チャネリング3

※※※

その男と現実で会ったのは通勤途中のことだ。

ふり絞るような蝉の声が鳴り響く歩道を自転車を鳴らしながら漕いでいく。
ところどころ凸凹と盛り上がり、さらに少し坂道を汗を垂らしながらじりじり進む。
横断歩道に差し掛かり、自転車を降りる。
ほっと少し息を吐き、横断歩道を渡ろうとしたときだった。

横断歩道のちょうど真ん中に男が一人立っている。

黒いシャツにくたびれたジーンズ。
顔を見るとアーモンド形の少し赤を含む茶色い瞳と目が合う。

「あ」

信号がちかちか点滅し、赤へと変わる。
もう、横断歩道を渡ることなど頭になかった。

白と黒の帯。あれほどうるさかった蝉の声が遠くなる。車の走行音も、うなり声をあげる街も、人の声も何もかも収束されて、遠くなっていく。

目の前には男と女の世界しかない。

男は左手をゆっくりと持ち上げ、手のひらをこちらに差し出そうとした。

女がそれに答えて一歩踏み出そうとした。


その時だった。

男と純の間を赤いスポーツカーがうなりながら走っていく。

ゆうに60キロは出ていたであろうその車はそのままスピードを緩めずに走り去っていった。

瞬きする間もなかったはずだ。
純は男をずっと見ていたはずだ。

しかし、男は忽然とその場から姿を消していた。


そのまま1台、2台、3台と車が通りすぎ、やっと我に返った純は、隣で自転車が横倒れになっていることに気づいた。

ため息をつく。

純は自転車を起き上がらせると、赤になった信号を睨んだ。

※※※


「純さんってさ彼氏とかいるの?」

正規職員に頼まれた事務作業を行っているとき、その頼んだ正規職員がマグカップを片手に効いてきた。

化粧のにおい、口から香るコーヒーのにおい。様々なにおいが混ざった中に、その女独特の石油のような嫌なにおいがした。

数字を枠に一つ打ち込むと、純は女に向き合う。もともと一つのことしかできない不器用なたちなのだ。

「いませんよ」

能面のような表情のまま口だけを動かし答えた。
「へぇ、そうなんだ、紹介しようか」

どうせ、そんな気などないくせに、なぜこんなことで時間を使わなければいけないのだ。
心の中で舌打ちをした。

この女が以前ほかの同僚に男友達を紹介し、同僚と男友達が付き合ったときに、この女は男友達を寝取ったことは有名な話だ。

同僚はやめた。同僚も非正規職員であったし、もともと雇用期限がある職場だったので誰も気にしなかった。純もそんな仲良くしてたわけではなかったが、人伝いに話を聞いたときに嫌悪感を覚えた。

実のところはうわさでしかしらない。
しかし同僚が泣いてたことは知っている。

「いいです。そういうの興味ないので」

純が断ると、そう、じゃ、それ昼までに終わらせてね。
と興味なさげに自席に戻っていった。

しかし彼女は仕事ができるのだ。自分と違って。
彼女の後姿を横目で見ながら純は奥歯を噛みしめた。




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しゃっぽ

イラスト、小説、漫画様々書いてます。腐ってるので、同性愛が苦手な方は注意してください。 オリジナルを載せていきます。もしよかったらネタを下されば何でも書かせていただきます。 よろしくお願いします。続き物でも続きとか考えてもらえれば書きますのでよろしくお願いします。

№432とちゃねりんぐ

宇宙とつながりたいとは思いませんか。ちゃねりんんぐを通して宇宙の神秘に触れ、素晴らしい人生を引き寄せましょう。 宇宙とつながりを持った女性が素晴らしい人生を叶える話。
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