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風刺画から見る中東情勢 #5

スーダン情勢 〜サウジアラビアとUAEの内政干渉〜

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2019年4月、30年以上独裁政権を続けたオマル・アル=バシール大統領は、軍のクーデターによって退陣に追い込まれました。彼は2003年から続くダルフール紛争での大量虐殺に関与した疑いがかけられています。

最近、そんなアル=バシール政権に、サウジアラビアとUAEが資金援助していたことが明らかになりました。なんとサウジアラビアからは9000万ドルもの資金を受け取っていたようです。

そんなサウジアラビアとUAEを批判したのが、今回のカタールによる風刺画です。この風刺画はカタールのAl-Araby Al-Jadeedに掲載されたものです。

右上のタイトルには『アル=バシールはサウジとUAEから数百万を受け取ったと供述した』と書かれています。中心の人物は、アル=バシール(左腕にはオマル・アル=バシールと書かれています)。頭の袋にはには赤字で「UAEのお金」、背中の袋には緑の字で「サウジのお金」。その右に黒字で「全ての指導者の後ろには、不正がある」と書かれています。

またアル=バシール大統領が退陣した後、クーデターを起こした軍が政権を握りましたが、サウジとUAEはその軍事政権にも資金援助を行なっているとカタールは批判します。

これはカタールのAl-Raya新聞の風刺画家ムハンマド・アブドゥ・ラティーフによって書かれた風刺画です。。中心人物の背中には「軍事評議会」と書かれており、その人物に対して、UAE(右)とサウジ(左)が武器を差し出しています。

サウジアラビアとUAEはこのようにスーダンの主導者を裏から援助することで、自分達に都合の良い国を作り上げているとカタールは批判するのです。

この上の風刺画も同じくカタールのムハンマド・アブドゥ・ラティーフによって描かれたものです。タイトルは『干渉』。1はスーダンの国旗ですが、3ではそれがいつの間にかUAEの国旗に変わってしまっています。UAEはスーダンを自国に都合が良いよう作り変えているという、UAEによるスーダンへの内政干渉を批判した風刺画と言えるでしょう。

またUAEが内政干渉しているのは、スーダンだけではありません。次の風刺画をご覧ください。

これも同じくカタールのムハンマド・アブドゥ・ラティーフによる風刺画です。タイトルは『コピー』。コピーを取っているのはUAEのリーダー、ムハンマド・ビン・ザーイド皇太子です。またコピー機に挟まれているのはエジプトのシーシー大統領です。コピー機の出力先には上から「スーダン」、「アルジェリア」、「リビア」と描かれています。

UAEは、エジプトでシーシー政権を成立させたように、スーダン、アルジェリア、リビアでも、裏で指導者を援助することで自分に都合の良い政権を作り出している、ということを批判しているのでしょうか。

『コピー』と表現しているのは、そのやり方が一辺倒であると嘲っているのでしょうか。。

ちなみに、上記の国だけでなく、ここ数年、UAEはサウジと共に、イエメンにも干渉を行なっていました。しかしここ最近、UAEがイエメン紛争から手を引くことになり、サウジとUAEの間に亀裂が生じ始めました。よって今後イエメン情勢がどのように展開していくのかは、見通しがつきません。

ともあれ、オイルマネーによって資金が潤沢な湾岸アラブ諸国が、それを用いて他国の内政に干渉していることはよく指摘されることであります。今回はカタールがUAEやサウジを批判していますが、カタールもシリア内戦に干渉していたことは今や周知の事実となっているように、一方的に相手を批判できる立場では無いように思えます。

このように中東では、それぞれの国が表と裏で複雑に繋がり合い、その関係性が日々変動して行きます。そしてそれぞれの視点から、メディア等を通して、相互に中傷/批判が行われており、どの情報が正しく、どの視点が正義かは決して判断がつくものではありませんが、常に多角的な視点から中東情勢を追い続けて行きたいと考えております。

それでは、また次回。


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