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2019.11.30 高野寛 アルバム発売記念ツアー「City Folklore」season 1. @愛媛県教育会館

【ネタバレ注意】記事の最後にセットリストを載せています。

えっ、ラップトップとエレキギター?

ここ数年、愛媛でおこなわれる高野寛さんのライブに足をはこんでいるけれど、クラムボン伊藤大助さんとのコラボ以外はほぼアコースティックギターの弾きがたりスタイルでした。
唯一、昨年の『Everything is Good』ツアーでの「Rio-Tokio」でラップトップをつかったくらい。

もちろん、高野さんがギタリストとしても名手なのは知っているし、ながく宅録で作品をつくってきたのもわかっているけれど。
じぶんがこれまで見てきたスタイルと変わるということは、いったいどんな内容になるのか。

会場は、ついこのまえアン・サリーさんのライブがあった愛媛県教育会館。
フードはおにぎりとおから揚げ、徳島のゆずジュースをいただきました。

ステージは講堂の壇上ではなく、客席とおなじ高さにつくられていました。
用意されていたのは、エレキギターとMacbook Pro、そして教育会館の備品であろうピアノ。
まさかピアノも弾きがたり?

開演前にながれたBGMのなかに、HASYMO「The City of Light」があって「おおっ!」と。
つづけて教授のソロ「the land song - music for Artelligent City/one winter day mix」がきて、「もしかしてラップトップの同期演奏はこういう路線になるのかな?」と思うなど。

さて、会場が暗くなり、ストーブのうごく音がひびくなか、高野さんが登場。
『City Folklore』からの1曲目で、はやくも冨田恵一サウンドがながれだします。
「こんばんは!高野寛です」
そのまま新譜中心にいくのかと思いきや、

「寒くなってきたので、ここでカバーを一曲。ムーンライダーズの鈴木博文さんの曲で、あがた森魚さんや矢野顕子さんもカバーした曲です」

おお、これは音源化されていないカバーのはず。いきなりスペシャルなものを聴けたぞ…。

「さっそくですが本日のゲストを紹介します。Macbook Proさんです(笑)」

歌とギター以外のすべての音をプロデューサー・冨田恵一にゆだねた『City Folklore』。
せっかくだからその音世界をみんなにも聴いてもらおうと、今回このスタイルになったと語ります。

「ぼくがこういうシンセサイザー系の音を聴くようになったきっかけは、まちがいなくYMOで。昔は憧れるだけだった3人と、いまでは時々ご一緒に演奏させてもらったりしています」

「去年YMOの曲をカバーするライブがありまして、そのライブ盤が12月25日に発売されます。ぼくがミックスをして、マスタリングを砂原良徳くん、YMOチルドレンが頑張りました。参加したのが、宮沢和史くんや野宮真貴さん…それにYMOリアルチルドレンの坂本美雨さん。リアルグランドチルドレンの細野悠太くんもベースで。いま予約すれば、クリスマスにサンタさんが届けてくれるので(笑)ぜひ買ってください」

という話からの(3)は、CD版とはことなる新しいアレンジのトラックになっていました。
そしてライブではおなじみの楽曲群も、アコギではなくエレキギターの演奏で、新鮮な印象。
前方の席にいたので、ピックが弦をはじく生の音と、アンプをとおして出てくる音の両方がくっきり聴こえて、なんとも豊かな音色になるものだなあと。

(6)ではギターをおき、ピアノの前に。

「後ろを向いてしまいますが(笑)。昔は弾きがたりツアーでピアノも演奏していたんです。(ピアノ演奏は)今ツアー2回目。しまなみ海道を通ってきたので、その様子を思い浮かべながら…」

ふたたびギターをかまえて「光」つながりの(7)と(8)。
とくに(8)は、新作のなかでもとくに思い入れのふかい曲のようで。

「もともとは山下達郎さんや竹内まりやさんのようなキラキラしたシティ・ポップを目指して作っていたんです。でも、この曲ができたことで、もうひとつのキラキラに目が行ってしまって」

もうひとつのキラキラとは、19世紀末にマリー・キュリーが発見したラジウムの光。

「キュリー夫妻の伝記を読む機会があって。発見したラジウムがレントゲン写真を撮るのに使えることもわかったけれど、自分たちが特許を取るのではなく、世のため人のために技術を公開して役立てようとしたんです。そのラジウムの放射線によって、まさか自分たちが被曝するなんて考えもしなかった。単なる美談というのもおかしいし、すごく割り切れない気持ちが残りました。そういう気持ちができたときに音楽が生まれるんです」

「『City Folklore』の『City』は、シティ・ポップを作ろうとしたことの名残です。そして、人々のそばにある音楽、北欧のフォークソングのような伝承歌という意味合いで『Folklore』とつけました」

(12)はライブでもうたってきた曲で、歌詞の書きかたには、京都精華大学での教え子さんたちが影響しているそうです。

「気がついたら随分と高いところまで登山してきたなあ、という感じです。それは、精華大で教えていた大学生の作品を聴いて感じました。彼らはまだ経験も少ないから、できた曲はまだ稚拙なものもあるんだけど、それが胸を打つこともあります。そういう感じを出したくて、歌詞はあえて荒削りなものにして、同じ言葉を何度も使ったりしました」

後半では、静岡生まれの東京人として東京を歌った曲がならびます。
(13)は、どんどん変わっていく東京で「なんでここにいるんだろう」という思いを。
(15)は、来年の東京オリンピックを前にした2019年現在の東京のことを。
そして「シティ・ポップの大先輩が、1964年のオリンピック以前の東京を歌った」(16)のカバー。

本編ラストの(18)は、これまでも「ごごしま音楽プール」などでたびたび聴いた曲。
ついにアルバムやライブの締めくくりとして歌われるようになったか、と感慨ひとしおです。

「record=記録という意味ですが、この曲を録音したときと、そのあとに歌うときとでは、自分がまったく違っているんだなあと思った曲です。あの頃は今よりピュアだったなあ(笑)」

よく知っているはずの曲が、まったく別の顔を見せてきた今回のライブ。
地方の公演だと、都心部で見られるようなバンドサウンドはなかなかお目にかかれませんが、こうしたスタイルはとてもおもしろい体験になりますね。
次のステージに期待して、今度はまた興居島かな?早く再会できますように。

【セットリスト】
1 魔法のメロディ
2 大寒町
3 CUE
4 Dog Year, Good Year
5 each other
6 夜の海を走って月を見た
7 確かな光
8 ピエールとマリの光
9 Everlasting Blue
10 Altogether Alone
11 Wanna be
12 もう、いいかい
13 海抜333mからのスケッチ
14 はれるや
15 TOKYO SKY BLUE
16 風をあつめて
17 夢の中で会えるでしょう
18 停留所まで

(アンコール)
1 とおくはなれて
2 虹の都へ
3 ベステンダンク

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