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風刺画から見る中東情勢 #4

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この風刺画も昨日と同じく、サウジアラビアのオカーズ新聞のサイトに掲載されているものです。(参照元URL

風刺画の中心に赤字で「ハッジの成功」と書かれています。

ハッジとは、イスラム教の五行のひとつのメッカ巡礼のことです。ラマダーン月(断食月)終了から2ヶ月後に巡礼月というのがあり、その月にメッカ巡礼を行います。巡礼月の10日目から13日目までは、巡礼の成功をお祝いするイード=ル=アドハー(犠牲祭)であり、イスラム教圏は祝日となります。2019年は8月10日から13日までが犠牲祭でした。

この風刺画は、メッカ巡礼を無事成功に終わらせたサウジアラビアが、イランとカタールをビンタしているとういう画になります。

風刺画右の手には、沢山の巡礼者が描かれております。そして叩かれているのはイラン最高指導者のハメネイ(左)カタール人(右)です。(カタールの誰を描いているかはわかりません。。。)

なぜ、イランとカタールがビンタされているのか?

イランは昨日の記事でもお伝えしたように、ここ数ヶ月ホルムズ海峡で様々な事件を起こし、対岸のサウジアラビアにプレッシャーをかけていました。

またカタールは、サウジアラビアがメッカ巡礼でお金を稼いでいることなどを批判していました。下の記事は、カタールの報道局アルジャジーラによるものなのですが、記事タイトルは『枯渇することのない石油。サウジアラビアはどのようにハッジから儲けているか?』であり、聖地メッカを石油に喩え、宗教的儀式をお金儲けの手段として利用しているサウジアラビアを批判したものであります。

この記事によると、サウジアラビアは毎年ハッジによって500億ドル儲けているとのことです。巡礼者はビザ取得、ホテル、食事、交通費などでかなりお金がかかるようです。

カタールは、2017年6月からサウジアラビア含む周辺国(UAE、バーレーン、エジプト)から国交断絶を行われているため、2年が経過した今でもカタール人がサウジアラビアのメッカを巡礼するのはかなり難しいようです。そういったこともあり、カタールのアルジャジーラはサウジアラビアを批判しているのです。

実際上の風刺画でも、ビンタされているカタール人の近くにはアルジャジーラのロゴが落ちています。

ちなみにカタール人の左下の紙に書かれている文字は、直訳すると「アズミーの細胞」という意味になります。「細胞」すなわちcellは英語でも「テロ組織」という意味で使用されたりします。アズミーとは人の名前で、アズミー・ビシャーラというパレスチナ系イスラエル人のことであります。

アズミー・ビシャーラは、カタールの報道局アルアラビー・ジャディードとアルアラビーTVの設立に協力した人物であり、カタール王室顧問の一人とされています。そういったこともあり、彼はカタールに都合のよいプロパガンダを行う中心人物として、サウジアラビやUAEによってよく批判されます。

サウジアラビアは、自国に対して批判的なカタールのアルジャジーラやアズミーによって設立された報道局を嫌っているのであります。

まとめますと、この風刺画は、イランの圧力やカタールの批難に耐えながらハッジを成功させたサウジアラビアが、「ハッジの成功」を持ってイランとカタールに報復のビンタしているという画なのです。

(ビンタしている手が右手なのに、なぜ顔のビンタの跡が左手になっているのかは、わかりませんが。。。)

そもそも、なぜサウジアラビアやその他周辺諸国がカタールを断交したのかという話は、また次回にしましょう。

それでは、ライラ・サイーダ(おやすみ)!





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