の映画も監督するんですってね!)と、とても大根監督なラインナップ。

内容としても、中心はシベリア鉄道内でのシットコムといった趣で。観てるこっちとして面白いのだけど、だんだんと長旅でイライラしてくる四三を見事に捉えていた。そんな感情に揉まれながら、だんだんと弥彦との関係が深まっていく様子も楽しかった。最後の、TNGダンスをうら若き乙女のように見る四三のリアクションったら!そして生田斗真の顔のうるささよ。「うぬぼれ刑事」でも穴井貴一(矢作兼)に言及されてたけど、顔の情報量が多いんだよな。つくづくコメディ映えする役者である。

第10話「真夏の夜の夢」
Yumingなのかシェイクスピアなのかニコ動カルチャーなのか。どれかと問われれば、弥彦と四三がベッドのうえでくんずほぐれつになるシーンがあること考慮すれば3番目に挙げたやつなのかな、と思わなくもないのだけれど。ともかくとして、ストックホルムに到着後の激動の数日間を描いた回。異例づくめの大河とは何度も謳われてきたが、遂にほとんどシーンがヨーロッパであり、画面には外国人がいっぱい出てくる。異質すぎる回である。

選手がそれぞれに抱える葛藤、それは弥彦の嫉妬であったり、四三の不安感であったりするのだけど、それぞれがそれぞれに発破をかけながら支え合うシーンにはグッとくるものがあった。肺を患い、あとが無いことを自覚しながら、オリンピックを観ることを夢みる大森監督(竹野内豊)の思いも絡めながら、徐々に一つになっていく選手団。そこに現れし治五郎先生(役所広司)の安心感よ!

あと四三の日課に欠かせない「水」が、スウェーデン語で「Vatten=ばってん」なのも奇跡的な合致だ。言語的な偶然をも物語を加速させていくじゃないか~。細かいところにも神様が宿っているドラマである。

第11話「百年の孤独」
前回のラストで巻き起こったフラッグの表記論争、「日本」なのか「JAPAN」なのか。治五郎先生の「双方一理!」の声で「NIPPON」が取られたわけだけど、「NIHON」じゃないんだな~。てかこの表記、観た事ないな。調べたら「NIPPON」って読み方のほうがルーツにあるのね。どちらかというとポップな響きだから、オフィシャルじゃないのかと思ってた。こちらのNHKの記事によると、1934年に政府が国名を「にっぽん」に統一しようと考えたらしいのだけど採択されないまま今に至っているとのこと。

今回は三島弥彦のオリンピック挑戦が軸の回。「プレッシャー」という概念が四三に持ち込まれて、咀嚼し、打ち勝つという。ここまでだいぶ自然派な彼だけど、実は理詰めな男なのだとも分かる。そして弥彦の潔いリタイヤも。「悔いはない」という言葉を聞けたらそりゃあね。僕がスポーツに疎いというか避けてるのは、勝ち負けを言われるからで。こういう風に、自分との闘いであり、そして自分が満足できるかを中心に置いてくれたらもっと興味を持てたんだろうなぁと。体育という授業そのものに関してもね。

第12話「太陽がいっぱい」
シリーズ屈指の静かな幕開けから、四三のこれまでの道のりを回想するという節目らしき部分。足袋屋退場の影響で生まれたような気がしないでもないこのダイジェストの時間も見事に作品を勢いづけてくれていた。

北欧の自然を捉えたマラソンシーンとともに、美濃部孝蔵(森山未來)が「富久」を覚えながら駆け抜けるシーンがオーバーラップする演出、冴え渡りすぎている。これ、クドカンはどういう風に脚本上で表現してるんだろうか。美しくドリーミーな音楽も相まって、とても不思議で夢心地な回だった。ちび四三をここで再び用いて、いまの四三を導く役割を果たさせるとは、、感服する。

コメディ部分はスヤさんの大はしゃぎ(綾瀬はるかが綾瀬はるかを全うしまくっていてグッとくる)くらいで、だいぶシリアスに振り切った局面。伝達の技術もない1912年、生死すらも定かでない状況を、それぞれの深刻な表情が

第13話「復活」
ストックホルム編、完結の回。リタイヤまでのマラソンコースを現場検証する。熱射病になり、コースを外れたことで、運よく民家の人に助けられた四三。コースを正しく走ったが、意識不明となり死亡してしまったポルトガルの選手・ラザロ a.k.a カーペンター。四三が足袋をプレゼントし、近い境遇で分かり合った友と運命を分かつという、信じられないほどのドラマが史実として残ってある。そして、何より大森監督(竹野内豊)の史。この2つの死別の悲しみこそが、恐らく次回以降の新章へと続いていくのだろう。

美川くん(勝地涼)がしばらく観ないうちにすっかりキャラが仕上がってしまっていたことに気を取られちゃうけれど、美濃部の初高座もこの回のトピックス。泥酔しておかしくなってしまった芝居、森山未來うますぎるんだよな。目つきが「怒り」の時と同じだったよ。最初は失態を晒しかけるも、段々と何かが乗り移ったかのように調子を上げていく場面、ここでも音楽の効果が素晴らしかった。しかし、悲しいことに、播磨屋主人は出てこないけれどこしらえた着物は出てくる、という。うーむ、完全版が観たい!

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