嫌気とゼミっぽさ

嫌気がさすことと「ゼミっぽさ」

最近、Share Studyについてほとんど何も進められることなく(ADVENT CALLENDER 2019の準備は順調)、ひたすらバイトと読書と論文執筆にエネルギーが割かれている。

とにかく、インターネットに何か書く気が起こらない。理由はさまざまだが、二つあげる。一つは、知識・経験が広がった結果、自分自身が問題意識を掲げることに対する対処がメディアを介しては起こりえない、むしろメディアを介して「悪化」する現象(主にTwitter)に嫌気が指していること。もう一つは、かといって今の自分自身の能力で何か特別に良い影響・変化をもたらし、かつそれに対する持続的な枠組みを作りえないことを自覚していること。

つまり、前者はメディアに対する嫌気、後者は自分に対する嫌気である。

かといって何もしないのもやっぱり面白くないので、何を積み重ねることができるのかについて考えている(同時にそれは「やらないこと」を見定めることでもある)。今一つ思い浮かんでいることは「大学」について学ぶ・考えるのではなく、「ゼミ」を拡張することだ。

基本的に今の「大学」という枠組みは近代社会とともに出来上がっていったものである。つまり、大学とは巨大な権力構造を持っているものでもある。ゆえに、それを良くするという枠組みを作るのはとても難しい。Share Studyを立ち上げて以来、さまざまな場所に飛び込んできたがどこも上手くいっていない、なんらかの壁にぶち当たっていることや、めんどくさい人間関係に縛られていくことを知った。端的に、そうした枠組みに縛られることは不自由だと思うし、そうした事情を知った上で積極的に介入したいかと言われれば、僕はそうはしたいと思わない。けど、何かオルタナティブはあると良いと考え作り始めたのがShare Studyだった。

けど、前述してきた通り、とにもかくにも嫌気が指している。ましてや、これまで好きに学んできたところから、「研究成果」を求めねばならない身になってしまった。

大学院に入ると、学部生の頃よりも好きに勉強できなくなってしまったよ。

と寂しげに言っていた先輩のことばを最近、よく思い出している。本当にその通りだったので、このことはいつかShare Studyで伝えられるようにしておきたいと思う。

話が少し逸れてしまったが、「ゼミ」という響きは僕は今でもやはり好きで、何かそこには「(突き詰めて)学ぶ・考えることの原型」があるように思う。今のメディアの言論空間に漂うような「情を刺激する内輪感」ではなく、一定の主体性を持ちつつ、一定の共通の関心の中、「これってどういうことなのだろう」「わたしはこう考えます」ということを素直に放てる関係性が「ゼミっぽさ」にはあると思う。

こうした「ゼミっぽい」関係はとりわけ、大学という空間に限定されるわけではないはずだ。例えば、さっきの先輩は僕とは異なる専門であるが、共通の議論サークルで知り合った方で、定期的に相談をさせてもらっていた。めちゃくちゃ私的なことであるが、僕がつくば市に来てから通い続けている美容室でも、毎度毎度、「ゼミっぽい」語りを展開し続けている。

どのようにしてこうした「ゼミっぽい」話ができるようになるのだろうか。今一度、言語化する価値があるように僕は思っている。

でも、単にこの「ゼミっぽさ」をお行儀の良いものに回収しないようにしたい。というのも、単に「学術的な話題」を話すだけとか、「教育のために」とかいったなんらかの条件付け・制約が働いていることに自覚的であるべきだからだ。つまり、「ゼミっぽさ」を探求することは「ゼミ」そのものの理想形を探求したいわけではない。「ゼミっぽい」関係を介してネットワーク-コミュニティ化されていく共有性があることや、またその批評的側面も併せ持つものにしたいからだ。

大学の核は「ゼミ(ラボ)」によって構成されているといっても過言ではない。一方、今や「大学」は場所性が限定化されているが、「ゼミ」とは人と人の関係の束によって成り立つものである。さらに、「ゼミ」はさまざまな学生が折り重なる象徴的関係性を持っている。つまり、一定程度、「ゼミとは何か」がゆるやかに共有されている記号だということだ。そこに、何か「研究・批評」を行う上での重要な要素があるように思えてならない。

とまぁ、一応、そんなことを考えてはいるのだが、毎日頭から離れないのは自分の研究のことである。お盆に入って『新記号論 脳とメディアが出会うとき』を読んだ。社会記号論系言語人類学をメインに学んでいた自分としては、「記号の正逆ピラミッド」を介して言語とメディアの接点となるというヒントをもらってめちゃくちゃ面白かった。

が、こうした本ばかりではなく、いい加減、訳でもいいから原著を読み進めるようにしたいなと思う今日この頃。ではでは!

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