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過去に縋る彼の事を私は大嫌いで

夢なら素直なのにな

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僕は夢で彼女に会い、覚める度に何度もそう思う。

夢なら告白も容易く出来るし彼女も素直にうんと頷いてくれる。

夢なら…夢なら…と

??:ねぇ!起きt…もう皆んな帰っt…

どこか遠くから僕への起こす声が聞こえる。

そうだ今僕は教室で寝ているんだ…そう気づくと半ば強制的に目を開く

〇〇:ん…な、何…

僕は目を擦って目の前の席に座っている女子へイヤホンを取って現状を聞く

彼女は遠藤さくら、僕と同じ高3でクラス、いや学校中で有名な美女の人気者だ

そんな僕と彼女の関係というと小学校から同じ学校ではあったものの…今ではただのクラスメイト、実質ほぼ他人だった。

遠藤:あ、やっと起きたー…もうみんな帰っちゃってよ〜?

窓を見ると日は落ちていて最終下校時間ギリギリだった。

〇〇:あ…え、そんな寝てたの…

遠藤:まぁ時計がこうなってるって事はそうなんでしょ笑

僕は急いで机から立ち荷物の整理を始める。

〇〇:やっばぃ…急がないと…

遠藤:ん?何か予定でもあった?

〇〇:塾…もう間に合わないかもだけど…

荷物を整理し終えると鞄を肩にかけ、塾へ向かおうと足の向きを変える。

その時僕の腕が、正確には制服が掴まれる。

遠藤:ちょっとくらい待ってよ。

〇〇:いや、だから塾なんです…

遠藤:知ってる、でも今日1日くらいよくない? たかが1日じゃん?笑

〇〇:受験生だし…僕等?遠藤さんは大丈夫なのかもだけどさ、僕は全然まだ第一志望校に届かないし…勉強しないと行けなくて…

そういうと遠藤さんは黙って下を見つめる。制服は離さずに

〇〇:だから…離してもらえません…?

遠藤:m…り…

〇〇:え…?

遠藤:無理…無理だから今日は

なぜ彼女がこれまで拒むのか良く分からないまま結局僕は塾を体調不良と嘘をつき休んだ。

〇〇:で…何ですか…?

遠藤:〇〇はさ…何で女子に敬語なの…?

〇〇:急ですね…敬語…

遠藤:いやさ笑 いつも女子の間で話題になってるんだよね、〇〇君は大人しくて頭も良いし…女子にも敬語で優しくて…✨ みたいな?笑

誤解だ、僕は確かに頭はこの学校ではある程度良いし授業も真面目に、休み時間に本を読むくらいには大人しい。
でも、女子に敬語なのは優しいとかじゃなくて怖いから、いや、遠くの存在でいて欲しいからだ。

〇〇:そんな事ないよ…全然

遠藤:いや、だってさ…高校から急に敬語になったしさ?急に距離置いたじゃん…?ずっと気になっててさ…

そう、先程は他人と言ったが高校までは遠藤は僕ともう1人の女子とのいつメンで仲良しだった。

〇〇:何で高3になって急に。

遠藤:だって、1人で帰っちゃうしさ…話しかけてもイヤホンでさ無視するじゃん

〇〇:それはごめん…なさい…

遠藤:素直でよろしい笑 ここ2年の無視を許してあげよう笑

彼女は僕への不信感が無くなったのか、制服から手を離して机に座る。

遠藤:はぁ〜…で?何でまだ敬語なの笑 あの時みたいに話そうよ笑

〇〇:いや…それは出来ない…です…

僕は唇を噛みながら答える。

遠藤:ふ〜ん…じゃ、もう夜遅いしさ久しぶりに帰らない?一緒に笑

〇〇:一緒にはちょっと…

遠藤:あ、じゃあたまたま同じ道の帰り道を同じタイミングで歩かない?笑

〇〇:まぁ…それなら…

僕は彼女に着いていく形で歩くことになった。

遠藤:はぁ…あ、手繋ぐのはダメ?笑

彼女は手を僕に差し出す。普通の学生なら大興奮のシチュエーションだ。

それでも僕は首を横に振り手をポケットに突っ込む。寒くもないのに

遠藤:まぁそうだよね…笑 ね、〇〇!見て見て!

彼女は急に何かを見つけたかのように子供のように指を刺して騒ぎ始める、その姿は無邪気で懐かしかった。

〇〇:わ…綺麗…

指の先には星空と街の明かりのダブルイルミネーションが広がっていた。
その景色は絵のように綺麗で、息を呑むほどだった。

僕等はしばらくその景色を見つめていた。

遠藤:ねぇ〇〇。

〇〇:何…?さく…

景色に見惚れすぎて遠藤呼びは忘れてしまっていた。

それくらい自然な姿、素直な姿に近づいていた。

遠藤:やっぱ、かっきー?


かっきー、賀喜遥香、先ほど挙げたもう1人のいつメンだ、彼女も小中学一緒で僕と家が近くよく一緒に帰っていた。

僕は彼女の事が中1くらいから好きだった。

素直で元気で笑顔が可愛い彼女のことが好きだった。

彼女は今天国にいる

3年前の卒業式
僕が彼女への思いを告白するために屋上へ呼んだばっかりに。
彼女はどこかの木で取った彼岸桜を片手に階段をかけ上がる中、どこの誰かも知らない保護者に紛れた愉快犯により刺殺された。 

それっきり僕は身近な友人を避けようと仲良い人間全員無視するようになった。

〇〇:まぁ…だったらどうするの…

遠藤:いや、どうも出来ないけどさ…私は嫌なんだよね…〇〇と普通に話したいし、友達だって自慢したいし、一緒に勉強会とかさ、遊園地行ったりとか、大学も同じ所目指してさ?シェアハウスとかして……それで…それで……

彼女の目には涙がたまりに溜まっていた。

溢れんばかりの気持ちと共に…

〇〇:でも…

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遠藤:分かってるよ…分かってたよ?かっきーが好きなんでしょ…?気づいてたし、気づいてないフリもしてたよ?でもさ、もうしょうがないじゃん…亡くなっちゃったんだしさ…私もチャンス欲しいよ…

分かってる〇〇が私の事を好きじゃないのは、でもかっきーに奪われたままなのは嫌なんだ。

中学2年の夏休み・かっきーとお出かけ中だった。

賀喜:ねぇ!見て見て!めっちゃ景色綺麗!

遠藤:騒ぎすぎ笑 でも綺麗だなぁ…

賀喜:知ってる?あそこにでっかいビル立つんだって〜で、あそこに寿司…

私たちは他愛のない話を続け気づけば暗くなっていた。

賀喜:ねぇ さくちゃん

遠藤:ん〜?なぁに?笑

賀喜:私さ、〇〇の事が好きなんだ。

その言葉に私は驚きを隠しきれなかった。自分も〇〇の事が好きな事を。

賀喜:で、さくちゃんも〇〇の事好きなんでしょ…?


遠藤:え、え?笑 いやいや笑 急に色々言われても追いつけないってば笑

遠藤:かっきーが〇〇の事が好きで…私も〇〇の事が…!?

賀喜:まぁ濁すならいいけどさ笑 勝負しない?

遠藤:勝負?

賀喜:うん、〇〇の事を最終的に好きにさせた方の勝ちって勝負!どお?笑

遠藤:最終的にって…

賀喜:まぁだから一生をかけたバトルだね〜絶対負ける気はしないけど笑

遠藤:ふーん…まぁ好きにすれば…

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だから、このままの〇〇をかっきーで満たしたくない。

もう自分に素直にならないといけないのは分かってる。

好きだって心ではいっぱい思ってても彼に言葉で伝えられない。

好きって言ってデートに誘ったり色々出来る事があるのも分かってる。

彼と一緒に過ごしたいし、そばにいたい。

分かりきってる。夢では何度も言ってきた。

遠藤:すk…

〇〇:ん…?なんか言った?

遠藤:あ、いやいや笑 この景色好きだなぁって

〇〇:あー確かに笑 僕もお気に入りスポットだなぁ…

そういう事じゃない、彼と共に過ごしてる景色が、彼が…何もかもが…

あーあ…

夢なら素直なのにな

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『過去に縋る彼の事を私は大嫌いで』END



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