運動部の学生と同居する指導者

こんにちは。
ライフル射撃のコーチの小山です。
大学生や社会人のコーチをしたり、
射撃のジャケットを修理したり、
射撃場を運営したりしています。

今日は僕の射撃場の3階部分、
JM Houseについての考えや
実際に思ったことを書いていきます。

日本一の大学に学ぶ理想の環境

今、射撃部で日本一の大学といえば
日本大学射撃部さんです。
寮に10m、50mの射撃場が併設されて
食事も付いています。
聞く話だとジムも併設されており、
電的やscattもあるようなので
ハード面においては素晴らしい環境で
アスリート施設として群を抜いてます。

一方、僕の見ている東洋大学さん。
当時は射撃場なし、食事管理なし、
ジムは学校にありましたが使う選手は0。
正直、ハード面はサークル以下でした。

僕がコーチになったのは25歳。
当時の僕は
「こんなん無理ゲーじゃん。。」
と冷静に考えて思ってました。


どうしても環境のせいにして
不満を感じてしまいがちですが
どう考えても環境要因はあります。

僕が加入したことでソフト面の改善は
見られていましたが
起きて準備して射場まで3時間以上
かかってしまう大学と
30分で練習開始できる大学では
そもそもの条件が違います。

勿論その分、練習の質は
ソフト面で補ってきましたが
それを差し引いても難しかったです。

とはいえ引き受けたからには
あの手この手で、
上の方にいる大学をやっつけないと
師匠の手前、全然かっこがつきません。
(当時、うちは全国で6番目ぐらい)

目標となる強い大学を見習って
ハード面を作りました。

JM Houseの中身

ぽっぽビルの3階は
個室のシェアハウスとなっています。

このシェアハウスを設置するにあたり、
学生寮としたかったのですが、
学校側からOKが出ずに全額自費となり、
本当ならもっとスマートな生活を
選手にして欲しかったのですが、
いたって普通の物件となりました。

射撃場がある点を除くと
完全個室なので多くの寮が抱える
プライバシー問題には配慮出来ています。

ちなみに大学の所有物ではないので
住みたい方がいればご相談下さい。

指導者の同居

今回の本題に入る前に
東洋大学さんで活躍している
他部活の情報を参考にしてみます。

陸上競技
駅伝で有名です。
監督、コーチと共に生活しています。

野球部
強豪校です。プロも出ています。
こちらもほぼ一緒に暮らしているそう。

団体競技では一緒に暮らすメリットは
本当に多いと思います。

チーム力はうちの課題で
個人技と思われがちな競技ですが
一緒にやる仲間は本当に
パフォーマンスに影響します。

団体戦なのに途中で流しちゃうか
最後まで頑張って撃つかは
学生レベルではかなり重要です。

長い間、女子レスリングの
アプローチを参考にした
一強育成をやっていましたが
それはそれで効果があったにせよ
各代でムラもありました。

「戦術は○○(選手の個人名)」は
個人への負荷が強いので
普遍的に機能しないといえます。

強いチームは寮に住むというのは
チームとして益があると
仮説を立てて検証しています。

選手と暮らすメリット

①個人のパターンの把握
これはコーチにとって有効です。
朝は強いのか弱いのか、
どんな時に喜ぶのか、好きなもの、
好きな事は何かという基礎知識は
持っていて損はないですし、
信頼関係の構築に一番大事です。

②意思統一
基本的に僕は口を開くと日本一とか
世界とか言っているので部の雰囲気が
非常にストイックになりました。

ここで趣味程度でやっているのか
本気でやっているのか
意識の差が生まれてしまいますが
キャプテンが日本一を目指す以上は
部全体がそういう雰囲気です。

1人も取りこぼさない部活には
強い目標と繊細なフォローが必要で
上級生を中心にそういう流れを
作るように促しています。

この5年間の統計で
高校時代に賞状のない選手が
うちに来て賞状を取る率は84%なので
成績を残すという意味では
ソフト面だけで達成は出来てそうです。

活動拠点が出来た事で
それが加速すれば万歳。

③いつでも大人がいる環境
基本的に僕がずっといます。

夜中に学生の悩みを聞いたり
不安なことを話してくれたりと
しっかり時間が取れるので
選手にとっては恐らく
良い機能を果たしています。

保護者の方の反応も非常に良いです。
特に地方組は上京に不安が多いですが、
僕がいる事で軽減されていると思います。

現に保護者の方がすぐに来られない時も
僕が一番先に現場についたりするので
その安心感も強いです。

④継続した指導
言わずもがな職場に射撃場併設なので
一応毎日、見に行っています。
これが出来てる部は少ないですね。
技術もですがコートの調整など
すぐに出来る環境は最高です。

デメリット

①給与
アメリカでこの内容の仕事をして
学生チャンピオンを何人も作っていたら
おおよそ年収2000万円です。
種目によっては2億円ぐらいになります。

俺何やってんだろ感が半端ないですが
他大学の指導者を見ても
殆どの方が同じようですね。

自分が心血注いだ知識、技術、経験を
切り売りして、24時間を捧げても
今は納得できる金額ではありません。

個人の仕事としては1日4万円が基準なので
ボランティアのOBコーチの方には
頭が上がらないなと思っています。。

でも裏を返してしまうと
お金にならないから成り手もいなくて
指導も昔の経験を垂れ流すだけの
指導者が多いのも現状な気がします。

肩書だけなんて言われたくないので
頑張って勉強しないと。。

②自由な時間はない
個人的には9月の地元のお祭りと
年末年始以外の休みはいらないのですが
先々の事も考えると
いつまでこの生活が持つかも
ちょっと分からないところです。

オンオフの境界線もぼやけてます。
明確になるのは地元に戻った時ぐらいで
ストレスこそ思ったより無いですが
反動は多少あります。
僕も人間的にまだまだです。

③行動・発言がよく見られている
自意識過剰かもしれませんが
選手はめちゃくちゃコーチを見てます。

僕の睡眠時間は概ね4時間で
一般的には短い方ですが、
選手に睡眠不足を心配されます。
(大丈夫、ほぼ全快です。)

発言についても
元々、口が悪いので気を付けていて
汚い言葉は五反田に置いてきてます。

たまに五反田から持って帰ってきますが
こればかりはどうしようもないので
慣れるように選手に伝えています。
(江戸弁なだけで全然怒ってないよ)

選手には心配や不安、
ストレスは与えないようにしてますが
こればかりは相性もあるので
難しいところです。

あと食事が苦手なのもバレてしまい
体づくりの最中の学生の手前、
合宿中は頑張って食べてましたが
それまでの苦労が崩壊しました。悲しい。

とはいえ楽しい生活

そもそも僕がこんな感じでずっと
パソコンかミシンと格闘しているので
選手の生活時間と少しズレていて
生活圏で会わないので気を遣わずに
のびのびと生活しているようです。

たまに遭遇すると挨拶してくれたり
事務所にお茶を飲みにくる子もいます。
とっても可愛い。

ちなみに皆さんから頂いた差し入れは
ほとんど住んでいる選手か
遊びに来た選手が消化してくれてます。
お酒は僕が貰うけど。

新しいスラングや流行りもの、
Youtuber、音楽などを
選手には教えてもらってます。
そういうの本当にうといので
物凄く助かっています。

これは自分のビジネスでも
マーケティングに役に立つので
嬉しいですし、面白いです。
いつも話してくれてありがとう。

日本において、運動部の学生と
指導者が一緒に暮らす事も多いですが
射撃の世界では中々無い取り組みです。

特にメンタルスポーツ
(的系やゴルフとか)では
あまり聞かないので
この実験結果はきっと
役に立つと思っています。

是非、動向を見守って下さい。
人生かけた実験のデータです。
僕なら面白がって追いかけるので笑

それではまた射場で会いましょー。

おわり。

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