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【中東の反応】ハーショクジー氏殺害に関するCIAレポート 風刺画から見る中東情勢#29

先日、ハーショクジー氏*の殺害に関するCIAのレポートが公表されました。

*なおカショギ氏、ハーショグジー氏など日本語の表記はいろいろあります。

そのCIAのレポートでは、ハーショクジー氏の殺害はサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(通称:MBS)の「承認のもと」実行されたことが明らかにされました。

ハーショクジー事件は2年前ですが、事件から1年後の風刺画も以前まとめました。

ハーショクジー氏の殺害事件があった2年前の時点から、MBS皇太子がこの事件に関与していたことは明らかでしたが、今回バイデン政権となった米国が明確にMBS皇太子が殺害に関与していることを示すレポートを出したことには注目です。そのことから、トランプ政権とは異なるバイデン政権のサウジアラビアに対する強固な姿勢が現れています。

それを表す面白い風刺画がありました。

画像1

出典:al Quds al Arabi 2021.2.28 

タイトル:「ハーショクジー事件」

左側:「バイデン時代」、右側:「トランプ時代」

戦時中の「I want you」のポスターで有名な米国を象徴するキャラクター「アンクル・サム」ですが、トランプ政権の時は指を差しませんが、バイデン政権になるとまさに当時のポスターのように指を差ます。

米国が指を差す相手はMBS皇太子。お前が犯人だ!!と言わんばかりに。

そしてサウジに対するこの姿勢がバイデン政権なのであります。


一方で、このCIAのレポートに対するサウジのリアクションを見てみましょう。

画像2

出典:al Iqtisadiya 2021.2.28 / Fahad al-Khamishi

こちらはサウジの経済紙アル=イクティサーディーヤ紙に掲載されたファハド・アル=ハミーシー氏の風刺画です。

「CIAのレポート」と書かれたデカイ大砲から撃たれたものは、小さな卵で近くに落ちて、中からハエが出てきています。

アメリカの攻撃はサウジには何も効いていない、ということでしょうか。

サウジ側も強気ですね。


そして最後に、クルド人風刺画の観点から一つ。


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出典:Twitter / Dijwar Ibrahim دجوار ابراهيم@dijwar123123121 / 2021.3.2

こちらはクルド人風刺画家ディジュワール・イブラーヒーム氏の作品。

米国が差し出すCIAのレポートにはサウジのことが書かれているのみ。

一方の手で握られているのは血で塗れた「イラク+核マーク」と「シリアのクルド人」とかかれたレポート。

「イラク+核マーク」はイラクに核兵器があるという名目で米国が主導したイラク戦争を表しているでしょうか。

また「シリアのクルド人」というのは下記の記事のような、トルコによるシリア進軍で犠牲になったクルド人のことを意味しているのでしょうか。

どちらも米国の関与により多くの血が流れているにも関わらず、そちらに関しては十分な証拠や公表がなされていないことを批判した風刺画であるようです。

サウジの皇太子の命令でハーショクジー氏が殺害されたように、米国大統領の命令で中東ではこれまで多くの人々が犠牲になってきた。

チョムスキーの『テロの帝国 アメリカ 海賊と帝王』を思い出しました。規模が違うだけでやってることはどっちもテロリストじゃないかといことですかね。(中東=海賊、米国=帝王)

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%81%AE%E5%B8%9D%E5%9B%BD-%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB-%E6%B5%B7%E8%B3%8A%E3%81%A8%E5%B8%9D%E7%8E%8B-%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A0-%E3%83%81%E3%83%A7%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC/dp/4750316881

風刺画からいろんな視点を考えることができて、非常に勉強になりました。

それでは。

*2021.3.3追記。
そういえば、2年前や1年前にはハーショクジー事件に関する風刺画というのは、カタール側がサウジを批判するものが多くみられた。
今回もそのようなサウジ批判の風刺画が出てくることを予想していたのだが、特に目立ったものは見られなかった。これは2021年1月にカタールがサウジ含む4ヵ国と国交を回復したことも関係しているのだろうか、、?

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