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パート女性の働き方と「社会保険適用拡大」「雇用保険」「最低賃金引上げ」と「103万の壁」「106万の壁」「130万の壁」の関係

こんちは!副業社労士まさゆきです。
現在、社会保険料適用拡大が段階的に拡大されています。この拡大が「雇用保険」「最低賃金」「○○の壁」と相まってパート女性の働き方に影響を与えます。具体的には以下。

《社会保険適用拡大で年収の壁は「130万の壁」から「106万の壁」へ》
年収130万を超えると健康保険料・厚生年金保険料支払義務が発生します。保険料は年収の約15%です。年収131万であれば19.6万円の社会保険料、130万以内なら社会保険料支払義務はありません(この壁には交通費も加えて計算する必要があります)。
「130万の壁」は週30時間以上(正社員の3/4以上)働く人が対象ですが、社会保険適用拡大により、一定規模以上の会社に勤め、下記条件を全て満たす労働者に社会保険料の支払義務が新たに発生します。「106万の壁」です。

①    週20時間以上働いている
②    月収88,000円以上(年収106万以上)
③    2ヵ月を超えて雇用される(見込)
④    昼間の学生でない

会社規模は、2022年10月に「101人以上の会社」に拡がり、更に、2024年10月以降「51人以上の会社」に拡大され、「130万の壁」は徐々に「106万の壁」に移行します。

「令和3年経済財政白書」より

女性就業者における2024年10月の拡大対象者は20万人(表青丸)、多くはパートで働く主婦ですが、多くは「週20時間未満、給与月88,000円未満に抑え社会保険適用除外になる」働き方を選ぶでしょう。とはいえ収入が減るのは痛いので働き方を工夫します。

社会保険加入要件は“1つの会社のみの働き方”で判断します。2つの派遣会社で働き、両社とも「週20時間未満、給与月88,000円未満」なら社会保険加入は不要、今後のトレンドになるかも知れません(税金は合計して支払わなければなりませんので注意)。実際、社会保険料会社負担を避ける目的で「週2~3回勤務、最低賃金の時給、社会保険加入無」の派遣社員を求める企業も増えています。

《最低賃金引上げで雇用保険のみに加入することが難しくなる》
「社会保険には加入せず雇用保険だけ加入したい」雇用保険に加入するには週20時間以上働くことが必要なので、週20~30時間の範囲で働きます(上表赤枠365万人)。雇用保険料の労働者負担は給与の0.6%、月8万の給与なら480円払えば失業給付や0~2歳の子育て休業中の育児休業給付もあり、雇用保険へのニーズは高い(支給要件には注意ください)。
今までは「社会保険には加入せず雇用保険だけ加入」することは比較的容易でしたが、「社会保険適用拡大」「最低賃金引上げ」で難しくなってきています。

雇用保険加入には週20時間(月80時間)働く必要があります。社会保険適用拡大の「106万の壁」より月88,000円未満で働く必要があるため、
 88,000円÷80時間=時給1,100円未満
でなければなければなりません。

東京の最低賃金は時給1,113円、つまり東京で働く場合「雇用保険だけ加入する」ことは出来ません。最低賃金が時給1,100円を超えている地域は東京以外神奈川だけですが、人手不足で最低賃金では人を雇えない状況が続き「雇用保険と社会保険にセットで加入せざるを得ない」地域が拡大しています。
労働意欲を削ぐ懸念を解消するため、国は雇用保険加入条件を「週10時間以上」に緩和する検討を開始しました(11月22日日経朝刊)。今後の動向が注目されます。

《「103万の壁」と雇用保険、最低賃金の関係》
年収が103万を超えると配偶者控除・扶養控除から外れ課税対象となります。非課税の範囲で雇用保険加入が可能な時給はいくらでしょうか?

年収103万(月約85,800円)、雇用保険加入条件週80時間なので
 85,800円÷80時間=1,072円/時給(交通費は含まず)

最低賃金でこの範囲を超えるのは東京・神奈川、大阪が1,064円とギリギリ…「103万の壁」と「雇用保険加入」を両立する事も厳しくなりつつあります。「雇用保険加入要件の緩和」はこの点も考えてのことでしょう。

上記を見ると、何かぎくしゃくしています。社会保険適用拡大の目的は女性就業環境整備と推察しますが、パート女性の思いと掛け違っているのでは。

ではまた次回

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