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在職老齢年金の支給停止額に国民年金(基礎年金)分は含まれない

こんちは!副業社労士まさゆきです。
「在職老齢年金が貰えないから65歳からは働かない」良く聞く言葉です。人生の選択は色々ですが、正確な情報でご判断ください。

《解りやすい在職老齢年金の計算式》
会社に勤務しながら受給する老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。65歳以上の在職老齢年金の場合、「総報酬月額相当分+厚生老齢年金(以下「厚生年金」と記します)」の額が50万円(2024年度の場合)を超えた場合、超えた部分の1/2が支給停止されます。

(例)総報酬月額相当分が月45万で、厚生年金を月15万円受給している人は
   {(15万円+45万円)―50万円}×1/2=5万円
   が支給停止されます。よって、受取れるのは50万円です。

「総報酬月額相当分」とは?過去1年間の「標準報酬月額の平均額」と「標準賞与額÷12」を合算したものです。

似た言葉が多くて混乱しますね。「標準報酬月額」も「標準賞与額」も社会保険料を決定する基準額です。「標準賞与額=ボーナス」でほぼ間違いないですが、「標準報酬月額」は補足します。

標準報酬月額は下記合計額を添付標準報酬月額表(協会けんぽ東京;令和5年分)に当てはめた額です。
①基本給②残業代③その他毎月貰う手当(住宅手当、家族手当、役職手当など)④通勤手当(6ヶ月で6万円なら月1万円)
r50213tokyo.pdf (kyoukaikenpo.or.jp)

標準報酬月額≒給与明細の額だと思う人が殆どですが、④が入るので多くなります。注意して下さい。

《年金としてカウントするのは厚生年金だけ》
在職老齢年金は厚生年金です。国民年金(基礎年金)は在職老齢年金の支給停止額(以下「支給停止額」)の50万に含まれず、満額受給出来ます!誤解している人が多いので注意して下さい。
毎年送付される「年金定期便」を見てください。年金見込額が「基礎年金」と「厚生年金」に分かれています。ざっくり言えば、年金見込額が月16万円なら、「基礎年金6万」「厚生年金10万」程度、この「基礎年金6万円」は満額受給できます。「総報酬月額相当分」と合算するのは10万円だけです。

企業独自の「企業年金」も在職老齢年金と無関係で全額貰えます。ただ、「企業年金基金の代行部分」は在職老齢年金に含まれます。ややこしいですねえ…年金定期便を確認しましょう。判らなければ、会社の人事部か、年金事務所の年金相談で教えてもらいましょう。

《支給停止額50万円を超えるケースは少ない》
厚生年金は支給停止額50万を気にする必要がある程の金額貰えるの?残念ながらそんなに気にする必要はないかも…

三菱UFJ信託銀行「厚生年金はいくらもらえる?老後の年金受給額の早見表や計算方法を解説」によると、「標準報酬月額60万円で40年間働いた時の厚生年金受給額は月14万円、厚生年金の掛金(保険料)には上限があり、標準報酬月額65万以上で上限なので、14万円以上厚生年金を受給出来る可能性は“ほぼ”ありません。

厚生年金はいくらもらえる?老後の年金受給額の早見表や計算方法を解説|気になるお金のアレコレ〜老後の資産形成・相続に向けて〜三菱UFJ信託銀行 (mufg.jp)

そうなると支給停止額50万になる総報酬月額相当分は36万円、65歳以上で月収36万以上の人は少ないのでは?調べてみました。
厚労省年金局調査によると、2018年度末の65歳以上在職老齢年金受給者の内、支給停止対象者は17%とやはり少ない。


在職老齢年金の支給停止を気にする必要はなく、支給停止を気にせず稼ぐ方が得、と私は思います。

《在職老齢年金支給停止制度は無くなるか、大幅に縮小すると私は思う》
2019年厚労省年金局「在職老齢年金の見直し」(上記表も同資料から抜粋)は制度見直し案を検討しています。

Microsoft PowerPoint - 【資料1】在職老齢年金制度の見直し (mhlw.go.jp)

資料は「在職老齢年金支給停止制度は①就業者人口減少が見込まれる中、高齢者の働く意欲を削ぎ②高齢者の働き方が現役世代と変わらない実態に合致していない」とし、2つの見直し案を提示しています。
1つは「支給停止額62万円への引上げ」案です。支給停止対象者は9%に減ります。もう1案は「支給停止制度廃止」です。
私の意見は「高所得者からの所得再分配の観点から支給停止制度は残すが、高齢者の働き甲斐の観点から支給停止額は高く設定する(月80万程度)」です。

ではまた次回

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