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Study Townプロジェクト「プレシェアスタゼミ」を終えて―概要と実施背景

2018年度に「人と知のネットワーク化プロジェクト」として「Share Studies」をShare Study内に設けた。Share StudiesではShare Studyに関わりを持った方を中心に「ポートフォリオ」と「テーマ記事(所属する組織や活動についての紹介)」を書いてもらっている。

Share StudiesはShare Studyサイト内で情報発信を可能にすること、言うなれば「オープン化」をする取り組みで、Share Studyの中でも恒久的なものにしていくプロジェクトだ。

Share Studiesの取り組みを持続・発展させていくためにもう一つ設けたのが「Study Town」という取り組みになる。このサブプロジェクトをひと言で言えば「地域における学び合い文化の育成プロジェクト」だ。

基本的にShare Studyは昨今の学問や大学における問題意識から立ち上げ、運営を行ってきた。「大学」を「学問」「地域」「教育」といった観点からこれまでを学び、これからを考えようとした「ACADEMIC CAMP」を行ったのもその姿勢を表明するためというわけだ。

ACADEMIC CAMPを実施するために全国各地を回って「直接」話しをしてきた際に、「なぜ“地域”なのか?」ということを、アカデミックに寄った方々に問われてきた。「学問」や「教育」と言えど、それを考えることはどこか抽象的なものに陥りがちになる。「地域」というと、そこには「場所性」があり、どこかに住む「人びと」がおり、言うなれば人と人が入り乱れてきたという「連続性」「時間性」がある。

だから、単に抽象的なことばかりやそれぞれの主張を押し通すために「大学」を学問や教育の観点から捉えるのではなく、ある意味では第三項になる地域を入れるようにした。ここでいう「地域」とは、「イエ↔ローカル↔ナショナル↔ナショナル」なダイナミックな領域を指す。それぞれのレベルは独立して存在しているというより、現実的には多重的に存在していると捉えるのがいい。地域ということで、昨今の人口減少や情報技術の発展などが絡んだ大きく「経済」にも言及しやすくなる。

ACADEMIC CAMPでは大なり小なり、そのような枠組みで大きな問題提起をしようとしたわけだが、「学問」「地域」「教育」という観点から「大学」を考えるというのはかなりダイナミックな視点の行き来(知識情報経験の参照 etc.)をすることが必要で、なかなか思うように提起しようとした問題意識が共有できなかったように感じた。

そこで、冒頭の「人と知のネットワーク化プロジェクト―Share Studies」と「地域における学び合い文化の育成プロジェクト―Study Town」の取り組みを日常の領域に落とし込んで実施することを狙いとした取り組みをはじめた。
(というか、ACADEMIC CAMPを実施した先にはこうしたことを見据えていたのだけど、その場で共有しきれなかったというのが実情…)

Study Townとシェアスタゼミとは

Study Townとは、各地域やその周辺に住む人を中心に「学術的研究の仕組みや環境を改善し、その価値を向上」させることを目的としたシェアスタゼミ(研究会)を開き、主に研究職関連を志望する若手による交流の仕組み化と学び合いの熟成を目指す取り組みだ。

もっとざっくり言えば、各地域で勉強・研究会を開いて、情報知識の共有からディスカッションを継続的に行い、またそれを地域において交流を促す取り組みにつなげたり、できればそうした活動を研究に昇華させる取り組みである。

なぜ若手なのかと言えば、研究者やその関連職の人は基本的に何かしらの立場についてしまっていて柔軟な動きが難しいし、単純に業務に忙しいからだ。といっても大学院生になって改めて感じるが、院生も「研究成果を出さなければ…」とか、修士なら2年間の間にキャリア選択を決めていかなければならないなどプレッシャーが大きいのだけど。みんな忙しいが、Share Studyでは「これから」に向けての取り組みなので、できれば知識情報経験を次世代に向けてつなぐための回路をつくって、学術的環境の風通しをちょっとでもよくできればという思いで運営している。であるから、やはりそこは「若手」中心であるように意識している。

Study Townは代表である僕(としちる)が住んでいる「つくば」でまずは立ち上げた(19年3月現在、仙台と東京での準備を進めている)。今は5名のメンバーが参加している。このプロジェクトは2019年度から2020年度の2年間の期間限定で実施するものにした。惰性的に続けるのではなく、きちんと目標を共有しつつ、取り組みを続けていきたいからだ。取り組みを行っていくにあたって、2019年1月から3月は「プレシェアスタゼミ」として、試験的に研究会を開催することにし、計4回のゼミ1回のイベントを行った。下記がその内容である。

1/8(火)ゼミ①:Study Townの取組・目標について
1/15(火)ゼミ②:ILCの今後と科学と社会の認識について
2/5(火)Study Talk LIVE―まちづくりのエスノグラフィ出版記念イベント
3/5(火)ゼミ③:Share Studyの研究について
3/21(木)ゼミ④:今後の科学コミュニケーションのあり方について

初回と3回目は「Study Town」の取り組みについて僕からの発表という名の共有とディスカッションを行っていかに行い、いかに研究に昇華させていきたいかについて報告した。2回目と4回目は参加者の一人であるゆーみるしーさんがILCの設置に関する議論と文科省資料にあがった「今後の科学コミュニケーションのあり方について」を題材にディスカッションをした。

どの会も、5~6名のメンバーが集まって90分ほどのゼミを行い、かなり良好なディスカッションが続けられていると感じている。話した内容やコメント等は「Scrapbox」を介して共有するようにしているが、これも良好な様子。Share Studyはかなり多角的に展開しているので「わかりにくい」、「ツールが多いので整理してほしい」という声ももらっていて、こうした忌憚のない意見も上がってうれしい。代表としてもう少し、分かりやすい、使いやすいものにしていきたいと思っている。

大学を越えたゼミ的学び合い(≒研究会)の蓄積と発信を目指して

Share Studyでは「人からはじまる学問の見える化」を初期理念として掲げ、「学び合いの文化」を熟成を目指す活動として位置づけている。そのためにも、いかにアカデミックなものの面白みや意義、そして同時に負の側面も含めて共有していけるかが鍵となる。単にWeb上で情報を発信するのではなく、あくまでも「フェイス・トゥ・フェイス」での出会いとコミュニケーションを重視しているのもそのためだ。

Webメディア『Share Study』はStudy Townで志向するようなシェアスタゼミから研究成果を生み出し、社会的にも実装されていくに至るまでの入り口にしかすぎない。

そして、ACADEMIC CAMPでも議論したように今や大学を取り巻く実情は(正確には昔から)社会的なものとの結びつきとは不可分でもある。つまり、情報技術の発展や政治経済的制度、当然、大衆社会的なものとの距離感を無視することはできないということだ。

なので、できればShare Study的な理念を持った活動が外に広まっていくように努力したい。そのためにも、中長期的にも5年後・10年後を見据えた継続的な活動が必要だろう。これまでShare Studyを運営してきた反省を活かしつつ、2019年度も着実に取り組みを進めていきたい。

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