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地域志向教育実習プログラムSUIJI-SLPの記事編集を振り返って

約半年、編集のお手伝いをしながら作り上げてきた記事群をついに公開できた…!

高知大学の地域志向教育実習プログラム「SUIJI-SLP(スイジ)」に参加した同大学農学系の小林くん(@nougakuto_tetsu)から持ちかけられ、始まった記事がこちら。

「書いてみたい!」という声かけからはじまり、紆余曲折を経ながらも最後まで記事として出来上がったことだけで個人的にはとてもうれしい。

遠隔で連絡を取りながら、面と面で向き合っての校正ができないのは思っていた以上に大変だった。僕も編集・校正に手伝うのに慣れているわけではない、小林くんもまとまった記事を書くだけでなくインタビューするのも初めてという状況だった。

とにかく、まずは小林くんお疲れ様!そして、インタビュー取材に受けてくださった皆様にもお礼申し上げます。

SUIJIにおける「言語化」と「検証」における主張のポイント

最後の記事では、インタビューや自身の経験を振り返りながら、「学生」が地域で活動を行う上での「地域課題から離れる“ふまじめさ”」の必要性があるのではという意見を発してくれました。

下記のツイートでも言及したように、『まちづくりのエスノグラフィ 《つくば》を織り合わせる人類学的実践』や『新復興論』を引き合いに論じてくれている。

小松(2018)は福島県いわき市での自身の地域作りの経験から、現実のリアリティに縛り付けられないために、「外部、未来、ふまじめ」が重要であると述べ、早川(2018)は学生は外部者性を利用して、「あえて」知らないふりをして、「しがらみ」をほどく役割を担っていると述べている。
日本の地方、特に農山村は人口が減少し、耕作放棄地も増加している。それは実習に行くと、圧倒的なリアリティでそれを突き付けられる。それらは深刻な問題である。それこそ、村がなくなるほどのものだ。しかし、私たち学生がその課題のリアリティに縛られすぎるのは違うのではないか。それらを「あえて」知らない振りをして、ほかのもっと面白い地域の魅力を探せるのが、私たち学生の良いところだと私は思う。
上の引用に重ねると、大学生は「外部」であり、「未来」であるのだから。そして、ふまじめさとは、各個人が地域課題の一般論に縛られずに自分の興味のままに掘り下げていくことである。それは自分自身のテーマを持ち掘り下げるという、フィールドワークの面白さと重なる。つまり、フィールドワークを真面目にやることが、SUIJI-SLPの特色を生かす学生に対する教育であり、長い年月で見たときに地域貢献につながることと考える。

僕も今の日本における状況の中で、学生による地域課題の解決がすぐさまなされるとはとても思えない。だからこそ、小林くんの“ふまじめ”な主張は「学生らしさを失わずに学びを深めていく」という“まじめ”な主張ともリンクしていく点で重要な示唆があるのではないかと思う。

願わくば、高知大学やSUIJIプログラムをはじめとした地域実習に関わる学生や教員、もしくは諸地域の方々にも、それぞれの立場から今を振り返りつつこれからに向けたものを生み出す一つのきっかけになればうれしい。

国や地域による取組の事情

記事にははっきりと書かれていないが、一緒に記事の方針を練りながら小林くんが話してくれたことがある。SUIJIで赴くインドネシアでは、むしろ地域課題解決に向けた専門化が進んでいるらしい。学生もプロフェッショナルになることに向けて取組をしっかりと行っていると。

新興国で「大学」に入学できるだけの能力と財政的基盤を持っている学生だからこそ、単に「地域で活動します」というだけではないプロフェッショナルとして国を興していく姿勢を持っているからなのかもしれない。その点、またいずれ話を伺ってみたい。

日本では「地方創生」という政策が進行してきた2010年代だったが、先日、「地方創生をやめてくれた良かった」!?というタイトルが付けられた(自治体)行政学を専門とする教授のインタビュー記事が眼に飛び込んできた。

課題は山積みであることは間違いないものの、ミクロな地域経済の新興をはじめとしたものは民間の活動が肝であることが述べられている。

少しばかり記事での発言を抜粋する。

政府ができることは、生活を成り立たせるために、税金を取ってきて公共サービスを行ったり、災害の復興をしたり、ということです。よく公共サービスをしたからといって地域経済が活性化するのか、と聞く人がいますけれども、公共サービスを行って地域経済が活性化するかどうかは、行政としてはいかんともしがたい。地域活性化は起業家とか、資本主義市場経済が決めることなのですから。自治体も含め政府部門は、経済ではなくて、人々の生活をどう維持するかを考えるのが仕事です。
いや、危機感を持つ・持たないは無関係です。市場メカニズムは、人々の危機感とか頑張りとかでどうにかなるものではありません。多くの人は、幻想を抱いているのではないでしょうか。頑張ればどうにかなる、報われるなどと、市場はそんなに甘い世界ではありません。
そのために行政が何ができるかを考えれば、所得を保障すること、公共サービスをきちんとすることでしょう。あと「頑張れ」とか「努力すればなんとかなる」とか空虚な精神論を早くやめるべきだと思います。政策を作るような立場の人間が、自分は頑張ってきたと思っているのだとしたら、それこそが政策失敗の素と言えます。頑張れば成功するわけではないのですから。

詳しくは記事で確認してほしい。

いわゆる「地域課題」の解決は「学生」がちょっと頑張ったからといってどうにかなるようなものではない、はずだ。民間での活動を志望する者にとっては、実習をはじめとした機会を通じて組織やプロジェクト単位での取組による学びをしていくことは重要だと思う。

が、「地域課題“解決”」を学生ができるかどうかはやはり別問題だろう。むしろ、学生がすべきことは「学び(驚きや問いの発見)」の練度を高めていくことだろうし、それが本分でもあるはずだ。

特に、具体的なフィールドで活動するからこそ、「具体と抽象」の行き来をする中で問いを深め、視点を話しつつも、実際の現場と向き合っていくスキルも重要のはずだ。

例えば、
・地域における課題をフィールドを通して住民の方から見聞きしたが、実際のところその課題はどのような背景のもと起きているものなのか
・個人的な悩みや問題ではなく「地域課題」なのか
・そもそも「地域課題」とは誰がどのように言及して成り立っているのか etc.
などだ。

地域における取組に関する知識や経験が「研究」としても積み重なっていくだろうと思う。フィールドで取り組む人と調査・分析をする人、それぞれの能力がより活かし合えるような環境になれば良いなと思う。

ささやかながら、Share Studyの運営を介して、僕も学びを続けられればと思うし、それぞれの「現場」と向き合う人の声を聞き取っていきたい。

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