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風刺画から見る中東情勢 #7

スーダン情勢② 〜革命の女王〜

前回の記事で、スーダンのアル=バシール大統領が民衆のデモ、さらには軍のクーデターによって退却に追い込まれたということを書きました。

今回は、そんな革命の最中、注目を浴びた一人の女性について書きます。

彼女の名前はアーラー・サラーハ。スーダンの女子大学生。革命中、車の上に乗って大衆の前で詩の一節をリズミカルに歌い上げる彼女の動画が、SNS上で広まりました。彼女に付けられたあだ名は「カンダカ」。カンダカとは現在の北スーダンあたりにあったヌビアの古代クシュ王国の女王のことです。

彼女が歌っているのは、現代スーダンの詩人アズハリー・ムハンマド・アリーの詩です。彼女が詩の一節を歌い上げるたびに民衆が「革命!(サウラ)」と叫んでいます。スーダンの真っ白な伝統的衣装を身に纏い、月を連想させる大きな金色のイヤリングを付けて民衆を率いる彼女は、革命のアイコンとして一躍有名になりました。

彼女が読み上げている詩はTwitterやYouTubeで文字起こしはされているのですが、おそらくアラビア語スーダン方言であるため、一般的なアラビア語の辞書を引いても、この詩の意味を理解するのはなかなか難しいです。Twitterなどを見てみると、アラブ人でも理解できていない人がいるようです。

とりあえず、私が理解した範囲で、なんとなくこうかな?というような詩の大意を記します。(上記ツイートのリプライなどの解説を参照にしました。)

宗教は言う、外に出て悪政者に反対せよと。
宗教は言う、もし誤りを見たなら、それを黙って見過ごすなと。
水瓶(スーダンにおける権力)は私たちの善良さにある。
私たちがナイル川に水を与えるのだ。
私たちの血は怒りで煮えたぎっている。
悪政者の前で声を潜め黙ってはならない。
私たちが恐怖に支配されることはない。
なぜなら私たちの祖父は”タルハカ”で、祖母は”カンダカ”だからだ!

タルハカは古代ヌビアの王、カンダカは女王の名前です。スーダン人の誇りと、悪政者に反対するパワーの力強さを感じさせる詩ですね。

画像1

参照元リンク:Al-Araby Al-Jadeed

一躍有名になった”カンダカ”ことアーラー・サラーハさんの画像(右手で上を指す上の画像のようなポーズ)は、自由の女神と並べられ、悪政から民衆を解放する「自由の象徴」として Twitterなどで拡散されました。

上の画像ですが、”カンダカ”の右側に「サウトゥルマルア(女性の声)」と書かれており、左側には「サウラ(革命)」と書かれています。

「サウトゥルマルア(女性の声)」→「サウラ(革命)」

「サウトゥルマルア」を10回言えば「サウラ」になると言うような、10回ゲームのようなギャグでしょうか。

とにかく、今回のスーダン革命においては、女性が革命の最前線に立ち、民衆を指導するリーダーとして活躍したことは、注目すべきことでしょう。

次回以降ではスーダン革命後の流れをお話できればと思います。

それでは、また。


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