見出し画像

2019.8.3 木根尚登 2626ツアー @スタジオOWL

【ネタバレ注意】記事の最後にセットリストを載せています。


TM NETWORKの『QUIT30』ツアーを広島で観てからはや5年。
ソロデビュー26周年をむかえた木根さんのソロツアーへ行ってきました。
キネソロの参加はこれがはじめてです。

「松山は10年ぶりくらいになるのかな?前に来たのは50歳ツアーの時でした。なんでハッキリ松山を覚えているかっていうと、ツアーはだいたい土日にやっていたんだけど、松山は金曜の夜だったんです。会場は…名前は忘れたけど100人は入るところで。土日のときはたくさん来てくれるんだけど、その日入ったお客さんが、13人。みんなバラバラに座っているから『どうぞ近くに寄ってきて、ホラ』って。もうお客さんだか店員さんなんだかわかんないんだもん。で、お客さんが少ないと、お客さんも緊張しちゃうんですね。ぼくが面白い話で笑わせようとしても、シーン…としちゃって。『オレ、きょうは面白い話するのやめよう…』って思いました」

かねてより自身のライブを「Talk&Live」と名づけるくらいでしたから、やはりソロライブはMCが長くなるのだろう…と予想はしていましたが、それ以上によく話されるし、しかもおもしろい!

「きょうはじめてぼくのライブに来た人っていますか? TMしか観てない人はビックリするでしょうね。こんなにしゃべるのか!って」

もはや木根さんのライブは、曲目だけじゃなくてMCの内容もネタバレに対処したほうがよいのではないか…。
とおもいましたので、いつもライブの感想記事ではMCもいろいろ書きとめているのですが、今回はひかえめにしておきます。
ですが、公演地のオリジナルネタならばよろしかろうということで、そこだけを。
(芸人じゃないんだから)

そうそう松山といえば。

「松山に来たときはいつも『松山のユウちゃん』という、スピードウェイのドラマーだった杉本ユウくんと一緒によく呑んでいまして。2005年に亡くなってしまったんですが、TMのツアーのときもそうでした」

『“RHYTHM RED” TOUR DOCUMENT』や『EXPO STORY』でその名が出てきた「松山のユウちゃん」について、その松山でこうして話をきくというのも、感慨深いものがあります。

ソロ曲、TMのキネバラ、できたばかりの新曲など織りまぜた選曲でしたが、わけても異彩を放ったのが中盤に用意された「尚登の部屋」コーナー。
トレードマークのサングラスからメガネにきりかえ(会場限定CD『R1』のジャケットにつかわれたのとおなじメガネだそう)、「みなさんをぼくの部屋にお招きして」歌とトークを展開するというもの。

1979年のプロデビュー曲となった、スピードウェイ「夢まで翔んで」からスタート。
高校に入る前の春休み、当時つきあっていた彼女にフラれてつくった「自業自得」や、ご近所さんに「ウチのダンナがボランティアで町内のパトロールしてて、それを歌詞にしたの。木根さん曲つくって」とたのまれて書いたという「パトロールの歌」(正式タイトルはほかにあるらしい)などの未発表曲も。

「ここはホントにいい会場ですね。横のほうを見てみると、壁にレコードがいっぱいあるんですよ。ここのマスターの高橋さんが集めていらっしゃって、会場に入ったときに『うわぁっ!』ってテンション上がっちゃって。何十年ぶりかに再会したようなドーナツ盤もあるんですよ。だからこうしてステージに持ってきちゃった」

レコードから歌詞カードを取り出し、その場でキーをたしかめながら、次々と弾き語り。
チェリッシュ「白いギター」、浅田美代子「赤い風船」、そしてよしだたくろう「伽草子」。
70年代当時の思い出話をはさみながら(拓郎さんのライブ中止〜逮捕をリアルタイムで見ていたとは!)。
そして「マスターもファンだそうですが、ぼくらの時代は小室等なんですよ。小室哲哉じゃなくて」と小ネタをいれてからの、六文銭「出発の歌」「雨が空から降れば」。

「みなさん大丈夫ですか?親戚のオッサンが『オマエこの曲知ってるか〜?』ってカラミながら歌ってるみたいになってませんか?」

と心配そうな木根さんでしたが、このツアーの白眉はこのコーナーだと、ぼくは思っています。
FANKSではない世間一般的には「TM NETWORKの(エア)ギタリスト」という印象が強いのでしょうが、当然のことながらTMにいきつくまでの、フォークソングを知り、友人(ウツ)たちと一緒にバンドを組み、プロとして活動をはじめ…という時期があるわけで。
だれに影響をうけたのか、その結果どんな曲をつくったのか、そしてどう今につながっているのか。
「尚登の部屋」をコアとして、そこからTMの曲やソロ曲にひろがっていくような構成が、まるで木根尚登という人物のたどってきた歴史を見ているようで、非常に興味深いです。
しかもその場の即興で展開を組み立ててしまうのが、本当にすごい。
この2時間だけで終わってしまうのはもったいない!

…というようなことを、終演後にお見送りされたときにお伝えしました。

ぼく「木根さんの個人史を見ているようで、すごくよかったです」
木根さん「ホント?」
ぼく「あのスタイルがすごくいいですね」
木根さん「ありがとう!また来てね」

とはいえ、ぼくが本当に「ああ、目の前に木根さんがいる」と実感したのは、たとえば「みなさんに謝らないといけないことがあります。1曲飛ばした!」と言っちゃったときだったり(言わなきゃわからないだろうに…)。
あるいは演奏をはじめてから「ごめん、この曲ハーモニカいるんだった!(スタッフさんに)言ってよ〜気づいてたんだったらさぁ」とやり直しはじめた直後に「Cじゃなかった!(キーが)」とあわててハーモニカをとっかえたときだったり。
せっかちというのかうっかりさんというのか、こういうところが『電気じかけの予言者たち』でご自身の性格を客観的に見て書いていたとおりで「ああ、まちがいなく本物だ」と感じ入ったのでした。

最後に、TMについては。

「幸いなことにウツが元気ですからね。小室くんもしみじみ言ってましたね、『ウツがもう歌えないって言ったら、ボクたち終わりだよね』って」
「ですからまあ、時が来れば」


【セットリスト】
1. 夢のさき
2. 四ツ谷ロマン
3. ANOTHER MEETING
4. 8月の長い夜
5. 「尚登の部屋」
6. 君が生まれた日
7. 青い鳥たち
8. TIMEMACHINE
9. REMEMbER ME?
10. 風 太陽 海
11. Bye Bye Bye

(アンコール)
 1. STORY


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?