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オフィス3◯◯「私の恋人」@大野城まどかぴあ

渡辺えり主宰のオフィス3◯◯(さんじゅうまる、と読む)の新作公演が大野城で上演された。のん a.k.a 能年玲奈の初舞台である。昨年はミュージシャンとして初めて福岡の地に降り立った彼女を見届けた僕としては、初舞台初福岡を見逃さないわけには行かず、初日のマチネを観に行くことに。遂に、芝居をするのんの姿を目撃することができるのです。何年待ちわびたことか!

上田岳弘が2015年に発表した三島由紀夫賞受賞作「私の恋人」を原作として、渡辺えりが作・演出を担当した音楽劇である本作。小日向文世、のん、渡辺えりというファニーな表情が得意なキャスティングならばどたばた&ほっこりホームコメディをコテコテに作りそうなのに、内容はスピリチュアルSFラブストーリーと呼べるような、壮大で観念的で異様な作品だった。

10万年前のシリア、1945年のドイツ、2019年の日本、同一の“意識”を引き継ぎ続けている(と語っている)人物が、まだ出会っていない「恋人」を探そうとする、、という、かなりぶっ飛んだあらすじで。<前前前世から僕は君を探しはじめたよ>っつー話なんですけど、この作品での「君」はまるでディストピアの権化のようで、出会えそうで出会えず、すれ違い続ける。

原作は、人類史とディストピア観が交錯するような思想文学とも称されているような作品らしく(未読なんです、、)、要素はある程度引き継ぎつつ、音楽劇としてポップに、そして確実に笑えるものに仕上げてあって。渡辺えりの作家としての一面ってこんなに奇妙で底知れないものなのだな、と!やや絶望的な内容を薄めずに違うエネルギーを注入してショーアップしてた。

そんな、世界も時空も自在の切り替わる物語ゆえ、メインキャスト3人で性別不問に30役を演じるという事態に。1人の人物に憑依しきるのんではなかったけれど、おかげで一気に大量の表情を目撃することができた。同級生を恫喝する女子高生や、死んでしまった猫も良かったけれど、やっぱりカンガルー肉を食うアボリジニや、強制収容所を取り仕切る男の姿も良かった!

やや動きがぎこちない場面とか、舌足らずなところもあったけれど、のんが全身で演技を楽しんでいるところが観れて本当に良かった。大好きな歌も歌い、ギターも弾き、これってのんさん全部乗せじゃん!って思ったり。来年には遂にスクリーン復帰も果たす。劇中でも繰り返し語られた「令和の時代」というワードは、彼女が新たに生まれ直すのに必至な時代なのだろう。

#舞台鑑賞 #舞台日記 #舞台感想 #コンテンツ会議 #イベントレポ #のん #能年玲奈 #私の恋人

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